あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

牧浜に出かけて② 戸井雄一さんのこと

2012-09-03 09:37:26 | インポート

               戸井さんから学んだこと

今回の活動の主役は、K氏がかって担任し、マッサージ師となった戸井さんです。塩釜市内の小学校5年の時に目の病気にかかり、やがて失明してしまうのですが、盲学校から按摩・マッサージ師を目指し、現在は大阪で開業している方です。これまで、仙台市の避難所でマッサージのボランティアに取り組んだ経験もお持ちです。

30日の11時過ぎから翌日のお昼近くまでマッサージを続け、のべ21名の方の体のケアにあたりました。マッサージの間には地元の方の話に真摯に耳を傾け、体だけではなく心の面でのケアにも努めていました。休む間もない献身的な取り組みに、戸井さんの疲労も心配になりましたが、疲れは全く感じず、かえって充実感やすがすがしさを感じているとのことでした。痛む腰や肩、手足が「楽になりました」と感謝の気持ちを込めて語る言葉に、本人の疲れも吹き飛んだとのこと。その姿勢には、私自身頭が下がりました。ボランティアとしての大切な心のもち方や取り組む姿勢に、深く学ぶものがありました。

行き・帰りの車の運転を担当した私は、車内での戸井さんとの会話からも、いろいろなことを考え、学ぶことができました。

○どんな交通手段で宮城までやってきたのかとたずねたところ、大阪から飛行機で仙台空港に向かい、空港からは鉄道を乗り継いで来たとのこと。自宅から空港までは、荷物があったので、エスコートしてくれる方に付き添ってもらい、飛行機の乗降の際には航空会社の人に、鉄道の乗り継ぎには鉄道会社の人に付き添ってもらってたどり着いたとのこと。各交通機関には、障害のある方をサポートする人員が配置されているということでしたが、人手不足や交通機関を運営する会社間の連携不足もあって、時にはその場に待たされたり、先に進めないという状況になることもあるとのことでした。利用する側の立場に沿って、十分な人員の配置やスムーズな連携がなされ、障害をもった方も安心して交通機関を利用できるような体制づくりを強く望みたいと思います。共生社会の実現のためには、さまざまなハンディを持った方が安心して生活できる環境を整えていくことが必要であり、同時に健常者の側からよりそっていくような温かいサポートが求められているのではないかと思いました。

○戸井さんが町の中で、通行人に目的地までどれぐらいかかるか聞いた時のことだそうです。その方は、「まっすぐ行った、ちょっと先にあります。」と教えてくれたとのこと。T氏にとっては、ちょっとなので、2・3軒先なのだろうと思って歩いていったものの、実際にはそこから何百メートルも先に目的地はあったとのことでした。目の見える人にとっては、視界に入る範囲内にあるものは、ちょっという感覚でたどりつける場所になるのだということを改めて知ったそうです。T氏自身が、目が見える時期を過ごしていたので、その時の感覚と見えなくなってからの感覚の違いを、「ちょっと」という表現から実感したとのことでした。目の見えない人にとっては、一歩一歩が意識して前に進む歩みであるからこそ感じる「遠さ」なのかもしれないと思いました。小さなことかもしれませんが、こういった感覚の違いを理解することが、障害を持っている方に真によりそうという心に つながっていくように感じました。

○盲導犬の利用について、戸井さんは語っていました。杖の音や感触、足の裏の感覚、耳や鼻・肌で感じるもの、そういった感覚を 盲導犬に頼ることで失われてしまうような気がしている。自分の感覚に頼ることで、自分の力で生活する努力を続けていきたい。マンションの一室が彼の住居兼マッサージ室となっており、部屋の掃除等手の届かないところはハウスキーパーの人に依頼しながらも、店の経営者兼マッサージ師として働き、自立した生活を営んでいるとのこと。生きる強さと前向きな姿勢に、感動しました。ボランティアの場所となった地区の集会所は、初めての場所だったわけですが、戸井さんはその間取りや施設(手洗い所やトイレ)を初めに覚えると、介助の手を必要とせず、自分で移動し行動していました。身につけてこられた生活力の一端を見たような気がしました。

戸井さんとK氏との間に流れている温かい信頼の絆には、教師と教え子という師弟の間柄を超えた 志を共有する人間同士の深い結びつきも感じました。その土台には、子どもたちと確かな学びのもとで育んできたものが生き続けている印象がありました。戸井さんの生き方の中に、その種が大きな花を咲かせているような感じがしました。

ある意味で 教育とは、子どもたちと一緒に汗を流し種を播くことなのかもしれません。やがて子どもたちは自らの力でその種を大きな花に育てあげていき、自らの人生を豊かに幸せに生きていくように思います。これまで出会った子どもたちがどんな花を咲かせていくのか見守っていくことも、教師としての大きな楽しみのひとつなのかもしれないと思いました。

戸井さんとの出会いをつくってくださったK氏に、心から感謝したいと思います。

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石巻・牧浜に出かけて その1

2012-09-03 09:36:24 | インポート

8/30・31日と1泊2日で、牡鹿半島にある牧浜という所に出かけてきました。敬愛するK氏(鎌田さん)が代表となって結成されたボランティア団体(桜士・さくらもののふ)の一員として、参加しました。牧浜地区とは、K氏を中心にこれまでも様々な支援交流活動が積み重ねられてきたのですが、実際に現地まで出かけるのは、私自身にとっては今回が初めてとなります。活動のメインは、マッサージ師のT氏(戸井雄一さん)を中心とした活動で、地域の方の体と心によりそう支援として取り組みました。

私は、側面からのお手伝いとして、往復の車の運転、地元保育所の子どもを対象としたシャボン玉遊び、マッサージに訪れた方のコーヒー接待等を担当しました。

1日目の夜には、地元の方の心からのおもてなしの会があり、ヒラメやカツオのさしみ、ウニ、タコ、3種類の魚を煮込んだあら汁など、新鮮な魚介類に舌鼓をうちながら、語り合いました。震災以来のさまざまな苦難を乗り越え、一歩ずつ復興に向けて歩んでおられる姿に、深い感動を覚えました。ご夫婦で参加された方の話で、震災当日に携帯電話を通して奥さんがハートマークのメールを送ったエピソードを聞きました。奥さんにとって、一番大切な人はご主人であり、ご主人にとってもかけがえのない奥さんが無事であることを知って心から安心したとのこと。あたたかい夫婦の絆にふれて、心の中まで熱くなりました。

今回の活動を通して、私は二人のすばらしい人物に出会うことができ、たくさんのことを学ぶことができました。一人は、マッサージ師の戸井雄一さん。もう一人は、震災後に地元5地区のまとめ役となり対策本部長として尽力され、心からのおもてなしの会を開いてくださった 豊島富美志さんです。二人の人物については、その紹介が長くなりそうなので、それぞれ新たな紙面で紹介したいと思います。

 

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