こんなグループがあることを最近知った。植村隆元朝日新聞記者が北海道の北星学園大学で非常勤講師を務めていたが、彼の過去の記事を巡って教育者としては問題があると大学側に退職を求める脅迫が相次いでいた。この騒ぎを受けて一時は大学側が植村元記者に対して来年の採用を見送ったものの、こうしたグループの支援もあって継続することを決めたようだ。
「負けるな北星!の会」はそれぞれ約40名の呼びかけ人と賛同者で構成されている。呼びかけ人の一人、海渡雄一弁護士は「「言論を暴力で封じ込めるのはテロリズム。テロが放置されないよう市民も結束して『許さない』というメッセージを社会に送るべきだ」と主張している。
その主張は至極当然とは思うが、朝日新聞がこのグループの動きを大々的に報じているのが特徴的だ。朝日新聞はご丁寧に呼びかけ人のメンバーを全て列挙している。このメンバーを見て「やっぱり」と思ってしまった。およそ左翼論壇を代表する人々たちばかりだ。
池澤夏樹、内田樹、香山リカ、姜尚中、小森陽一、中島岳史、森村誠一、和田春樹…。お馴染みの顔ぶれが並ぶ。たとえば池澤夏樹、この作家、過去に「桃太郎は侵略戦争の思想の権化、動物の家来は黍団子という怪しげな給料で雇われた傭兵」といった極論を言い放った人物である。これが高校の国語の教科書に採用されいるのもおかしな話だが。
あるいは香山リカ、この精神科医も「原発維持・推進をしようとする人は心の病気」と発言している。この主張からいえば、原発の将来性を評価する石原慎太郎氏などは心が病み精神的治療が必要になる。これには石原氏は「黙れ!」と一言喝を入れるだけで相手にはしないかもしれない。
また賛同人には上田文雄札幌市長や野中広務元自民党幹事長など40人が名を連ねている。上田市長といえば震災で発生したがれきの広域処理で「放射性物質は拡散させない」とし最初から被災地のがれきを危険物扱いしたのも記憶に新しい。一方野中元幹事長は、今年民放の番組で発言した内容が忘れられない。「戦時中、朝鮮の女工さんが軍に連行されて従軍慰安婦慰安婦にされた」といはっきり語っていた。朝日新聞が吉田証言の誤りを認めた少し前であった。
呼びかけ人も賛同人も朝日が社是としている戦後レジームの死守や反原発を諸手を上げて支持している人ばかりである。これらのメンバーは結局北星学園大学を支援するとともに、この元朝日新聞記者そして朝日新聞をも擁護しようとしているのである。
つまり、8月の朝日新聞による吉田証言取り消しで日本軍による強制連行が虚偽であることを認めて以来、過去の捏造報道に保守メディアを中心に世間の朝日への批判が高まっている。もちろん、過去に捏造記事といわれても仕方がない記事を書いた植村元記者にも非難が集中しているのも当然の帰結だ。この窮地を救う目的もこのグループにあると思える。
ところでこの「負けるな!植村」じゃなく「負けるな朝日!」でもない「負けるな北星!」のフェイスブック」を覗いていみると「北星学園大学が非常勤講師の雇用継続を決定したことについて」の声明が掲載されている。そこには「思想・言論の自由」や「大学の自治」「人権が守られる民主社会」といった憲法での基本的人権の精神が高らかに唱われている。しかし、どこを探しても「慰安婦問題」の「い」の字も出てこない。同様に朝日新聞で報じている呼びかけ人の言葉の中にも全く登場しない。
本日出された朝日新聞の慰安婦報道を巡る検証で第三者委員会が報告書を出している。8月の特集記事を「自己弁護の姿勢が目立ち、謙虚な反省の態度も示されなかった」とその姿勢を厳しく批判している。またこうした朝日の報道による「国際的影響も否定できない」としている、
植村元記者の報道もその例外ではない。彼は韓国で名乗り出た元慰安婦を「女子挺身隊の名の下に戦場に連行された」と書いているが、その女性は全くそんな証言はしていない。これは誤報というよりは捏造の近いものであり、植村元記者はこの疑惑に全く応えず、他のメディアの取材に逃げまくっている。
植村元記者の慰安婦報道が日本の名誉を国際的に毀損しているのにこの負けるな北星!の会」はそんな現状に全く目をつぶっている。しがって「表現の自由」や「学園の自治」がどここ看板倒れの観がしてくる。呼びかけ人や賛同者たちは一度でも元記者や朝日の慰安婦報道について見解をはっきり述べるべきでないか。それがなければ単なる朝日新聞互助会にしかならない。