水飲み百姓と辛口カレー

今朝は雲が広く垂れ込めて風も冷たかった。

ひと雨来るかな？と思いながら刈った草を集めていたけれど、結局ひと滴だに降らず。朝仕事が終わる頃には青空が広がり、空気は再び夏の熱を孕んで来る。

もう、しばらく雨が無い。当然のことながら梅雨入り宣言も無い。この春以来空は晴れ渡ってお日様は八方美人振りを全開で発揮している。野菜の種も発芽しないし成長も遅い。これをもしかして「旱魃」と呼ぶのだろうか。
鶏たちもバテ気味で喰い付きが目に見えて落ちている。朝方庭に放してやるとそのまま木陰に直行して、餌を持って行ってもいつものように駆け寄って来ない。
私も早朝から滝のように汗をかく。それこそ本格的な夏になれば一日に何度も下着を取り替えることになるのだけれど、幸い今日の風はどことなく涼しくてシャツもすぐに乾く。雨雲が西の方にあるのだろうか。

でも飲む水の量は凄い。昼の作業の合間にゆうに１リットルは飲んでるだろう。また喉を通る水の美味しいこと！・・・
またこんな時には甘いものも欲しくなる。いつもは鶏の世話をしながらついでに摘まむ桑の実も、この頃は一日に何度となく桑の実を摘みに行って、そのついでに鶏の水を取り替えたりしている。何しろこの実は今のところ我が家で唯一の果物である。しかも一年のうち今しか食べられない。桑もさすがなもので、朝行って昼間行くと、もうその間に幾つもの実を黒く熟させている。雨が降らないのにしたたかな生命力だ。よほど根が深く張っているのに違いない。
こんな時には自動販売機で売っているジュースをグイッと飲んだらさぞかし気持ちがいいだろうな。多分天国に行くような快感だろうなと思うけれど、自動販売機は近くに無いしまた私の方もとりあえず今のところ水で間に合っている。
昔北海道で農業実習をしていた時に、ある農家の方が「どんなに暑い時にも水を飲んでいる限り大丈夫だ」と言っていたのを思い出す。その意味するところを後年実感することになった。ジュースを飲んでいると体力が続かなくなってバテてしまうのだ。更にもっと、もっととジュースを飲みたくなる。でも水を飲んでいる限り、そんなことはない。

水飲み百姓はタフなのである。こうして何百年、何千年も百姓は生きながらえて来たんだろう。粗食やつつましい暮らしの中には意外な「知恵」がぎゅうぎゅうに詰まっている。

さて、今日の仕事はとりあえず午後４時でもって終了ということにする。あまりにも暑過ぎる中、これでもたくさんの仕事をした。私の体は機械ではないので、時に応じて休養も気晴らしも必要だ。しばらく更新していなかったBLOGのことも気になっている。
早めの夕食。いつもの野菜鍋（今日はニンニクとコンフリーに頂き物の玉葱とエンドウマメ、それと草刈の時に採って来た筍を煮込んでいる）にミョウガの酢漬けと唐辛子をみじん切りにして入れる。それと塩とカレー・ルウ。
これが我が家の辛口カレー。
時々の野菜と唐辛子で食欲不振も何のその。

・・・しかし、辛過ぎた！　汗がカレーの丼にポタポタと落ちる。一杯食べるうちにビールを３本も飲んでしまった。

しかもこれで一日が終わりではない。これから裏の畑で枯れ草を燃やさなきゃならないし、夜には今日も寄り合いがある。まったく、百姓は起きてから寝るまで「休み」というものがない。折々に休むことは休むのだけれど、決められたスケジュールが無いものだから忙しい時には暮らしと仕事がイコールで結ばれてしまう。
でも今日もこうしてBLOGを書けた。つくづく私は幸せ者なんだな。まだ明るいうちにビールを飲みながらBLOGを書いてるなんて、近所のお年寄りに知られたらたちまちに「怠け者」のレッテルが中を飛び交うことだろう。

辛口カレーで更に汗をかいたら何だかすっきりした。暑い時に更に暑くなる食べ物。これもなにがしかの「知恵」なのかもしれない。