福島の原発事故以来、住民の外部被曝を調べる目安として各地域の空間線量が基準にされる。ただ、これは特定地点の野外の線量を示すものであって、実際そこで生活する住民の日常的な被曝とは相当差異があるとみられる。多くの人は野外にいる時間より線量が遥かに低い室内に長くいるからだ。
特に福島県内では他県と違い、野外の線量が高いのだが、実際県民が外部被曝する線量はどの程度なのかは肝心である。その疑問に一つの答えとなる資料をネットで見つけることができた。
「酋長仮免厨」という人が、経済産業省が今年3月に発表した「年間20ミリシーベルトの基準について」という資料を紹介している。この資料は福島とチェルノブイリの事故を様々なデータを駆使して比較したものだ。結論からいえば、「東電福島第一原発事故は、チェルノブイリ原発事故に比べ、 セシウム137の放出量が約1/6、汚染面積が約6%、 放出距離が約1/10の規模」に過ぎず、政府が事故直後に決めた20ミリシーベルトの被曝限度基準や食品日暫定基準も、チェルノブイリと比較してもかなり厳しく、日本政府の対応は妥当なものだったということだ。
資料はいろいろ興味深いデータを提供しており、今後も自分のブログでも取りあげたいと考えている。今回は冒頭であげた課題について見てみたい。福島県内の空間線量と日常生活での被爆線量に関してだが、経産省の資料では12ページ目に具体的なグラフが出ている。
二本松市、福島市、伊達市、郡山市での住民の年間被曝実測値と推定値である。注にある通り、実測値は市町村から各個人に配布されたされた線量計を12ヶ月分計測した年間被曝量であり、測定者を被曝線量の度合いで分類したものだ。推定値は福島県が固定点で計測している空間累計線量’(測定者と同期間)と考えてよいだろう。
たとえば、福島市では推定値が4.68ミリシーベルトとなっている。しかし実測値は0.4~2.0ミリシーベルト未満がおよそ8割で圧倒的に多い。多い人でも2,0~4.0未満が1割程度だ。推定値4.68ミリということは1時間の平均が0.53マイクロシーベルトであり、8割の実測値0.4~2.0ミリの中間1.2ミリでは毎時0.13マイクロシーベルトということになる。そうすると福島市での日常生活はさほど気にする必要がないことがわかる。
さらに推定値の4.68ミリも世界の外部被曝と比較したら、そんなに問題すべき数値でもない、資料の15ページを見ると、極端な話、年間10ミリ以上というところが多数存在し、ハンガリーでは福島の推定値に近い3ミリ~5ミリの被曝をする地域の住民が269万人26%に及んでいるのだ。福島の推定値は世界の「日常」と考えてよいのではないか。
もちろん世界の高い線量の地域がその影響を受けてガンなどの病気が多発しているという話を聞いたことはない。したがって資料の5ページ、米国科学アカデミー「放射線生物学的影響 7次レポート」(2012年)の報告が控え目にみても妥当だと思われる。
「それを下回るとガンを誘発しないというしきい値が存在するとは考えない が、低線量被ばくによる発ガンリスクはあったとしても、小さいだろうと 考えている。」
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