本当ならとうに梅雨も明ける時節になって、いつまでもサラッとした雨が降り続く、典型的な梅雨の気候になった。つい先週までは、去年と同じようなカラ梅雨だったのにね。本当に近頃の天候っておかしい。でもおかげで井戸の水位も戻ったし、涼しいから体も休まるし、これからの本格的な夏に備えることができる。正直言ってこのところ、過労気味だった。
ただ、稲はちょうど今が減数分裂期で、一番低温に弱い時期なんだ。人間で . . . 本文を読む
愛してるよ。大好きだよ・・・
そう、彼らはいつもそう言っていた。玄関のポストの上から、ダンボールの中から、胡坐をかいた私の膝の上で、時に優しい視線で、さり気ない素振りで、感情をこめた声で、彼らはいつもそう言っていたのだ。愛しているよ。大好きだよと。
でも私は彼らの言葉に気づかなかった。犬や猫の意思表示の仕方は、人間のそれとは大いに異なる。人のように独特の文化様式を持たないだけに、彼らの表わし方 . . . 本文を読む
朝露にぬれた沢沿いの道をスヌーピーと歩いていると、梅雨の間にいつしか首を高くもたげたヤブカンゾウの蕾の下に、なにかがすがりついているのが目にとまった。それは小指ほどの大きさの、黒い土色の姿をして、僕が顔を近づけても近くに手をやってもピクリとも動かない。
朝5時
それはオニヤンマの幼虫だった。僕には彼だとすぐにわかった。だって顔がまるっきりトンボなんだもの。それにこれほどの大きさのヤゴは、お . . . 本文を読む
最初はね、ほんの一株だったんだ。葉っぱが10枚ほどついた一房と言ったらいいか。サンショウモはその葉っぱが山椒に似てるからサンショウモって言うんだけれど、それに例えると若枝の先の一塊。どんな小さな人の掌にだって隠れるくらいの、ちっぽけな株だった。あれは田植後ひと月ほど経った、真新しい夏の日だったね。
僕が隣りの谷地田で見つけたサンショウモ。それを一株拝借して自分の田に入れた。その見つけた田っ . . . 本文を読む