粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

震災の日が近づくと繰り返される福島ネガティブ報道

2016-03-07 17:10:28 | 反原発反日メディア

またあの3月11日が今週やってくる。この時期になると例によってこれでもかと思われるほどに原発事故報道が過激になってくる。昨日日曜日でも自分がたまたま見た二つのテレビ番組で「福島の放射能汚染」について執拗と思えるほどに報じていた。

ひとつはあの「嫌いな番組1位に輝くTBSのサンデーモーニングだ。事故で避難したが、再び父親が故郷へ戻り仕事を続けているものの、家族はいわき市に避難したままの状態だった。その家族も故郷に戻るという話。サンモニにしては「珍しい方向性」だと思いきや「こうした事例は少なくて帰還を望まない家族が圧倒的」だという結論だ。

また除染は進んでいるとはいうものの、森林の除染は手つかずの状態だが、これは政府の方針とされる。しかし、地元の森林業者を出演させて政府の政策を批判させる。森林の徹底的な除染が困難で多額の費用と時間を要することを考えると一概には政府を批判できないデリケートな問題であるのだが、番組にはそこまで突っ込むバランス感覚に乏しい。

そして、福島県内に多数存在する除染物を一時的に保管する仮置き場、ここから中間貯蔵施設に除染物を回収して処分するのだが、施設建設が一向に進まない。まだ用地買収が1%程度だという。そんな厳しい現状を現地取材の女性キャスターに延々と語らせる。震災の日を目前にしてまさにサンモニらしい「遠い福島復興」を印象づける内容だ。

もうひとつは夜9時のNHKスペシャルだ。タイトルが「被曝の森」なんてストレートすぎる。避難地域から人間がいなくなって野生動物が我がもの側で地域を徘徊する。特にイノシシが多数人家に入り込んで好き放題に食い荒らす。人間という強敵から解放されてまさに動物天国だ。

しかし、これは放射能被曝の影響とはいえない。逆に影響がないことによって動物の生態が活発になった証拠にもなる。事実、番組の指摘通り被ばくによる生物の奇形は発生していないのだ。

ただ、この番組はどうにかして被曝の影響に持ち込もうという執念が見られる。たとえば森林に生息するアカネズミ。体内に高い放射性物我検出されているが、細胞の染色体に異常が見つかった。番組を見て一瞬ドキッとしたが、その後の解説ではこうした異常は被曝地でない場所でも見られ、むしろ福島のネズミは発生率が低いという竜頭蛇尾の結論だ。

あるいはチェルノブイリでは尾羽の長さが違うツバメが異常に増えたが、福島でもそんなツバメが観測されたという。しかし、福島の場合は被曝の影響と関連づけられるる頻度ではないという、これまたしまらない話だ。

そして、これもどうも眉唾モノに思えたのがニホンザルの「白血病疑惑」だ。世界各地の被曝地域でもニホンザルのような人間に近い霊長類が生息しているのはこの福島ぐらいだという。したがって番組ではこのニホンザルの被曝を調べることは、同じ霊長類である人間の被曝を知る上で貴重なデータになるとしている

そこで番組が注目したのは大量に被曝したニホンザルと白血病との因果関係だ。テレビにニホンザルの白血球を作る細胞数とその被曝度を示したグラフ(下記のグラフ)が映し出されていた。被曝が高いニホンザルほど細胞の個数が少ない…。しかしサンプル数が9個と少なすぎる。しかもそれぞれのサンプルを見ると必ずしも被曝の高さと白血球をつくる細胞の少なさがきれいに比例していない。しかし、番組では強引と思えるほどに直線を引いて因果関係があるような印象操作をしている。

さらに、番組の結論として、これらの事例の真相はェルノブイリの30年後のように、被曝の直近ではなく長期のスパンで影響を見なくてはいけないと「警告」をしている。しかし、自分には「苦しい言い訳」にしか思えない。長期といえばチェルノブイリ以上に長い研究データとして広島長崎の被爆がある。そこで導きだされた数少ない結論は「100ミリシーベルト以下の被爆(被爆)では、他の原因に隠れてしまうほど影響は小さい」ことだ。

しかし、この現実を忘れたかのようにNHKはどうにかして被曝による人体の影響を結びつけようと必死になっているようにさえみえる。これは、とりもなおさず、原発危ない、福島危ない、というネガティブキャンペーンだと思われる。だから、サンモニとNHKスペシャルともにその意図するところに大差ない。

確かに震災の日を迎えて、実際の現状を直視すべきである。しかし、こんな憂鬱ともいえる「振り返り」はいかがなものだろう。よくメディアは「3.11を風化させてはいけない」という。しかし、こんな意図的な「振り返り」は決して健全とはいえない。


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