報道によると「原子力規制委員会が、国際原子力機関(IAEA)に福島原発の事故原因の報告書を1月中に提出するようだ。その内容はーー「津波が主因で全電源を喪失」となる見込みで、国会の事故調査報告書が指摘した地震による損傷の可能性を否定する記述になることも判明。、とのことだ。そしてこの報告書が「日本の公式見解」として活用される見込みだ。
事故原因の本格的調査は東電自身の他に、行政府、そして国会に置かれた検査機関で各々行われたが、国会のものが最も「核心を突いたもの」として、発表当時メディアから高く評価された。特に「事故は人災」というのが基本的な認識であり、相当踏み込んだ内容だった。とりわけ、事故は地震による原子炉施設の破壊の可能性を一部保留するものであった。
具体的には1号機の非常用復水器の破壊が地震によって持たされたのではないかという可能性だ。これによって、原子炉の水蒸気を冷やす事ができず爆発がおこったのではないかということだ。発表当時、反原メディアや学者がこの可能性に飛びついた。そして原子力施設自体が危険の設備であることが盛んに喧伝された。それによって「原発は地震災害には無力」であるという過度な決めつけが横行した。
しかし、今回の原子力規制委員会の報告はこれを完全に否定するものであり、非常用復水器の破壊は津波によるもので、全電源喪失も津波が主因であることが明らかになった。国会事故調の核心部分が否定されたわけであり、結局は世間をミスリードしたことによる。
当時は、国会事故調査委員会の専門チームは、まるで原子力ムラの馴れ合い・もたれ合い体質に鋭くメスを入れる冷徹な調査チームとして、世間の喝采を浴びた。どこか社会悪を糾すヒーローのように。しかし、結果的には彼らの「勇み足」であって、この調査チームに大きな汚点を残した。
地震による原子炉の破壊ではなく、津波による全電源喪失ならば、その対策は極めて限定的になり防護対策も容易でありコストも少ない。だから、今後の国内の原発再稼働において、その対策の力点にも大きく影響する。あるいは現在進められている同じ地震国トルコへの原発輸出でその事故防御にも様相が違ってくる。
ラジオでも評論家の青山繁晴氏がこの問題に触れていた。特に日本のマスコミの取りあげ方の不公平についてだ。国会事故調が1年半前に報告を発表した時はマスコミがどこも飛びついて騒然としていたのに、現在は全くといってよいほどこの事実を報道しない、と嘆いていた。国家事故調のメンバーたちは今回の報告をどう見ているのだろうか。
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