以前の記事『主、再び?』で紹介した大蛙について、先日思い出して隣りのジッちゃんに訊いてみた。
体長30cmはあると思われた(もしかしたら少し大きめに印象付けられたのかもしれない。実際は20cmくらいかも。)あの巨大ガエル、あれ以来姿を見せない。
気をつけてはいるけれど、それらしい鳴き声もついぞ聞こえない。
隣りのジッちゃん、バッちゃん曰く、
あぁ、あれな、
ここら辺じゃ「フルタ」っつんだ。
昔 . . . 本文を読む
杉山に入って山道をおよそ300m、登るほどに道はますます急になる。
いい加減、まだかいな。
膝に手を当て歩くに弾みをつけながら、振り仰ぐと枝を通して蒼い空が透けて見える。
そうしてやっとこ登り切ったところに、「お伊勢さま」はあった。
昨日はの老人クラブの神社の掃除。
私は鎌とチェンソーを持って出かけていった。
ひとり暮らしで都合がつかず参加できないお婆さんから、代理を頼まれてのことだった . . . 本文を読む
昨日はまだましだったが、
今朝は一面がっしりと、霜が降りておって、
野原も畑も銀色に輝いてた。
鶏も心持ち寒そうでな、
あいつらにとっちゃあ、初めての霜だもの。
日はまだ山の端から覗いていない。
雲などひとつもない。
透明な空に青と橙のグラジュエーション。
凛と、張り詰めた朝だった。
スヌーピーは勇んで駆け回るが、
こんな時には、猫だって
歩くの冷たかろう。
玄関先の寝床の箱に、
3匹も . . . 本文を読む
人には人の、歩き方があってね、
早足で歩く人もいれば、
なりふり構わずバタバタ歩く人もいる。
止まったようにじっとしてる人もいれば、
のんびりと、辺りを見回してる人もいる。
でも、みんな留まるということなく歩いているんだよ。
決して前には進まない、この生を歩いてる。
今のぼくの道連れはさ、
くすんだ色の猫たちと、白い犬、
そして大勢の鶏たち。
小さいけれど草や虫たちだって、時には一緒に歩く友だち . . . 本文を読む
ネズゴリラは石灯籠を投げつけようとしていた。
立っているのがやっとのマル。
地面に落ちて、燃えるターシャ。
マルはこの時生涯で初めて、すべてを諦めかけていた。
自分はもう、何もできないのか!
次の瞬間、
天空からひと筋の閃光が走った。
光は掲げられた石灯籠を真っ二つに粉砕し、
ネズゴリラの肩口から入って股間より地面へと、
一直線に、貫く。
すべてが青白く、煌いた。
バシィィッ!
ウギ . . . 本文を読む
ネズゴリラがマルをあわや鷲掴みにするその瞬間、
マルは猫のような敏捷さで空高く飛び上がった。
野生の勘である。
幼い頃から野山の動物たちと遊び戯れていたマルの直観力が、今この瞬間に鋭く働き続ける。
ネズゴリラの両腕は、空を掴んだ。
高く舞い上がったマルは、上体を反転させると同時に、渾身の力を込めて、ネズゴリラの顔面目がけて回し蹴りを叩き込む!
バシイッッッ!
マルの全体重をかけた回し蹴り . . . 本文を読む
外は既に、薄暗くなっていた。
日は西に傾き、杉の梢を通して鮮やかな夕焼けが空に映える。
秋の風が冷たく枯葉を運んでいる。
そんな穏やかな秋の夕暮れとは裏腹に、ここ大岳温泉では潜伏裏に熾烈な戦いが展開していた。
山の端から、林の下草から、潅木の茂みから音も無く忍び寄るネズロン兵。
その見えない影に対して、今マルはひとり戦いを挑んでいた。
いや、ひとりではない。ターシャという仲間とともに。
ー 右 . . . 本文を読む
マルは客間で、その生き物を介抱していた。
ターシャと名乗る生き物は、どうやらマルに危害を加えるつもりはないようだった。
マルの投げた石鹸に当たって、どこかを痛めたらしい。
ひとりで立っては歩けないようだ。
マルは服を着て、彼を部屋に連れて来て応急手当を始めた。
ー ボクはターシャ。南の島から連れてこられた。
彼はポツポツと話し始めた。
もちろん、彼の素性を知りたいと思っている、マルの心を読ん . . . 本文を読む
稲穂を駆け抜ける秋風、故郷の山。
マルは今、司令部から一週間の休みをもらって、里帰りしている。
思えば上京してから早1年。
その間昼夜の別無く、いつでも非常事態に備えて臨戦態勢にあった。
戦いのない時はもっぱらトレーニングに明け暮れる毎日。
若い身空にしては、我ながらハードな生活だと思う。
今マルは1年ぶりに、オーブの任務を忘れて、家族とともにくつろぐことができるのだった。
温かく送り出してくれ . . . 本文を読む
神話や伝承で時々見かける共通した話の筋に、
英雄が森に入って、数々の苦難を乗り越え、
またはかつてなん人も解けなかった謎を見事解き明かし、
辿り着いた先には、
「鏡」
があった。
というものがある。
古今東西、具体的な登場人物やストーリーに違いはあっても、不思議とどれも似たような内容を示唆している。
その鏡とは、なんだろうか。
森の中での試練や謎とは、なんなのだろう。
そしてこの筋書きは、いったい . . . 本文を読む
この頃は、日中陽が差す日でも、夕方になるとめっきり寒い。
夜ともなれば、いくらセーターを着込んだとしても、コタツか毛布にでもくるまらないと居たたまれなくなって来た。
このところ、夜から明け方にかけて、我が家の近くをキツネが通る。
キツネの声は、お話では「コーン」と鳴くように言うけれど、
実際に聞くと、「ギャーッ、ギャーッ」と聞こえる。
最初は、喧嘩で声を枯らした猫だろうか、なんて思ったものだっ . . . 本文を読む
もうどこの家にも
コタツやストーブが出てるというのに
相変わらず 我が家だけ
毛布にくるまって 我慢大会
もう秋も深まり
田んぼでは稲こきが始まっている
朝の寒さは指先を凍らせ
昼のから風は稲藁を飛ばし
星空の下に 寂しく犬が吠える
もう そんな季節になったんだね
この世界は今 太陽から
ゆっくりと 離れていくみたいだよ
そうだな ぼくはきっと
ほんの小さな時からさ
こうして 何でも我 . . . 本文を読む
秋の夕暮れは早い。
ある晴れた日、神社の杉木立の間を白い車がやって来るのが見えた。
随分ゆっくりした運転だ。私は早めに麦こきを切り上げて唐箕を納屋に仕舞おうとしていた。
「誰だろう、あの車。」
どうも見慣れない車だ。この辺りの人ではないかもしれない。
しかし中から下りて来たのは、日頃親しくしていただいている同じのあるお爺さんだった。
70を過ぎて間もない彼は、近所でも評判の米作り名人である。 . . . 本文を読む
まだ、お玉さんの「【予告!】ぐぅ殿堂入り記念『バーチャル宴会』」を読んでいない方は、そちらを先に読まれることを、お勧めします。
お玉社長江
今晩の宿と宴会の手配、でぎだがら、お伝えするっちゃ。
まず、会場はここ、大岳温泉
うぢがら、車で1時間の近場にあっで、交通至便。
知り合いの経営する、旅館だんべ。
安いぞ。
でも多分、今ぁガラ空きだべよ。
半年前から、客入んの、見たごどねえ。
地 . . . 本文を読む
工房あぐりこ代表、猫家亜久利(通称「あぐりこ」)は、一枚の葉書を受け取った。
秋晴れの暖かい日だった。
ちょうど軒先に干し芋を吊るしていた時に、郵便配達のおっちゃんがスクーターで持って来てくれたのである。
郵便は、ここでは週に2度しか配達されない。
差出人は、「gooblog事務局」と書かれていた。
裏を返すと、
「★goo ブログ セレクション 選考結果のお知らせ
この度あなたのblogは . . . 本文を読む