粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

集団疎開訴訟と風評被害

2013-03-10 15:57:14 | 福島への思い

 1. 福島の小児甲状腺潜在がんの頻度はすでに事故から 数年後のチェルノブイリを上回っている可能性が強い。 

2. 福島の子どもたちにこれ以上放射線被ばくをさせない ために、速やかに移住・疎開対策を進めるべきである。 

3. 納得のいく甲状腺の検診(施設配置・精度・検診間隔・ 説明などに関し)を受けられるよう体制を整えるべきで ある。

これは、福島集団疎開訴訟で、原告側が疎開の根拠と要望としているものだ。しかし、最近環境省で、この根拠を覆す結果が発表された。福島県外の3都市、弘前市、甲府市、長崎市で18歳以下の子供4365人に甲状腺の健康調査を行ったところ、福島の結果とほぼ同じのような傾向が見られたのだ。したがって、原発事故由来では福島県で子供の甲状腺がんは増えていることは考えにくいとしている。

環境省の発表が正しいとすれば、集団疎開を訴える原告の主張は妥当性を欠くことになる。しかも、実際の検査での数値というところが重みは大きい。もちろん、これだけでまだ事故の影響を論ずるわけにはいかないが、福島の危険を訴える具体的材料は乏しいといえる。

この裁判は、仙台の抗告審で審議しており、今月中にもその決定が下りるという。地裁で却下されたが、高裁でも同様の判断がされる可能性が高そうだ。裁判は、郡山市内の14人の子供が年間被曝1ミリシーベルトを超える環境は非教育的として集団疎開を訴えたものだ。もちろん子供は、象徴的な存在でしかない。しかし、子供の放射能健康被害+集団疎開といったイメージはインパクトが強く、「福島の悲劇」を象徴するものになっている。「ボクは絶対転校しない、でも福島にはいたくない」といったフレーズも衝撃的だ。

ただ、これはあくまでも福島県内の少数に過ぎない。賛同者はいるものの福島の留まることをよしとする人が圧倒的に多いのも確かである。つい最近町長を解任されて、理由も有耶無耶なうちに再出馬を断念した井戸川前双葉町長が支援者であることもこの裁判を象徴している。当初訴訟に加わった子供にも何人か辞退者が出ている。おそらく、高裁の決定も原告には不利なものになると予想される。そうなると国の三権のひとつである司法が集団疎開を否定する意義は大きい。

事故から2年にもなって依然として福島のイメージを傷つける学者、ジャーナリスト、メディアが存在する。一部芸能人や文化人といった著名人までが、図に乗ってしたり顔に福島を中傷するのを見ると不愉快になる。風評被害はいまだ収まらない。ただ消費者は先入観やイメージで商品を買うので、購買心理まで強制はできない。しかし、商品イメージを意図的にあるいは無意識に損なう行為、吹聴、デマは罪深いと思う。当然こうした著名人の加害行為は、決して許されない。

しかし、それ以上に集団疎開訴訟という国家の方針にも影響を与えかねない行為は重大だと思う。福島が住めないほど汚染されているということを公の機関が認知することもありえるからだ。こうした裁判が認められるとその風評被害は甚大なものになるし、もはや風評被害だけでは片付けられない事態にもなりうる。万が一にも裁判があらぬ方向に進まないことを願うばかりである。


追記:先月WHO(世界保健機関)でも、福島県内の放射線被曝の影響でがん患者が増える可能性は極めて低いという報告がされている。実際吸引や食事による内部被曝は、年間0.1ミリシーベルト以下であり相当低い。

外部被曝についても、強制避難の地域を除けば年間3~4ミリシーベルト以下であり、日常生活では実際ずっと低い。世界的にもこのレベルの地域が多数存在する。福島県内での健康被害は、本当に避難すべきレベルかはなはだ疑問である。

また子供たちが訴訟を起こした郡山市は、旧警戒区域等から多くの子供たちが避難していて、ここから集団疎開を呼びかけることは、市民レベルで相当違和感があるのではないか。

(なお当初、「一部芸能人やスポーツ選手」と書いたが、「一部芸能人や文化人」と訂正します。失礼しました。)


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