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アジアの新勢力・タイドラマの魅力~~中国「安徽衛視」とPongとBee

2011年10月06日 | タイドラマ
中国ではタイドラマが密かにブームです。
正確にいうと、ある地方テレビ局が積極的にタイドラマを輸入して、次から次へと放送しています。タイドラマのことは中国語で“泰国電視劇”、略して“泰劇”といいます。
中国のテレビは、各地方(各省)ごとにテレビ局が置かれているのでチャンネル数が多く、一般的家庭で70チャンネル程度が視聴できます。多くの局が一日の大半はドラマを放送しており、複数のテレビ局が同じ時間帯に同じドラマを放送していることも珍しくありません。
放送枠が多いということもあり、中国はドラマの制作が非常に盛んです。テレビで放送されているドラマは、量的にいうと大陸ドラマが圧倒的に多いですが、海外ドラマも数多く放送されています。伝統的に多いのが、香港ドラマ、台湾ドラマ、韓国ドラマ、日本ドラマですが、いま海外ドラマの中で最も勢いがあるのがタイドラマです。
タイは東南アジアのエンタメ中心地であり、アジア各国の芸能が普及した時期も早く、90年代は香港や日本、2000年以降は台湾、韓国エンタメの影響が広がっています。

タイドラマをご覧になったことはありますでしょうか。

中国のテレビで放送されているものを何本か見たことがありますが、なかなか面白いです。日本でもタイドラマをやればいいのに・・・と思います。
俳優はイケメン、女優は美人でセクシー、お金持ちの上流社会が舞台となることが多く、衣装やセットなどが華やかで、ストーリーはハラハラドキドキだけどロマンチックで分かりやすく、ついつい先が気になって見てしまいます。

【中国で比較的早く紹介されたタイドラマ】
中国で最初にタイドラマが放送されたのは2003年頃と言われていますが、ヒット作といえるドラマが登場したのは2006年~2008年です。
中国タイドラマブームの先駆けとなった作品は「鳳凰血」(制作2002年)です。中国で放送されたのは2006年で、CCTV8中央電視台海外ドラマチャンネルで初放送されました。私自身2008年に「鳳凰血」の再放送をテレビで見て、生まれて初めてタイドラマというものに触れましたが、衝撃を受けました。面白いです・・!!
このドラマのことは昔の阿姐ブログ(FC2)に書いています。
http://allasia.blog74.fc2.com/blog-entry-168.html

「鳳凰血」のヒットに続いて、2008年に湖南衛視が「逃げ出したお姫様」(中国名:出逃的公主/22話or27話)というドラマを放送します。


これはタイ宮廷もののドラマで湖南衛視がゴールデンタイムに放送し、かなりの人気を集めました。しかし、このドラマ以降、湖南衛視はタイドラマの放送にあまり積極的な動きは見せず、安徽衛視という別の地方局が怒涛のごとくタイドラマを輸入し放送し始めるのです。

【“タイドラマの安徽衛視”】
「安徽衛視」というのは安徽省合肥を本拠地とする地方テレビ局の一つです。安徽衛視はタイドラマで差別化をはかろうという戦略を取っており、中国テレビ界において画期的な動きをしています。
安徽衛視のタイドラマ戦略が本格的にスタートするのが2009年で、「天使の争い」(中国名:天使之争/22話)というドラマを放送します。
ヒロインは努力の末に憧れのスチュワーデスになり、優れた仕事ぶりで周囲に認められるようになる。ヒロインはパイロットの男性に恋をするがその男性は既婚者である。別のパイロットの男性にヒロインは思いを寄せられ結婚に至るが、そのパイロットは破綻的な二面性を持っている。ヒロインが愛と幸せを手にできる日は来るのか・・!というようなストーリーです。



主演俳優&女優はPongとBeeです。PongとBeeはタイドラマの超有名なコンビです。(写真:CRI Online
タイドラマ人気俳優のPong(Nawat Kulrattanarak)と美人女優のBee(Namthip Jongrachatawiboon)
  

「天使の争い」ではPongがプレイボーイという言葉では済まされない、性格破綻といってもいい病的な浮気を繰り広げるイケメンパイロットを好演。ディープな役です。Pongはこの作品での演技で多数の賞にノミネートされたと言われています。(※詳細は未確認です)
タイドラマの輸入に乗り出したのは、日本ドラマや韓国ドラマに比べてタイドラマは版権が安く、コストパフォーマンスが良いという理由があったのですが、「天使の争い」は好評で視聴率も良く、タイドラマ輸入に自信を与えました。
2010年は、同じくPongとBeeのコンビ作品「キューピットの罠」が放送され、「天使の争い」と同様に好評を得ます。
名門企業家の兄弟と、貧しい家庭の姉妹の恋、残された子供を通じて繰り広げられる家族の争いと新しい恋の展開・・・というようなストーリーです。
「キューピットの罠」(中国名:丘比特的圈套/28話)


タイドラマの特徴を挙げると;

○俳優、女優は中華系やハーフが多い。モデル出身者が多く、長身でルックスが良い。
○上流階級・裕福な家庭が舞台になることが多い。
○男の方が富豪のプリンスで、ヒロインが貧しい家庭の出身というパターンが多い。
○親と家族を大切にするという道徳観が強い。お父さんの影は薄く、お母さんまたはお祖母ちゃんが強権を握っている。
○俳優も女優もセクシーでワイルド。悪役(ヒロインのライバル)の女優はロングヘアでいつも肩があいた服を着ている。
○ストーリーや演出などの点で、日本/韓国/台湾ドラマの影響を受けていることは公知のこと。
○展開は読めるけれどハラハラドキドキするストーリーでついつい見てしまう。
○脚本や設定にはツッコミどころが多いが、ドラマ(“Lakorn”)はそういうものとして受け入れられている。
○中盤は驚きの展開が続くが基本的にはハッピーエンドで、脇役はともかく主人公が病気や事故で死んだりすることはない。

タイの俳優や製作者側は、タイドラマの魅力は「ビジュアル、新鮮さ、馴染みやすさ」だとインタビューで語っています。どうしてタイドラマを見ようという気になるかというと、最大の理由は新鮮だからです。ドラマの中で描かれる風景や生活様式が目新しく、俳優や女優のビジュアルが魅力的です。

今中国で紹介されているタイドラマは、タイでは「Lakorn」と呼ばれるものです。
「Lakorn」はロマンチックで華やかな娯楽性の強い、大衆に人気の一種のドラマジャンルであり、これがタイドラマの全てというわけではなく、ましてやタイの現実社会を表わすものでもないと解説されています。
タイ芸能界は「Grammy」(GMM)という芸能事務所が圧倒的なシェアと実力を持っており、中国で放送されているタイドラマはほとんど全てGrammy傘下のドラマ制作会社である「Exact」制作の作品です。PONGとBEEもExact所属のタレントと紹介されています。更に、タイのドラマ・映画コンテンツを中華圏向けに輸出するエージェント会社が存在し、安徽衛視のタイドラマ戦略にも関与しています。

2011年、安徽衛視はタイドラマ放送に更に力を入れることを宣言しており、今年は8本のタイドラマを放送すると報道されていいます。作品の層は韓国ほどは厚くありませんが、魅力的なドラマスターを擁するタイドラマ。日本でも、韓国ドラマ、台湾ドラマに続きタイドラマがブームになる日が来るかもしれません。
コメント (8)
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