僕の生家は農家ではなかったけれど、商売柄店のお客には在の農家の人たちが多くて、鼻の頭を赤黒くしたおっちゃんらが客あしらい上手なおふくろを相手に、湯飲みを片手にまくしたてる無駄話を、テーブルやストーブごしに耳にすることがよくあった。それは山の鳥獣のことであったり、雪の積もり具合や天候のこと、鶏や牛の世話の話や、田や畑の今年の出来柄などについてだったりした。
その中のひとつに擬卵(ぎらん)の話があ . . . 本文を読む
もう随分昔のことなのでそのソースは何か忘れたのだけど、
肉鶏を・加工するのにいわゆる「チキン・キラー」なる機械があって、それを使うと大量の鶏を短時間のうちに「食肉」に変化させることができる。それが現代の鶏肉産業のあり方であるというようなことを聞いたことがあった。もちろんこのような方式があるからこそ誰もがあれだけ安く鶏肉を買えるのであり、それをわが家でのように一羽一羽押さえつけて鉈で首を落とし . . . 本文を読む
どうも雄鶏のとさかに不満の色が現れてるので少々・・・。
父親のチャボが不機嫌なんですよ。なんだ、昨日の記事にオレが映ってないじゃないか!親父の影がこんなにうすいなんてことに、我慢できるか!オレだってこの3週間じっと我慢してきたんだゾ!
・・どうも鶏の世界にも、インターネットが普及してるみたいで・・・
いや、こんなもんなんだよ人間界は・・・と言い訳しても収まりそうもありません。
そこで追加で少 . . . 本文を読む
日曜の夕方、小舎にピヨピヨしたもんだから、
こりゃあ、生まれたぞ!
と思ってた。
あくる日わくわくしながら覗いてみると、
案の定、産毛もあやなひよこが一羽
ちょこんと母さんの背中から顔のぞかせてる。
Fragile! ホントに赤ちゃんだね。ハゲてるみたいに見えるよおまえ!
生まれたてのいのちは神さまに近い。
弱っちいところに、だけれど無敵の強さをもっている。
やったな!おまえ!
やったな!母さ . . . 本文を読む
左手に持った大皿には鶏肉とカボチャ、それに熱い野菜汁がかけてある。この寒さでは外に出たとたんに汁は急速に冷めるのでスヌーピーが食べる頃にはちょうどいい温かさになっているはずだ。それと右手に鶏小屋の水鍋を溶かすための熱湯の入ったやかん。
犬に餌をやり終えてから今朝から気にかかっていたあの姿を捜した。
白一色としか形容の無い世界。その中で吹雪に晒され雪の貼り付いた鶏小屋の床下だけが黒い地面を剥き出しに . . . 本文を読む
ブシュッ・・
血しぶきが上がった。
羽をバタバタと煽る度に、首から赤黒い液体が勢いよく噴き出す。
頭は既に鉈で切り落とされていた。
断末魔、というのだろう。鶏が命を振り絞って羽を、足を猛烈に動かそうとする。
それを私は、両の手で力一杯地面に抑えつける。
ここで少しでも力を緩めれば、鶏は羽をばたつかせながら、走って行こうとするだろう。
生きようとする炎のようなエネルギーが、私の両手、両腕を伝わって、 . . . 本文を読む
いったい、何度言ったらわかるんだ!
いい加減、俺だって我慢にも限度があるよ。
昼間の暑さが嘘のように感じられる夕刻、太陽は西の木立の葉陰に隠れ、辺りにはにわかに秋を感じさせる風が吹いて来た。
私はその時、本当に怒っていた。こんなに聞き分けのない奴を相手にして、よく今までやって来たものだと、自分自身が情けなく、また悔しかった。
しかしそれも、今日限り。
私は長い月日のお互いの確執に、今まさに、決 . . . 本文を読む
夕方、仕事の現場から帰って来た時には、いつものごとく猫たちが玄関近くに顔を揃えて待っていた。
ちょうど餌の時間だから、みんなお気に入りの昼寝場所や外出先から帰って、玄関付近でとぐろを巻いている。
でも、今日はすぐには餌をやれない。悪いな、みんな。まずはミミズを掘ってから・・・。
今日は忙しくて、昼間ヒヨコたちにミミズをやれなかった。ヒヨコたちは生後1か月。まだとても鶏小屋の外には放せない。そこ . . . 本文を読む
今猫家には18羽の鶏がいる。
雌鶏2羽、若鶏5羽、生まれて1ヶ月のヒヨコ10羽、それが1羽の雄鶏の下で仲良く元気に育っている。
鶏の社会は典型的な1夫多妻と言われる。
自然卵養鶏をしている人の書いた本によると、1羽の雄鶏に対して20~25羽の雌鶏が適切な数なそうだ。私はまだそこまで鶏を増やしたことがないからなんとも言えないけれど、これから鶏が増えれば、彼らの世界ではどういう家族構成が適切なのかが次 . . . 本文を読む