上海阿姐のgooブログ

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BiliBili World上海2020〜多角化するbilibili動画

2020年09月01日 | エンタメの日記
中国には「bilibili動画」(bilibili.com)という非常に有名な弾幕系動画サイトがあります。もともとは、ニコニコ動画を模して立ち上げられたオタク有志が集まるサイトでしたが、現在はアニメ、ゲームを中心とするサブカルジャンルに特化した動画サイトとして独自のポジションを確立しています。
bilibli動画にとって転機となったのは、2014年に中国大手ソフトウェア企業(KingSoft)出身の陳睿氏がCEOとなり、bilibiliの会社化を推進したことにあります。企業家、投資家でもある若きCEOは、オタク嗜好に通じていたこともあり、サブカルコンテンツを中心に据えた商業化を成功させました。中国IT巨頭の出資を受けつつ、2018年3月にはNASDAQ上場を果たしました。
bilibili動画は2015年頃から日本アニメの版権購入を本格的に開始し、日本アニメ(特に新作TVシリーズ)を最も多く配信するプラットフォームとなっています。日本の多くのアニメ制作会社、ゲーム会社、出版社、グッズメーカー、テレビ局がbilibiliと提携しています。

bilibili動画は毎年7月に「BiliBili MacroLink」というライブイベントを開催していますが、今年はコロナウィルスの影響で無観客配信ライブとなりました。
ただし、展示会形式のオフラインイベント「BiliBili World」は入場者数の制限はあったものの、2020年も開催されました
「BiliBili World 2020」 開催日:2020年8月7日〜9日(3日間)場所:上海国家会展中心(1.2館、2.2館、8.2館の3館を使用)


入場者数規制があるため、例年に比べると密度は低いです。3日間の前売りWebチケットは完売。


BiliBili Worldは、bilibili動画で配信されている各種コンテンツに関する総合オフラインイベントで、形態的にいうと「ニコニコ超会議」のようなものです。BiliBili Worldに足を運べば、コンテンツの流行趨勢、人気度、熱量を実感することができると思います。

■bilibili動画の主軸コンテンツ
(1)日本アニメ(主にTV版、新作)
(2)中国国産Webアニメ
(3)スマホゲーム
(4)ボーカロイド、Vsinger

上記は主軸ジャンルとして定着しています。ここ数年勢いがあるのが、
(5)eスポーツ(ゲームのプロリーグ)
(6)bilibiliオリジナルバラエティ
(7)バーチャルアイドル

なのではと思います。

■日本アニメ
各クールのテレビ新番アニメを大量に版権購入しており、日本とほとんどタイムラグなく配信しています。
人気アニメ「鬼滅の刃」もbilibili独占配信で、再生回数はトータル5.1億回(全26話)に達しています。bilibiliによる中国語アフレコ版も2020年10月2日から配信予定です。


全般的にファンタジー系、ラノベ原作ものアニメの人気が高く、直近では、リゼロ2期、SAOアリシゼーションWoU、レールガン3期、俺ガイル。完、かぐや様は告らせたい2期などが人気です。「JOJOの奇妙な冒険」は、第五部「黄金の風」から配信プラットフォームがbilibiliに移行してから人気が上昇しました。

bilibiliは、コンスタントに日本の新番アニメの配信権を購入していますが、中国政府の政策的な後押しもあり、中国国産アニメの制作・配信にも力を入れています。中国アニメもヒット作が生まれています。但し、作品の持続性・安定性がやや弱いように思います。
中国人のアニメファンは日本のアニメが好きですが、同時に自国のアニメ産業が成長することも強く望んでいます。

■スマホゲーム
FGO、アズールレーン、プリンセスコネクト Re:Diveなどのスマホゲーム発行代理はbilibili主要業務の一角を占めます。
グッズ人気の高さが目立つのは2019年にリリースされ大ヒットしたスマホゲーム「明日方舟」(アークナイツ)。


■中国語ボーカロイド、Vsinger
中国語版ボーカロイド、洛天依、楽正綾、言和など「Vsinger」は、アニメ、ゲームと並んで、bilibiliの伝統的なコンテンツの一つです(Vsingerは上海禾念により運営。当初はVocaloid China Projectとしてキャラクター発足)。
本来は、毎年「BiliBili MacroLink VR」というボーカロイド、Vtuberなどバーチャルキャラ専門のライブイベントが開催されるのですが、今年はコロナウィルスの影響で中止となりました。


■eスポーツ LOLプロリーグ
中国はいわゆるeスポーツが非常に盛んです。LOL(リーグ・オブ・レジェンド、中国名:英雄聯盟)とその簡易スマホ版「王者栄耀」は膨大な数のプレイヤーを有します。
2019年のLOLワールド・チャンピオンシップで中国チームIGが優勝したときは国中が熱狂に包まれました。LPL(LOLの中国プロリーグ)の有力選手はカリスマ的な存在です。
bilibiliは、BLG(BiliBili Gaming)というLPLに参加するプロチームを有します。また、2020年から2022年のLOLワールドチャンピオンシップ決勝戦の中国配信権を獲得しています。


■bilibiliオリジナルバラエティ番組
bilibiliでは投稿主のことを「UP主」と呼びます。「BiliBili World」で最も人が多く集まるステージは人気「UP主」本人が登場するイベントステージです。
中国boy、某幻君などが登場しトークショーステージ。ステージはbilibiliでライブ配信されていますが、ものすごい数の観衆がスマホで録画していました。


最近、人気UP主が出演するバラエティ番組をbilibiliが制作しており、これにより「UP主のタレント化」が更に進むと思われます。
中国boy超級大猩猩、花少北丶、老番茄、某幻君、LexBurnerなど、人気UP主を集めた番組を制作・配信中。


■バーチャルタレント
いわゆるVtuberにあたるバーチャルタレントが活況です。BiliBiliWorld 8月8日 中国土着バーチャルアイドルとして有名な「泠鸢yousa」のステージ。


にじさんじ「VirtualReal」のブースが盛況でした。グッズもよく売れています。VirtualRealのファンは男子と女子が半々か、女子の方が若干多いかもしれません。ファンの年齢層は10代後半から20代前半。


にじさんじ「VirtualReal」メンバー https://nijisanji.ichikara.co.jp/member/

多数のバーチャライバーがbilibili上で活動していますが、VirtualReal六期生の阿萨(Aza)と罗伊(Roi)の人気が高いです。コンビで「ROZA」と呼ばれます。
バーチャルタレントはビジュアルを含むキャラクター設定、トーク力が重要ですが、「VirtualReal」の動きをみると、楽曲・歌のポイントが高いのではと思います。
阿萨(Aza)と罗伊(Roi)の人気が高いのは「失眠飛行」「白羊」などの良曲があり、コラボ楽曲のクオリティが高いからなのではと思います。
ROZAコラボ楽曲「失眠飛行」:https://www.bilibili.com/video/BV127411i7Aq

■bilibili動画の派生プラットフォーム「bilibili漫画」
集英社(少年JUMP)、小学館などのメジャーコミックを連載配信しています。中国Web漫画も多数配信しています。


■日本分会場の設置
bilibili動画のオフラインイベントであるBiliBiliWorld、MacroLinkには毎年多くの日本人アーティストが参加しています。今年はコロナウィルスの影響で渡航できなかったため、「日本分会場」を設けてライブ中継が行われました。綾野ましろ、JAMプロジェクト、May'n、渡邉圭佑などが参加。日本分会場にbilibiliの司会者兼通訳が配備され、日本分会場にいるアーティストも上海会場の状況が中継配信で見ることができるため、日本と上海に分かれていても、オンラインで相互コミュニケーションを取ることが可能。


■中国で流行中の「JK制服」
最近、日本の高校の制服を模したファッションが中国で大人気です。「JK制服」と呼ばれ、ネットモールのタオバオ(淘宝)で大量に販売されています。アニメやドラマに出てくる日本のかわいい制服を模して作られています。基本的には中国産で、価格も手頃なので、10代半ばから20代前半の女の子の私服として人気があります。夏休み中に上海の地下鉄に乗っていると、一車両に一人か二人は「JK制服」を来た中国人の女の子に遭遇します。




■bilibiliのユーザー層
bilibiliの2020年第2四半期報告書によると、bilibili動画のMAUは1.72億、有料会員数は1290万です。ユーザーは女性よりも男性が多く、20歳前後(大学生)が多いと言われています。


■オフラインイベントの意味と価値
「BiliBili World」が正式に始まったのは2017年、今年で4年目となります。毎年、流行りのコンテンツの移り変わりの速さを感じます。また、中国はユーザーの新陳代謝が激しいです。毎年若年層、それこそ小学生がどんどん参入してきて、必然的に古参ユーザーが卒業していく傾向があります。

配信とライブパフォーマンスは必要とされるスキルが異なるので、配信で見るとすごく魅力的だけれど、生のステージを見てみるとあまり引き付けられないというケースは珍しくありません。両立させているパフォーマーもいますが、配信と生ライブは別フィールドと考えた方がいいのかもしれません。
オフラインイベントで観客を楽しませるには、パフォーマーやスタッフに相応の経験とスキルが必要です。ですが、観客にも同じことがいえます。オフラインイベントを成立させるためには、観客のマナー、忍耐力、協調性、理解力が必要で、「イベント」という無形文化の経験を蓄積することでしか鍛えることができないのではと思います。

■地下鉄駅のbilibili動画プロモーション広告 上海地下鉄7号線 静安寺駅 2020年8月
コメント (2)
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