上海阿姐のgooブログ

FC2ブログ「全民娯楽時代の到来~上海からアジア娯楽日記」の続きのブログです。

中国でカットされる海外ドラマ~~カット・吹き替え・モザイクなど

2011年10月16日 | タイドラマ
中国のテレビで放送される海外ドラマは内容の一部がカットされることがあります。「広電総局」(広播電影電視総局)と呼ばれるテレビ・ラジオ・映画等を司る政府機関に管理されるため、ドラマを含めテレビ番組は広電総局の批准を受けなければならないし、広電総局の命令で放送停止になることもあります。
中国で制作する作品の場合、メディア制作側はどういうものがOKでどういう表現がNGか大体把握しているので、NGになりそうな表現は予め含めないようすることが多いと思います。

タイドラマでもカットされるケースがあります。2010年に安徽衛視で放送されたタイドラマ「明天我依然愛你」(明日もあなたを愛してる)は、タイオリジナル版は全30話ですが、中国版は全27話となっており、3話分がカットされています。

タイドラマ「明天我依然愛你」(明日もあなたを愛してる)


【原題】Proong Nee Ghor Ruk Tue
【時期】2009年制作。中国での放送は2010年。
【制作】Exact (Grammy傘下のドラマ制作プロダクション)
【監督】Boy Thakonkeit (Exactの有名な人物だそうです)
【主演】Pong(Nawat Kulrattanarak)とAom(Piyada Akkarasenee)

PongとAom。Pongは中国で最も有名なタイのドラマ俳優。Aomは司会者兼女優でベテラン、実年齢上はAomの方がPongより年上です。


【あらすじ】結婚を間近に控えるボー(Pong)とガンヤー(Aom)は家族全員に祝福され幸せに満ち溢れていた。ところが2人の姉同士が、ある誤解によりとり返しのつかない不幸な事件を起こし、両家は仇同士となってしまう。ガンヤーは残された家族のために、ボーの前から姿を消すが、2人は偶然にも6年後バンコクで再会し・・・というようなお話です。











このドラマはボーとガンヤーという主人公カップル、ボーとその新しい彼女(宝石商の娘)、ボーの姉夫婦、ガンヤーを慕う年下の男性社員、ガンヤーの親友の恋・・・といった複数のカップルの物語が進行しますが、これにボーとガンヤーの弟同士という同性の恋愛が加わります。この弟同士のカップルのエピソードが中国版ではバッサリとカットされています。

このドラマに登場するカップルの中で一番救いようがないのが主人公の姉夫婦です。夫婦の関係が一番えげつなくて、男女の恋人同士も利己的なキャラや意地っぱり、衝動的なキャラが目立ちます。それに比べると男同士カップルの2人は、恋愛に慎重で誠実な性格が丁寧に描かれています。これは監督が意図的にそういう演出にしているのだと思われます。
特にボーの義弟のピラウェイはこのドラマの中で一番理性的で誠実な好青年として描かれており、ある意味最も美化されているキャラクターです。
弟2人のカップルのシーンがこのドラマでは唯一サワヤカでほっとさせられます。こんなにサワヤカなのに同性愛はまずいという判断でしょうか、中国安徽衛視で放送された際はバッサリとカットされていました。おかげで後半に入る20話以降は、男女(特に姉夫婦とボーの新しい彼女)のドロドロしたシーンばかりになってしまって、キツイものがあります。また、同性同士の恋愛は両家族に波紋を投げかけますが、逆にそれが対立し合う家族の確執を解くきっかけを作っていき、ストーリーの伏線にもなっています。それなのに中国版はバッサリとカットしてしまうので、ドラマの後半のストーリーが薄っぺらくなってしまい非常に残念です。

ボーの義弟であり、ヒロイン・ガンヤーの仇の男の弟(ピラウェイ)を演じるのは、O-anuchydという俳優です。
ヒロインの弟(ゴン)を演じるのはタイのオーディション番組「The Star5」にも出ていたFluke (Pachara Thummol)。1988年生まれ、身長178cm、東方神起の大ファン。Flukeのプロフィールで紹介されている彼の生い立ちは、ドラマ以上にドラマチックなもの。
Flukeはこのドラマで、末っ子ながら家族思いの有能なリハビリ療養士を好演し新人賞を受賞。


この2人の役柄はタイでも反響が大きかったみたいです。

ヒロイン一家の家族の一員として一緒に暮らしているオカマのおねえさんが出てくるのですが、これがまたいいキャラクターです。オカマのおねえさんと弟2人がボードに文字を書いてやり取りをするシーンなど、すごくいいシーンだったのにカットされてしまってもったいないです。


台湾ドラマも表現的にひっかかることがあり、カットされたりセリフが差し替えられたりすることがあります。

「ザ・ホスピタル」(原題:白色巨塔)(ジェリー・イェン主演、蔡岳勳監督、2006年制作)では、ジェリー・イェンが演じる医師が勤務する病院に台湾総統の娘が入院し手術をするというエピソードがありますが、台湾「総統」という表現が大陸ではひっかかり、大陸のテレビ局東方衛視で放送された際は「総統の娘」ではなく「指導者の娘」(※指導者は中国語では「領導」)にセリフが差し替えられていました。総統が「省長」に置き換えられています。

「ハートに命中100%」(原題:命中注定我愛你)は、大陸では「愛上琉璃苣的女孩」というタイトルで湖南衛視で放送されましたが、カットされたシーンがたくさんありました。
(台湾三立電視2008年放送。陳喬恩、阮経天(イーサン・ルァン)主演で大ヒット)


映像が部分的にカットされたり、セリフが変えられたりすることはよくあることなのですが、なんとこのドラマの場合、ストーリー自体が一部変更されていました。ここまで変わっているのは珍しいです。
本当は事故で流産してしまうシーンがあるのですが、大陸版では流産したのではなく、「もともと妊娠していなかった」という内容に置き換えられているのです。これはストーリー上重要な意味を持つところなのに、そもそも妊娠していなかったということにされてしまったので、辻褄が合わないというか後半の流れに明らかに違和感があります。
大陸版には医師から「妊娠していませんでした」と病室で告げられるシーンがあるのですが、あのシーンは大陸用にわざわざ撮影したのでしょうか?それとももともと映像は存在して、セリフのみ大陸用に吹き替えられているのでしょうか・・・?

カットや吹き替えの変更以外にも、映像の一部にモザイクがかけられることもあります。
主人公が小学校の課外講座として陶芸を教えるシーンがあり、教室の黒板に小学校の名前が書かれています。台湾では小学校のことを「國小」(グォシャオ)といいます。「國小」は「國民小學」の略です。大陸ではこのような言い方はせず、小学校は「小学」(シャオシュエ)といいいます。大陸版では「國小」という文字の上にモザイクがかけられていました。中国共産党政府は台湾を国と認めず、中国の一部であるという政治的態度を取っているので、台湾が「国」という言葉を使うことに敏感に反応します。
「ザ・ホスピタル」で「総統」という言葉が差し替えられたのも同じ理由と思われます。総統は国の元首にあたるので、「国」と認めないとすれば、総統という言い方も認められない、ということになります。

日本で放送された「ハートに命中100%」も、ある部分にモザイクがかけられていました。
一体何にモザイクがかかってるんだろう?と不思議に思って、台湾版を見てみました。日本版でモザイクがかけられていたのは、サッカー選手ベッカムのポスターの部分でした。ヒロインの家の部屋にベッカムのポスターが飾ってあるのですが、選手映像の使用許可にひっかかるのでしょうか。
モザイクがかかっていたり、不自然にカットされていたりすると、逆に気になってしまいます。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする