グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

広がりつつあるウメのウイルス病。

2013-02-11 03:20:41 | Weblog
広がりつつあるウメのウイルス病。


感染すると、ウメの実の品質の低下やウメの木自体の成長を妨げるために
ウメ栽培に甚大な被害を与えるウメのウイルス病が、拡大しています。

ウメの実の商品価値をほぼゼロにしてしまうという、このウイルスの名前
は プラムポックスウイルス。日本では ウメ輪紋ウイルスとよばれてい
ます。

このウイルスが日本最初に発見されたのは、2009年の4月のことでし
た。そしてその後のウイルス拡散の状況は以下のとうり。

1.平成21年4月東京都青梅市のウメにおいて、ウメ輪紋ウイルスに
  よる植物の病気の発生を国内で初めて確認。

2.その後の調査で青梅市のほか、あきる野市、八王子市、奥多摩町及び
  日の出町の範囲において本病の発生を確認。

3.平成22年5月から9月まで、防除区域と周辺地域おいての発生調査
  を行った結果、東京都羽村市などでの発生を確認。

4.平成23年5月から9月まで、防除区域と周辺地域などでの発生調査
  を行った結果、東京都福生市などでの発生を確認。

5.平成24年2月から10月まで、防除区域と周辺地域などでの発生調
  査を行った結果、東京都昭島市・兵庫県伊丹市などでの発生を確認。


という具合に、次第にこのウイルスの発生地域は拡大しています。

もちろん上記の発生地域では、ウイルスのまん延を防止し、その根絶を
図るために、植物防疫法に基いた緊急防除が開始されるわけですけれど、
〔なにせウイルが起こす病気ですから〕病気自体を治療する薬剤がないために

  ウイルスに感染し症状の出たウメの木の伐採と適切な処理
  ウイルスを媒介するアブラムシの防除
  発生地域からのウメの苗木などの持ち出し禁止

などといった対処療法しかおこなえないのが実情だという、じつに心も
とない状況となっております。

実際のところ平成23年に国が全国の梅の木の調査をした結果では、上
記の緊急防除がおこなわれている東京都と〔おこなわれようとしている〕
兵庫県のほかにも、茨城県・大阪府・滋賀県・奈良県においても、感染
が確認されている
とのことですので、〔ウメ生産農家であらずとも〕国
内におけるさらなる被害拡大が心配されているところです。

ちなみに唯一の直接的な病気の蔓延防止策である、感染したウメの木の
伐採にいたる基準ですが、

  ウメ畑では、「感染樹が1割以上で全て伐採」「一割未満で感染樹
   及び隣接している木の伐採」
  公園、庭木などの場合は、「感染樹のみの伐採」

といった基準が取られていますよ〔個人的には公園もウメ畑なみの厳しい
基準にすべき
だと思えます
〕。

いじょう、日本の伝統的な果樹であるウメの木の病気が、日本各地へと
次第に拡大しているというおはなしでした。


◎ 今年になって絶滅危惧種に指定されたニホンウナギのように、日本の
  ウメもピンチが拡大していくのかもしれません。そうなると“食い合
  わせ”などの言い伝えをはぐくんできた日本の文化も、意味を成さな
  くなっていきそうで・・・じつに寂しいかぎりであります。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「 本当は危ない有機野菜



春の小川は用水路。

2013-02-05 11:49:48 | Weblog
春の小川は用水路。

なにげなく見過ごしてしまいがちなのですが、冬の時期に枯れていた
田畑地帯にある小川が春になると流れていることに気づかれたことは
ありませんか。

じつはこれ、自然な小川ではなく農家の手によって人為的に流されてい
る用排水路の場合が多いんですよ。農家を主体にした水利組合の管理
のもと、計画的にながされている農業用水
なんです。

田の水を管理する水利組合は、農業生産を行う上で欠かせない用排水
施設の整備・管理や農地の整備いわゆる土地改良を目的として設立さ
れた農家の人たちの組織です。この土地改良区は全国に約7,000・
関係する農家は約300万人・関係する農地は約300万haといわれ
ています。

そんな日本の農業用用排水路の総延長は なんと 約22万km!

この距離は、ほぼ地球5.5周にも達っするのだそうです。現場にい
るわたくしなども、この話しを聞いたときにはさすがにびっくりしま
した。いや、すごいものですね。

そして、そんな日本の用排水路の管理についてのおはなしです。


田植えに先立つ2ケ月前、水稲農家の苗づくりと並行してこなわれる
のが、集落ごと・水の流れる系統ごとの用水路の清掃です。
イネの栽培がおわってからおよそ半年、繁茂した草や、その後の増水
などで埋まった土砂などが用水路から除去されます。もちろん投げ込
まれたゴミの処理も、当然あります。。

しっかりやっとかないと、水の流れがとちゅうで止まってしまいます
からね。自分のところに流れてきた水を、次の田畑へ流していか
ねば
なりません。

この用水路清掃には、その水利を利用する方たちが参加するわけです
が、かなりな時間と労力がかかります。自分の経験では、ひとつの水
利系統で半日くらいの出役となります。

このときに、同時に行われることの多いのが、畦の野焼きです。

年が明けて、この野焼きの煙が立ち上がると、ほどなく農村のいたる
ところで“春の小川”が復活します。


◎ 規模を拡大したり・高齢化の農家の農地を借りたりして田畑を
  耕作する方は、この共同清掃に何らかの形での参加が義務付け
  されますので、これがなかなかに大変。耕作規模が大きくなる
  ほど負担も大きくなるわけですから。これもまた、日本の耕地
  面積の土地集積が行なわれにくい大きな要因のひとつ
といえる
  でしょう。
  余談ですが・・・この大きな問題を無視して農業の規模拡大を
  唱える一部の農業評論家の方の農業論には、疑問をもってしま
  いまうんですよね、どうしても/笑。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg「「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染




河には、たくさんいたウナギの稚魚の思い出。

2013-02-02 15:56:43 | Weblog
河には、たくさんいたウナギの稚魚の思い出。

ニホンウナギが、とうとう絶滅危惧種に指定されたというニュース
を受けての、当ブログでのウナギの記事 の再掲載となります。
ひきつづいて 昨年1月の記事ですが、よろしかったらご参考に。

 ↓

市場に出回っているウナギの蒲焼きに使用されるウナギのほとんどは、養殖
されたものだといわれています。しかし養殖とはいっても、その養殖される
ウナギの稚魚は、天然のもの・・・人工的に繁殖させる技術が確立していな
いウナギ
では、海から川に溯上してくるウナギの稚魚を捕獲して育てあげて
いるのが、ウナギ養殖の実態
なんですね。

そんなウナギの稚魚であるシラスウナギの捕獲数が年々減少していますよ。

 昭和32年 207トン →  平成20年 9トン !

これがシラスウナギの全国での数字でみた捕獲実績です。これほどまでに捕
獲される稚魚の数が激減している・・・まさに危機的な情況です。

その原因としては、ここのところの温暖化や、今年のような極端な低温とい
った気象の変化によるもの、エル・ニーニョやラ・ニーニャの影響及び潮流
の変化といった海の環境の変化、さらにはアマモ場の喪失やコンクリート護
岸の影響、さらには水質汚染や乱獲によるものといった人為的な影響などが
推測されています〔おそらくはいろいろな要因が複合的に影響しているのでしょう〕。

それにしても ウナギ です。

人気の食材として、日本人にとって大変身近な存在であるウナギ。
であると同時に、
いまだに 多くの謎を秘めた生き物であるウナギ 。

日本で続く数年越しのシラスウナギ狂想曲を横目でにらみながら、これからも
ウナギは〔その不思議な産卵行動も含めて〕人の予想を大きく超えた生命活
動をとり続けていくのでしょう。

願わくば、漁師さんのためにも、ウナギ好きな方のためにも、日本の経済の
ためにも、そしてウナギ自身の生活史に関わる水環境の改善のためにも、か
つての日本のように丼いっぱいのウナギが普通に獲れるような時代が復活し
てほしいなと思っています。

そして個人的な昭和40年代の思い出ですが・・・コンクリートによる護岸
工事がはじまっていなかった当時の 南九州の大河川の河口付近の岸では、
干潮時には砂や泥の浅瀬が残っており、厳寒期にはそこにゴカイなどの生物
とともに、シラスウナギの姿が多数見られたものでした。

川石を裏返しにすると数匹の半透明のシラスウナギが、くねくね、くねくね。

そのころには、丼鉢にいっぱいのシラスウナギも、 そう珍しいものでは
なかったはずです。・・・いまとなっては懐かしい思い出ですねぇ。


◎ タイムマシンがあれば 当時にもどって磯遊びしてみたいなって、
  おもいます。


51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染





ニホンウナギが、とうとう絶滅危惧種に。。

2013-02-02 04:00:06 | Weblog
ニホンウナギが、とうとう絶滅危惧種に。。

ニホンウナギが、とうとう絶滅危惧種に指定されたというニュース
を受けての、当ブログでのウナギの記事 の再掲載となります。
まずは昨年1月の記事ですが、よろしかったらご参考に。

 ↓

『高騰するシラスウナギ』

12月から翌年3月までの厳寒期 のいま、ウナギの稚魚であるシラス
ウナギを採取する漁が、太平洋岸の全国各地で行われています。
そんな漁の状況ですが、昨年・一昨年同様に、ことしも不漁の傾向が
色濃くなっているようですよ。

水産庁によると、極度の不漁といわれた10年の9・2トン、11年
の9・5トン
にさえも、遠く及ばないのではないかといわれはじめて
いるようです〔ちなみに09年には24・7トン/全国〕。

そのために シラスウナギ価格が高騰 。

大産地のひとつ宮崎県では、今期のシラスウナギの取引価格は当初
から1キロ156万円と高騰し、1月下旬には過去最高の1キロ222万円
にもなったという高価格も記録しています。

といわれても、どれくらい高騰していのかが一般の方には、ピンと
こない話しであろうと思います。
そこで、1キロ222万円のシラスウナギを 1匹当りの値段に換算
してみますと・・・

 シラスウナギ1匹あたりだいたい400円!

にもなるというのですから、驚かずにはおられませんよね。

ちなみに、あのバブルの時代のシラスウナギの価格でさえ「1キロ当り
百万円台、2百万円にはとどかなかった」
というのですから、今季の
キロ222万円という価格がいかに破格の値段であるのかがわかろう
というものです。

そして、こういう話しを聞くと・・・

よし、今年の冬は西日本でシラスウナギを採って一攫千金を

などと、考えられる方がおられるかもしれません。

しかし、シラスウナギ漁はそれぞれの県内水面漁業による許可制です。
かってにシラスウナギを捕獲すると密漁扱いとなり逮捕されますので、
注意されてくださいね。

つづく。


◎ シーズンにはいると密漁逮捕者のニュースが、産地の新聞
  紙面を にぎあわせるんですよね。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染