じいさんは少し悲壮な面持ちで呟いた。「カズヤ、あんまし難しい単語、使わねでくんねえがな。オメエは学理があっていいけんども、オラはあんまし勉強して来ながったで・・・」
「ああ、そんなつもりじゃなかったんだけど、環境とか生物学ってのには難しい言葉がたくさん使われてて、どうしてもそれを使ってしまうんだよ」
「特に横文字なんぞは、わだしらにはしんどいでがんす」
「でもじっちゃんは昔から物事の本質を見抜く . . . 本文を読む
「なんだな、カズヤ。したらば、このまま自然の破壊が進めば、世の中にゃあ害虫とかしぶとい雑草しか、残らねえっつうごどか?」
「うんまあ、極端に言えばそうなるかな」
「したらますます薬撒かねばなんなくなるでねえが」
「それ、それだよ! そうやって人間はどんどん土や水を汚染して、身の周りに生きものが住めないような環境にしてしまったんだ。ある虫が嫌いだからと言って、殺虫剤を撒いて皆殺しにする。すると生きも . . . 本文を読む
「地球温暖化」が叫ばれるようになったのは、実はそれほど古いことではありません。
地球の気候に関しては、1980年代前半までは逆に「地球寒冷化説」が学界の定説となっていました。しかしこの寒冷化説には明確な根拠がなく、それに対しての科学的検証を進めていったところ、驚くことに実は地球が温暖化していることが明らかになったのです。1980年代後半、アメリカ上院の公聴会において「地球温暖化による猛暑説」が . . . 本文を読む
稲こきの終わった枯れ葉色の田んぼにじいさんが立っている。もぞもぞと鍬を動かして、どうやら畦畔の崩れた箇所を直してるようだ。側ではばあさんが藁クズを集めて火を点けたりしてる。煙は風にあおられて、実の赤らんだ柿の枝をすり抜けながら、天を舞う羽衣のように絹雲の中へと消えて行った。
「ありゃ、じっちゃ! あのデッケエ鳥はなんだべな?」
いきなり声を上げたばあさんの視線をたどっていくと、杉の梢の向こうに . . . 本文を読む