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歩いて見た世界

2022-07-17 23:37:16 | 映画
岩波ホールで「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」を見てきました。

イギリス人作家ブルース・チャトウィンの没後30年に彼と親交があったヘルツォーク監督が製作したドキュメンタリーです。不肖わたくし、チャトウィンのことは何も知りませんでしたが、行ってまいりました。この映画が岩波ホールの最後の上映作品になるということなので…。10代の頃から何度となく通った岩波ホール、まさか閉館してしまうなんて…(涙)。

ブルース・チャトウィンは神話を旅したといわれる“伝説の作家”。美術品の収集家、考古学の研究生、ジャーナリストなど、さまざまな分野で活躍した後、最後は歩いて旅しながら小説を書く人生を選びました。「パタゴニア」でデビューし、HIVで亡くなるまでに5作の小説を発表しましたが、そのうちの一つがアボリジニの神話に魅せられ自らの死に方を探りながら書いた「ソングライン」です。ヘルツォーク監督はパタゴニアやオーストラリアのアボリジニの地など、その足跡を辿る旅に出ましたが、それはチャトウィンが魅了された「ノマディズム/放浪」という概念を探求する旅でもありました。この映画ではチャトウィンの旅を関わりのあった人のインタビューを交えて追っていきます。実に壮大な旅、そして美しい映画でした。映像も音楽も言葉も…。アボリジニの歌も美しかった…アボリジニは土地は歌で覆われている、と考えるのだそうです。チャトウィンは「世界は徒歩で旅する人にその姿を見せる」という言葉を残しています。多くの人にはそれは不可能かもしれませんが、こうして映画を通して世界を旅することはできる、映画は世界に向かって開かれた窓だとあらためて思いました。そして人生そのものも旅のようなものかと…アボリジニの神話では「歩みの果てに正しく死ぬのが理想」なのだそうです。そして映画の中では「死に生き、生に死す」という言葉もありました。人はどこから来て、どこへ行くのか…というのは永遠のテーマですが、この映画はその答えの一つを示しているのかもしれません。岩波ホールが最後の上映作品としてこの映画を選んだのもそういうことなのでしょうか…。

この日、映画館の近くの「石釜 bake bread 茶房 TAM TAM」に寄ってきました。名物の石窯焼きパンケーキセットをオーダー。バターとメープルシロップ、てんこ盛りの生クリームが添えられています。パンケーキは外側はカリっと、中はふわっとしていて実に美味しゅうございました。
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