そう、ふいに目覚めた冬の夜更けに、静けさがキインと耳たぶを押し付けてくることってある。軋る天球の擦過音。ずっしりと冷たい地球の体重。そんな中にそこはかとなく軽い明け方の空気を感じて、静かに体をずらしながら、感覚の触手を真空の空間に拡げてみたりする。そんな夜にはやがてくる夜明けのことを考えて、いやなにどんなに寒くたって朝一番に猫たちに餌をやらなければならないものだから、思い切って起きて冷え切ってし . . . 本文を読む
雪がないおかげで思ったよりも早く着いた。砂利が半ば土に埋もれかけた駐車スペースに斜めに車を突っ込むと、音の無い衝撃とともに車は止まった。外は久しぶりの小春日和だ。足元を見ると前輪のあたりから壁に沿って古タイヤが並べられている。そのタイヤに導かれるようにして軒先をぐるりと回り、正面玄関へと向かう。そこにはアンティークな、というより単に田舎臭くて古めかしい木戸が一枚立ててあった。前に一度見てるはずな . . . 本文を読む