田んぼの水口で、一匹のヤマアカガエルが卵塊を抱くようにしているのを見た。産み終えたばかりなのか。それとも卵を外敵から守ってでもいるのか。近づいてもじっとして逃げない。もしかしたら逃げる力がないくらいに弱っているのかもしれない。
自然界は過酷である。早春、雪が融けると同時に産み出された彼らの卵塊はぎっしりとかたまって、田のそこここに大きな島を形成した。大陸の創造を見ているようで壮大な感じがしたも . . . 本文を読む
見たことのない蝶だと思った。
その時私は薪を軒下に積み上げていた。ひらりひらりと紅色のりぼんが膝元をかすめる。このところ雨や曇りの日ばかりで二日と晴れ間が続かない。アブラナの咲き方もタラの芽の膨らみも、例年よりも幾分遅い。桜の蕾が固いままに、いつしか4月も末になっていた。そうか、世の中はもう連休だ。種蒔きからひと月も経つというのに、なかなか稲苗の成長は芳しくない。それやこれやはあるけれど、野の . . . 本文を読む