我がムラ恒例の祭の日取りは5月5日と決まった。
この祭は昭和6年5月7日(旧暦)にこの集落で火事が起こり(「芦沢の大火」として郷土史に記録が残されている。)、民家6軒全焼、更に後ろの山に燃え移った火はその後一週間も燃え続けたといった出来事に起源がある。
当時はどの家も茅葺きの屋根で車の通れる道も限られていたから、一旦野山に火が点くとどうしようもなかった。唯一の消火手段はバケツリレーと手漕ぎポンプし . . . 本文を読む
・・・・
え!?
マルダヌキ・フランソワ・ハラヘリーヌ・・
あ、あなたは・・・
長き間待たせてすまなかった。・・・
ジャン・ジャカジャン・ドゥ・ポンポコ様っ!!
約束の時は来たり。
我が麗しのドゥルシネーアよ、今こそ共に行かん。
は、 ハイッッッ!!(嬉涙
うわぁっ!!! マ、マルダヌキっ!
うげえっ!・・・
や、やめてくれえ . . . 本文を読む
「ちょっと、実家に行って来(き)す。・・・」
栗山に鳴く鶯の声に誘われて彼女は言った。
4月も下旬になったというのに、このところ朝はめっきり寒い。昨日もだいぶ冷え込み、朝方庭に出たら畑が真っ白く霜に覆われていた。それでも昼を過ぎる頃になるとようやく風も暖かくなり、野原をさわやかに吹く風が梅の梢を揺すらせて、その度にポッ、ポッと少しずつ花が咲き開くように思えるくらいだ。
彼女は今年80を迎える。 . . . 本文を読む
ヤマトはきれいな長い毛をした黒猫です。
今日は初めて海に、魚を捕りに行くのですね。
ヤマトは魚が大好物なのです。
* * *
「じゃあ、行って来るよ!」
「気を付けてね。美味しい魚、待ってるからね。」
「うん、今日は魚のフライだよ!!」
ヤマトとマルダヌキはみんなの声援を受けながら、海に漕ぎ出しました。
「なんだかこの船、今にも沈みそう . . . 本文を読む
(前回「凍てついた朝」の続きです。)
今朝、狐は死んでいた。
明け方に鶏に餌を持って行ったらぐったりとしていた。「だいぶ弱ってるな・・・」と私は思う。昨夕までは確かに生きていた。
捕らえられてから3日、狐は意外なほどに大人しい。檻周辺の土と枯れ草を掻き集め、床の上に考えれる限り快適な「マット」を作ってから、彼はその上に丸くなっていた。いつ見てもほとんど同じ姿勢で変わることがない。私が近づいても . . . 本文を読む
今朝は霜が降りた。
鶏の水も、ドロ貝を入れたたらいも、日に日に勢力を拡大していた裏庭のクローバーも、みんな凍っている。
北国なんだな。お花見のBLOG記事を読んだりすると、そんな世間が少し遠い世界のことのように感じられてしまうよ。こちらではまだ梅も咲かない。
でも春の息吹は野に山に力強い。
後半月もすれば、この里でも花見ができるようになるだろう。
昨日裏庭で狐を捕まえた。
野犬捕獲のために設置し . . . 本文を読む
この冬から書き始めた「アルゼンティン・シリーズ。
遠い昔の事なのでとうに記憶の範疇からさえも外れてしまっていたことが多く、当初はまあ、ひと月も書き続けれたら凄いな、なんて思っていた。ところがどうして、古い手帳を繰るうちに思い出は思い出を呼び、とうとう春になってもまだすべてを書き終えていない。
冬の朝仕事を終えたひと時、薪ストーブの上でコーヒーを温めながら、雪に埋もれた窓外を見やりつつ手繰った細い . . . 本文を読む
この時僕はひとつだけ命拾いしていた。
実は昨日野営地を決める時に、川のほとりの平坦な場所にテントを張ろうとどれほど思ったことだろう。そうすれば敷設も楽だし焚き木も集めやすい。それに水もすぐ汲める。河原はその辺りで唯一の平坦な場所だったし、いかにも宿営の場所としておあつらえ向きに見えた。けれどその時僕は、あまり川の近くでテントを張るもんじゃないという野営の掟を何となく思い出していた。だから念のため、 . . . 本文を読む
水色のシエラは、僕の体に大自然の力を刻み込んだ。
人間は自分の力で生きているのではない。大自然が僕らを生かしてくれているのである。
* * *
君はもう、シエラに行ったかい?
コルドバに住み始めてから、何度 . . . 本文を読む
昨日ジャガイモ畑と田んぼに堆肥を撒いた。
ようやく春が来たのである。これからまた一年間、フィールドでのさまざまな「いのち」たちとのつき合いが始まる。そしてこの軽トラ3台分の堆肥は、夏から秋にかけて実り豊かな「収穫物」となるはずだ。
しかしダンプに堆肥を積む過程で、ちょっとした「思わぬ障害」に出くわした。
堆肥の中のそこかしこに、かぶとむしの幼虫が顔を覗かせているのだった。(中にはお尻を覗かせている . . . 本文を読む
今朝は少し肌寒い。
このところの夏のような(「春」じゃなくて一気に「夏」!)陽気、それに続く春の嵐。昨日までの突風で、温まった空気はひとまずどこかへ吹き飛ばされたみたいだ。朝6時前、窓を閉めて軽トラの暖房を入れる。
今日はゴミ拾いの日。
年に2回、春と秋に集落挙げて主要道のゴミを拾い集める。ここは山のどん詰まりに近いけれど、市道が一本山を越えて隣り集落まで伸びている。1kmくらいのその峠道は、遠 . . . 本文を読む
寝て・・・
(ようやく春になったのヨ。)
暑くなると移動して・・・
(タヌキは四つ足なのじゃ。)
また寝る。
(タヌキ寝入り暁を覚えず、なのヨ・・・)
「あんなに一日中寝てばかりじゃ、体に悪いなあ。・・・」
「タヌキがウシになっちゃうわよ。スヌーピー、何か言ってあげたら?」
(ふん、24時間睡眠に耐えられる頑健な体を持ってるのじゃっ!)
「うぅん・・・そうだ! いいこ . . . 本文を読む
猫たちの誕生日だから、なにかやってやりたいと思っていた。
4月4日はロッキー、レオ、マスキーの、そして5日はコマリンの誕生日。
この前車を運転していてふと思い出した。
あいつらもこれでもう1年、歳をとったんだな。
4才のミーコを筆頭に、3才、2才・・・と猫の世界は1年ごとに新しい世代が生まれる。
猫家で一番若いタインも、もう(推定)1才と8ヶ月になった。
彼らにとっての1年は、もちろん僕たち人間 . . . 本文を読む
「・・んでは、アグリコ君を部落長にということで・・・」
当惑する者、苦笑いをしながら迎合する者、真剣に頷く者、辺りの人の顔をそれとなく窺う者・・・さまざまな顔がそこにはあった・・・。
年度末の我が臨時総会は揉めていた。今年は2年に一度の役員改選の時期。今回はすべての顔ぶれを一新しなければならない。前期の役員たちは軒並み辞意を表明していた。
戸数30戸余りの小さな。去る者は多く外から入 . . . 本文を読む
古い茅葺き屋根は傾斜が急で、屋根自体とても大きい。
誰が最初に茅を屋根の材料に使うことを思いついたんだろう。
多分何百年、何千年もの昔から使われていたに違いない。それだけ「茅」という材料は丈夫で腐りにくく、枯れてからもずっと硬いままなので雨を弾く。
竹や木と並んで、家を建てるに無くてはならない物だったんだと思う。
その茅を剥ぐには、まず手に鎌を持って屋根のてっぺんに登る。
そして足元の茅を掻き集 . . . 本文を読む