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ディズニー映画実写版「ムーラン」9月11日中国で劇場公開〜評価・興行収入ともに低調な滑り出し

2020年09月18日 | エンタメの日記
2020年9月11日にディズニー実写版映画「ムーラン」が中国で全国一斉劇場公開されました。
中国の映画館の営業が再開したのは7月20日で、再開直後は「劇場は定員の30%までしか観客を収容してはならない」という制限がありましたが、8月10日付で規制が緩和され「定員の50%」まで観客を収容できるようになりました。「ムーラン」は「定員の50%」ルールのもと上映されています。

「ムーラン」は、題材からみても、キャスティングからみても、明らかに中国市場をターゲットとした作品ですが、中国での興行成績は振るいません。公開から1週間で2億元(約32億円)しか達成できておらず、当初の期待値からすれば惨敗といってもいいかと思います。
なお、原版は英語ですが、中国の劇場では大半が中国語吹替え版で上映されています。

当初は2020年4月頃公開の予定でしたが、コロナウィルスの影響で公開延期に。当初広まっていたポスター。


9月11日の中国劇場公開が決まってから出てきたポスター。中国テイストが濃厚になりました。


『ムーラン』(Mulan)中国語タイトル『花木蘭』(花木兰) 
監督:ニキ・カーロ
主演:リウ・イーフェイ(劉亦菲)、ドニー・イェン(甄子丹)、コン・リー(巩俐)、ジェット・リー(李連傑)

ムーランを演じたリウ・イーフェイは中国系アメリカ人と紹介されますが、基本的に一貫して中国芸能界で活動しています。


リウ・イーフェイ(劉亦菲)
1987年8月25日 湖北省武漢市生まれ 身長:170㎝(百度百科のプロフィール) 北京電影学院卒業。
プロフィールによると、湖北省武漢生まれ、幼少期に両親が離婚し母方のもとで育つ。幼い頃から少女モデルとして活動。
10歳のときに母親の仕事の都合でアメリカに移住。アメリカで中学校に通う。この時期にアメリカ国籍を取得。
2002年に中国に戻り、15歳で北京電影学院の演劇科に入学するという異例の経歴。その後、10代で『金粉世家』(2003年放送)のサブヒロイン役、『仙剣奇侠伝』(2005年放送)のヒロイン役を務め、デビューと同時に主役クラスの美少女女優として活躍。その後、中国芸能界で女優活動を続ける。
ちなみに、リウ・イーフェイは以前は歌手活動もしており、2006年にSONYから日本語曲のCDを出して「日本デビュー」したことがあります。

中国で実写版「ムーラン」の興行成績が振るわなかった理由は、前評判・口コミが芳しくなかったことが影響しています。
ムーラン(中国語:花木蘭)は、中国人であれば誰もが知っている女性キャラクターです。扱いとしては「古典文学作品上の女性人物」です。
「木蘭辞」という南北朝(北魏)から伝わる民謡があり、父の代わりに官軍として出兵し、勇敢に異民族と戦った忠義と愛国の女性勇士として知られています。

ムーランは実在の人物ではありませんが(モデルとなる人物はいるのではという説もあり)、歴史的背景のある人物として認識されています。
具体的にいうと、北魏の人物で、戦った相手は遊牧民族の柔然と言われています。それなのに、ディズニー実写版「ムーラン」では、ムーランの一家は円形の客家の土楼のようなところで暮らしています。これは中国人からみると非常に違和感があります。
ディズニーアニメの実写化なので、歴史背景を忠実に描くことは追求していないとはいえ、違和感は残ります。また、ディズニーのディランズ的なキャラも、作品の世界観とうまく融合できていないように感じました。ムーランは好演しているのですが、その他のキャラの掘り下げが浅く、人間関係の描写が淡泊です。ひたすら強いムーランが頑張る姿はかっこいいのですが、女性の立ち位置の描かれ方としては、やや不評を買っています。

もちろん、映像的にはさすがディズニー映画でハイレベルです。しかし、ビジュアルのみでいうなら、中国の映画・ドラマにもこのレベルのものは普通にあるので、驚異的とまでは思えません。むしろ「ムーラン」のクライマックスに至るカメラワークはスリルに欠け、鈍く感じます。
中国映画やドラマの映像技術の進歩は著しく、日頃からお金のかかった美しい映像を見慣れています。映像美だけで劇場に客は呼ぶことは難しいです。

中国の映画サイトのレビューなどを見ると、多くの人が「ムーラン」は子ども連れや若者のデートに適した映画だとコメントしています。しかし、9月に入り、やっと本格的に学校が再開されたため、子どもや学生が遊び歩く時期ではなく、タイミング的にも難しかったかもしれません。

ただし、さほど面白くない映画なのに大ヒットしたというケースは、これまでにいくらでもありました。
そう考えると、「ムーラン」の中国での興行成績の低迷は異様な事態だともいえます。
実際、そこまで叩かれるほどひどくはありません。ディズニー映画としてのレベルはクリアしています。
中国市場での惨敗は何らかの要素が作用したと感じざるを得ません。
ボイコットがあったとも言われていますが、明確な原因は確定し難く「世の中の気分」としかいいようがないと思います。

リウ・イーフェイ(劉亦菲)の出世作・ドラマ『仙剣奇侠伝』(2005年放送)
主演:胡歌(フーゴー)、劉亦菲(リウ・イーフェイ)、安以軒(アン・アン)、彭于晏(エディ・ポン)など。


「仙侠」または「玄幻」と呼ばれるジャンルの雛形といえる作品。原作は当時大人気だった台湾の同名PCゲーム。金庸小説のキャラクターの面影があちこちにみられます。
CGなどは現在の技術と比べると見劣りしますが、ファンタジックな世界観の繊細な表現は、いまも高く評価されています。約15年前のドラマですが、多分今見ても面白いと思います。当時大学生だった胡歌(フーゴー)の出世作でもあります。


逆算すると『仙剣奇侠伝』の撮影当時リウ・イーフェイはおよそ17歳。「仙女」と呼ばれ一世を風靡しました。ルックスの雰囲気はあまり変わっていません。
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