アグリコ日記

岩手の山里で自給自足的な暮らしをしています。

小女パウラ

2007-10-29 08:51:54 | 暮らし
 縦長のいかつい窓ガラスが薄陽を滲ませる。天井は高く、昼だというのに青黒く錆び付いたようでいて、視界を中空の靄の中に溶け込ませてしまっている。肉厚の堅い壁も、冷ややかな響きを奏でる床もたぶん石造りなのだろう。四方を居丈高に逼塞させられた部屋の中を、僕は歩き回っていた。部屋を出て、また次の部屋へ。ここはどこか。博物館だろうか。それにしては何かを陳列してるようにも見えない。折に触れすれ違う人々がいて、 . . . 本文を読む
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神が姿を見せる時

2007-10-25 08:38:41 | 思い
 幼い頃に絵本や児童書でザシキワラシの話を読んだ憶えがある。部屋の中で手を繋いで遊んでいるといつの間にか子どもの数が一人増えていたり、大きな家に一人ぼっちで留守番していると誰もいないはずの部屋から箒の音が聞こえてくる・・・それらの寸話はあの頃の日常の背景に直に結び付いていたものだから、子ども心になんとなくザシキワラシはきっといて、いつか自分の前にも姿を現すかもしれないという興味と怖さのない混じった . . . 本文を読む
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サトリの実在

2007-10-21 10:17:18 | 思い
 もしも私たちが今自分の居る場所とは違った時代や遠い風土に思いを馳せるならば、そこで精神の感覚野に捉えられる世界は、ほんの数度のずれかそれとも全く別の方角かの違いはあるにせよ、そこは私たちの持っている常識や一般観念がそのままでは通用しない、異次元性を有していることを頭の隅に留めておかなくてはならない。昔私がそのさわりに触れたのは海外での生活体験だったし、その概念をより強固ならしめたのは歴史時間の中 . . . 本文を読む
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「山人考」

2007-10-12 07:04:17 | 思い
 ふとしたきっかけで「山人考」という書き物があることを知った。柳田國男による日本の先住民族についての論考なそうだ。ちょうど私は「鬼」をテーマにした本を読み終えたばかりで、自分の中でそもそもの根源の時代、「鬼=人」ではなかったろうか、山を拠点として生きた人々。また鬼は原初魔物というよりも、かえって今に言う神に近いものではなかったろうかなどと徒然に考えていたところだったので、無性にその本が読みたくなっ . . . 本文を読む
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カワハギの食感

2007-10-03 09:08:04 | 思い出
 カワハギの顔を見たのは何年ぶりだろうか。無造作に重ねられた発泡トレイの中に、下唇をぐっと突き出した、あの思わず吹き出しちゃいそうな顔を見つけたのはある週末のスーパー、人でごったがえした魚売り場でだった。すかさす値札を見るに一尾198円。気持ちは即決した。僕の手は自動人形のようにそのパックを素早くかごに入れ、それに押し出されるかのように中に収まっていたホッケのパック(あまりに安かったので帰ったら猫 . . . 本文を読む
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