ただ息をしているだけで気持ちよい。
横たわって呼吸をしていると体中の血管が拡張し光の塵のような粒を全身に漲らせてくれる。大きく吸って、吐く。その単純な行為が無限の快感を伴った生体活動に感じられ、同時に私の体は空気中に浮遊する微小体と不可分な位置関係にあることがわかる。
吸って、吐く。この動作には生き物が生きるその由縁が、もしくは原型があるのではなかろうか。
ただ寝ているだけで一時間、二時間が滂沱 . . . 本文を読む
足の裏がムズムズして落ち着かなかった。
寝ようとはするのだけどあっちにゴロリこっちにゴロリ、とても寝付けない。皮膚ではなくて足の内側骨の隙間に微細な虫がわさわさといるみたいだ。堪らなくて足を片方ずつ胸に引き寄せては指圧した。土踏まずから指の間・・・そうするうちにゲップが出てきた。次から次と留まることを知らない。腸もグルングルンと動き始める。何も食べてないのにどうしてこんなに動くのだろう。
しばら . . . 本文を読む
ウサギというものはとても食べる動物だと思う。雪の厚く積もったこの時期に草を確保するのはとても難しい。雪を掻き分けて凍った葉っぱや枯れ草を両手一杯に集めて与えても、彼らは瞬く間に食べ尽くす。さすが草食動物だ。草だけで体を維持するというのはこういうことなのだろう。
だからこの冬の私の懸案はウサギの餌の確保だった。もちろんカボチャやジャガイモはストックがあるし適度にやれば彼らも喜んで食べるのだが、やはり . . . 本文を読む
昨日までの寒さがやっと緩んで今日はとても暖かな日だった。
昼間厚く積もった雪が次々とトタン屋根を滑り落ちていく。つまり戸外も0度以上になっているということだ。大きな雪の塊が地響きとともにズシン!と軒下に落ちるので注意しないといけない。特に猫たちがあの雪の直撃を食らったらただでは済まないだろう。だからいいか、お前たち、注意しろよ、と時々言い聞かせている。
さて今日は断食を始めて3日目になる。
つい . . . 本文を読む
左手に持った大皿には鶏肉とカボチャ、それに熱い野菜汁がかけてある。この寒さでは外に出たとたんに汁は急速に冷めるのでスヌーピーが食べる頃にはちょうどいい温かさになっているはずだ。それと右手に鶏小屋の水鍋を溶かすための熱湯の入ったやかん。
犬に餌をやり終えてから今朝から気にかかっていたあの姿を捜した。
白一色としか形容の無い世界。その中で吹雪に晒され雪の貼り付いた鶏小屋の床下だけが黒い地面を剥き出しに . . . 本文を読む
あまりに明るいので目が醒めた。起きてストーブに薪を足してから時計を見る。なんだ、まだ4時だ。
西の野が窓を透かしてベージュ色に光っている。雪の照り返しで庭中がほの明るい。月か。寒いのでわざわざ窓を開けて見るまでもないだろう。こんな明るい夜には、きっと雲ひとつ無い紺青の空に射抜くような満月が浮かんでいるに違いない。どうりで今朝もこんなに冷え込んでいる。
外が白むのを待ってスヌーピーと散歩に出た。毎 . . . 本文を読む
冬のしょっぱなから激しい寒波がやってきた。
明け方の気温はマイナス8度。日中もマイナス3度を越えない。どこか凍ってるのだろうか。エアーコンプレッサーが動かないので機械を使っても掃除ができないでいる。
でも鶏やウサギたちは元気だ。彼らは滅多なことで寒さで病気になったり死ぬようなことは無い。猫家で飼う生き物は元々日本の気候風土に適したものたちだから、真冬の零下10度を越える寒さでも風通しのよい小屋の中 . . . 本文を読む
ある日の午後、私は買い物から帰って玄関の戸を開けた。
「やあ、寒い。寒い。・・・ただいま。留守番ご苦労さん。」
「おかえり・・・」
「あれ?アポロ、ちょっと元気が無いな。」
「・・・ううん。そうでもないよ。・・・」
「? ・・・あっ!アポロ、脇腹のところ・・・」
「う、ううん。なんでもないよ。」
「ちょっと、見せてみろ!」
「いや、あの、ちょっと・・・」
「これは・・・毛が焦げてるじゃないか! . . . 本文を読む
「おいおい、この葉っぱ、凍ってるよ。」
「うん・・・ちょっと待遇悪いな。前の家はこんなこと無かった。
でもこっちのうちの方がいいこともあるよ。家は快適だし風通しもいいしさ。」
「は、は、はっくしょい!・・・冬に風通しがよくたって風邪を引くだけじゃないか。」
「そりゃあそうだけど・・・じゃあ新しくできたボクらの家の中へ入ろうか?」
「ちょっと待って!・・・やっぱりこの葉っぱ、もう少し食べてから。・・ . . . 本文を読む
我が家の玄関には火鉢猫がいる。
茶箪笥の棚に置いた有線電話から朝の挨拶と6時のニュースが流れる頃、外はまだ暗い。最低気温はマイナス6度。そんな朝にも猫家の猫たちは元気だ。私が布団の中でもぞもぞしてると早く起きろとばかりに合唱が始まる。我が家では猫たちは冬でも戸外で寝かせている。
戸を開けると一斉に猫たちが雪崩れ込んでくる。今日の朝ごはんは玄米と鶏肉入り野菜スープ。ストーブの上で煮詰めた鍋にはカボ . . . 本文を読む
私は百姓だからいろいろなものを作る。
今日作ったのはこれだ。
うさぎ小屋
そう、我が家にウサギが来るのである。近所の方が飼っていたウサギを分けてくれることになった。そこのお婆さんは可愛い孫のためにと、ある日ペット屋からウサギを買って来たんだそうだ。けれど当の孫はどうやら見向きもしないみたい。加えていつまで経ってもなぜか子ウサギが生まれない。
私が見に行ったらなんのことはない。4羽みんなオスのよ . . . 本文を読む
さて、音楽にまったく疎い私であるが・・・
しかしこんなことを言うとなぜかみんなあんぐりと口を開けて、まるで大和撫子に化けたタヌキを見るような風に私の顔を見つめるのだけれど、
実は私、昔モダンダンス部に所属していたことがある。
それは大学2年の青春真只中に砂浜で拾った小さな貝の化石・・・なんてロマンチックなことは決して、無い。でもたまたまついさっき思い出したので今宵は特別このBLOGを読んでくれる . . . 本文を読む
このところ気温が低い。
雨は夜半から雪に変わり今朝になっても降り続く。
今日は石臼を出して粉を挽いた。
冬になるとよくパンを焼く。朝方ストーブの側で温まりながら粉を練り生地を寝かせてオーブントースターかストーブの上で焼く。なぜ冬かというと、多分それ以外の季節では気持ちの余裕が無いからだと思う。パン焼きは単純なようでいて結構時間と落ち着きが要るものだ。焦っているとパンはうまく焼けない。
麦はそも . . . 本文を読む