最近の日本政府閣僚らの靖国参拝が中国と韓国から強い反発を受けている。国内の一部メディアには無宗教の国立追悼施設をつくるべきだという意見もある。あるいは、過去の日本の侵略行為や植民地支配に反省を表明した村山談話を遵守すべきだという左翼陣営の声も根強い。しかし、こうした中韓の立場に配慮した態度を日本が取り続ければ、両国とは友好関係を維持できるだろうか。はなはだ疑問に思う。
そもそも、双方の政府は、第二次大戦での日本の敗北によって成立した国家である。特に中国は対日戦争に勝利した中国共産党人民軍が今も中国軍の基礎となっている。韓国は、日本から独立を得て今日の繁栄を築き、民族の誇りを保持しようとつとめている。
つまり両国とも、今日の国家のアイデンティティとして、日本という存在が特別に意識されている。ただその意識は、共に強烈な「反日教育」という形で具体化している。それによって国民の民族主義を高め、国論をまとめようとする。
だから、日本は中国と韓国にとっては国民団結の手段にされてしまう宿命を背負らされているのだ。厄介なのは両国とも日本とは領土での問題を抱えている。これは外交交渉で簡単には解決できない。半永久的に続くかもしれない。中国とは、地勢的な軍事バランスでは宿命的な対立関係は避けられない。さらにも経済的にも韓国や中国とは、他国への経済進出ではライバル関係が厳しくなる事は予想される。
したがって、両国との対立は簡単には解消できない。そんな時に、この対立の中で自国の立場を有利に進める手段が、戦後体制で勝ち得た日本への優越意識だ。過去の日本は悪い事をした。侵略をした。自国民をいじめた。でも我々は日本の支配を勝ち取った。
日本と両国が問題が起こる度に、日本に対して過去の批判やその後の優位性が語られるだろう。それも、国民の不満を隠す手段として。日本はそんな手強い二つの隣国を宿命的に抱えている。こちらが、充分に友好的態度を示せば事足りるという単純なものではないということは肝に銘じるべきだろう。