扇子と手拭い

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エンジン全開で奮闘(落語2―80)

2012-01-20 00:09:56 | 日記
▼モデルは志ん朝師匠
 私たち文七迷人会のホームグランドである東京・浅草雷門近くの「茶や あさくさ文七」で19日、落語会を開いた。「第6回文七迷人会」。年が改まって初の会だけに、出演者一同、普段に増してボルテージを上げ、高座を務めた。(敬称略)

 「初春の高座に」、と晴れ着をバッグに詰めて持参した。本職の噺家が行きつけだという浅草の呉服屋で、昨年末に購入した黒の着物である。「宿屋の富」を演じている古今亭志ん朝が身に着けている衣装がモデル。胸からわずかに水色の襦袢がのぞく。このコントラストが何とも粋だ。

▼ぼて助のご贔屓筋
 新春には目出度い噺をと、「宿屋の富」をかけることにしたので師匠にあやかった。だが、襦袢はグレーの色しか持ち合わせていない。黒にグレーではいかにも野暮ったい。襦袢も師匠を見習おうと浅草の店を物色。5、6件目にやっと、目当ての水色の襦袢に出くわせた。

 午後5時30分の開場前に、早くも10人ばかりの客が席を占めていた。この日のトリを取るぼて助のご贔屓筋である。練馬から駆けつけてくれた、という。前回に続き、彼がこの会を支えてくれている。あたしの客が7人。木製が6人、ローリー2人、木凛1人。

▼余裕が蘇った木製
 みんな、この数字の何倍もの友人、知人、愛人に声掛けしているが、仕事があったり、急用が出来たりで、なかなか予定通りにことが運ばない。落語会は演者だけでなく、観客と一体になって形作るものである。そんな思いから、みんなで声を掛け合っている。

 開口一番は文七迷人会、お初の登場の木製。楽屋で「最初の登壇は初めてなので、(マクラで)何をはなそうか」と緊張気味。「ネタがない場合は、自己紹介をしてはどうか」とあたし。その上で、「自分のシクジリを話す。失敗談は笑いを誘う。これでやったらどうか」、と言うと、彼の表情に余裕が蘇った。

▼もっと磨いて持ちネタに
 2番手はローリーだが、仕事の都合で間に合わない。あたしが繰り上げで高座に上がった。「宿屋の富」。今回は特に、「間」を意識して演じた。高座を降りると席亭から「今日の落語はよかった。このネタを、もっと磨いて持ちネタにするように」とアドバイスをいただいた。

 次いで木凛が「親子酒」でご機嫌をうかがった。ドキドキものと言っていたが、なかなかどうして、この日も聴かせる落語をやってのけた。お仲入りをはさんで到着したばかりのローリーが登壇。「はあはあ、言ってます」と冗談を飛ばして、客を引き込み、オハコの「初天神」を見事に演じてみせた。

▼応援団から掛け声が
 トリはぼて助。いつもの謙遜で始まり、「うどん屋」をかけた途端、「いよ、待ってました」「ぼて助頑張れ」と応援団から掛け声が飛んだ。文七迷人会の落語会としては、少し客の入りが少なかったが、客席は陽気な笑い声であふれていた。

競り落としてくれた落語(落語2―79)

2012-01-13 08:48:48 | 日記
▼友人から届いた落語
 宅急便で三代目・三遊亭金馬のCDが届いた。「居酒屋」など3席が収録されていた。早めに目が覚めたので、けさ、さっそくパソコンを作動して聴いた。うまい。落語には「笑わせる落語」と「聴かせる落語」があるが、金馬落語は、じっくり「聴かせる落語」の代表格だ。(敬称略)

 このCDは埼玉・熊谷に住む友人からのプレゼント。彼は、私が落語を習い始めた直後、昭和の名人を集めたCD「古典落語名人全集」を贈ってくれた。当初は15編すべて揃っていなかったが、その後、欠番を探し出して補充してくれた。

▼そろった全15編
 ただ1枚、欠落していたのが昨日、届いたNo9の三代目・三遊亭金馬。Yahooオークションで競り落としてくれたそうだ。収録は、いずれも今は亡き昭和の名人が音源だけに有難い。

 全15編の演目は以下の通り。
No1、五代目・古今亭志ん生(一)「火焔太鼓」「強情灸」「妾馬」
No2、五代目・古今亭志ん生(二)「抜け雀」「替り目」「お直し」
No3、五代目・古今亭志ん生(三)「品川心中」「鮑のし」「付き馬」
No4、八代目・桂文楽(一)「素人鰻」「明烏」
No5、八代目・桂文楽(二)「寝床」「船徳」
No6、六代目・三遊亭圓生(一)「お神酒徳利」「鰍沢」
No7、六代目・三遊亭圓生(二)「一人酒盛り」「浮世床」「猫定」
No8、三代目・桂三木助「三井の大黒」「芝浜」
No9、三代目・三遊亭金馬「居酒屋」「唐茄子屋政談」「茶の湯」
No10、八代目・三笑亭可楽「うどんや」「二番煎じ」「らくだ」
No11、三代目・春風亭柳好、初代・春風亭柳枝
    「野ざらし」「二十四考」「高砂や」「子ほめ」
No12、九代目・桂文治「口入れ屋」「今戸焼」「好きと恐い」
No13、八代目・林家正蔵改め彦六「文七元結」「中村仲蔵」
No14、六代目・春風亭柳橋、初代・柳家金語櫻、
    五代目・古今亭今輔「基どろ」「落語家の兵隊」「ラーメン屋」
No15、五代目・柳家小さん「長屋の花見」「狸賽」「親子酒」

▼初心者は笑わせる落語
 ところで、今回届いた金馬の落語は私も好きで、「蔵前駕籠」を懸命になって稽古したことがある。駕籠に乗って吉原に向かう遊び人と、駕籠かきの会話が面白くて挑戦したが、結果は散々。どこでかけても客席の反応は芳しくなかった。

 金馬落語は、「聴かせる落語」だから、落語好きにはたまらない。ところが、落語を初めて聴く者にはやはり、くすぐりの多い「笑わせる落語」の方がいいようだ。噺家がマクラでその日の客の反応を見て、演目を決めるという意味を改めてかみしめた。自分の好きな落語家や演目だからといって、高座にかけるのは考えものである。

▼いつの日か「文七元結」を
 そうはいっても、古典落語の、あの粋な世界、人情、洒落たやり取り、ユーモアが好きで落語の門をたたいたのだから、好きなネタはこれからも追いかけたいと思っている。いつの日か、目標とする古今亭志ん朝の「文七元結」を高座にかけたい。その前に、当面は、誰でも笑える落語「まんじゅう怖い」を習得する予定。

 わが友に改めて、感謝。

ネタ抜きの握り寿司(落語2―78)

2012-01-10 00:16:44 | 日記
▼ラジオで談志やってる
 NHKの「ニュースウオッチ9」を見ていたら、「ラジオで談志をやっているよ」と友人から電話。急いでパソコンのテレビを、ネット・ラジオに切り替えた。9日夜、「新・話の泉スペシャル - 家元の思い出編」の声が流れた。(敬称略)

 「新・話の泉」は、家元である談志を中心に、愉快な仲間の毒蝮三太夫、ミッキー・カーチス、山藤章二、松尾貴史、嵐山光三郎のレギュラーによる軽妙洒脱なトーク番組で、以前何度か聞いたことがある。司会はNHKアナウンサー、渡邊あゆみ。

▼シャリだけの寿司
 最初のところは聞き逃したが、談志の思い出を語る会とあって次々、愉快なエピソードが飛び出した。ある時、弟子を連れて寿司屋に行った談志が、「こいつは修行中だからネタ抜きにして」と注文。トロを食ってる師匠の横で、弟子の前に握りが10個並んだ。弟子はシャリだけの寿司をうまそうに食べなくてはならない。全部食べ終わったところで、師匠が「どれが一番美味かった?」

 立川キウイは前座を16年間務めたツワモノ。前座修業はふつう2、3年だから最長不倒の記録保持者だ。そのキウイに談志が言った。「真打にしてやるが、一つだけ条件がある。お前、人前で落語だけはやるなよ」。

▼ホール落語の始まり
 ミッキーは平尾昌晃、山下敬二郎とともにロカビリーのトップスターだった。熱狂したファンがうるさくて、歌どころの騒ぎではなかった。やめて帰ろうとしたところ、渡辺美佐から「手品でも何でもいいからやっていい」と言われ、ステージに座布団を敷き落語を披露した。

 「落語といっても小噺程度だが、話し始めたら場内が水を打ったように静まり返り、終わった瞬間、ドッと来た」とミッキー。この様子を談志が知ったようで後日、「ホールでも落語がやれる」と落語会を始めた、という。談志は落語協会から脱退、立川流として独立したため、寄席から締め出された。「これがホール落語の始まり」とミッキーは語る。

▼ノーベル賞が欲しい
 オウム真理教が日本中を震撼させたころ、松尾貴史に電話で「7月は気を付けろよ」と談志。松尾が「何かヤバイのですか」と聞いたところ、「よく言うだろ。ドクガツ(毒ガス?6月)、7月、8月・・・」。

 談志は元首相の佐藤栄作夫妻に随分、可愛がられていたそうだ。佐藤が死んだ時、毒蝮とお悔みに行った。寛子夫人が「欲しいものがあれば、何でも言いなさい」と声をかけた。談志は、飾ってあったノーベル賞のメダルを指さして「あれが欲しい」。さすがの毒蝮もあっけにとられた、という。

▼引き出物はラーメン1袋
 毒蝮の結婚式。カネがないので1人1500円の会費制。引き出物まで余裕がなかった。司会の談志(当時は柳家小ゑん)は、入り口で列席者に人の名前が入った封筒を配った。くじ引き。お開き近くにみんなで封を切った。力道山の名前が出た人にはインスタントラーメン1袋。すかさず談志が「のびたらおしまい」。広岡達朗を当てた人には宝くじの券1枚。「当らない割に人気がある」と談志。

 どんなことをしたら喜んでもらえるか、オレの結婚式の前から談志はいろいろ考えてくれていたんだ、と毒蝮。「あの時、只者じゃあないと、思った。本当にうれしかった」。引き出物はラーメン1袋だったが、みんな喜んで帰って行ったそうだ。


編注
渡辺美佐→渡辺プロダクションの副社長
力道山→日本プロレス最強の人気レスラー
広岡達朗→プロ野球巨人の人気スター

新年早々、初笑い(落語2―77)

2012-01-08 18:42:51 | 日記
▼新年初の落語会
 3連休の中日の8日、新年初の落語会に行った。公演中に酔っぱらいが半畳を入れるといけないので、振る舞い酒は出ない。代わりにコーヒーにクッキー、緑茶に煎餅の無料サービスがあった。最後は、出演者の色紙などが当たる抽選会もあり、楽しい初笑いだった。(敬称略)

 正月は元旦から10日まで浅草や新宿、上野などの定席は「初席」といって噺家が多数出演する。1人の持ち時間はせいぜい3-5分程度。立て込んでくると1分という時もある。こうなると落語どころか、小噺もままならず、高座で顔を覗かせるのが精いっぱい。それでいて、木戸銭は正月料金とあって普段より高い。

▼目出度い噺が2席
 それに比べ、わが街の落語会は木戸銭1300円と格安。これでタップリ2時間、プロの噺が聴けるのだからたまらない。毎月1回、人気落語家を招いて開催している。2月は桂平治師匠がやってくる。お伴は、若い女性のアイドルで、今売出し中の二つ目、春風亭昇々。

 今回は隅田川馬石。知らない方もいると思うが、師匠は古典落語の第一人者である五街道雲助(2009年、文化庁芸術祭優秀賞)。この日、馬石は「正月らしく目出度い噺を」と語りかけ、「八五郎出世」を高座にかけた。この噺は師匠雲助の得意ネタで、私も一度、ナマで聴いたことがある。

▼「八五郎出世」を披露
 「八五郎出世」は、ガサツな八五郎の妹、お鶴に殿様が一目ぼれ。側室となったお鶴がお世継ぎを産む。招かれてお城に参内した八五郎が、殿様と愉快なやり取りを繰り広げる。噺の後半でホロッとさせる古典落語。

 「妾馬」ともいうが、いまは「妾」(めかけ)という言葉自体、あまり使われなくなったので、「八五郎出世」が一般的。馬石はもう1席、犬が人間に目出度く化ける噺「元犬」を披露した。他に前座の柳亭市也が高座に上がった。

思いがけないお年玉(落語2―76)

2012-01-06 01:12:15 | 日記
▼思いがけない“年玉”
 年が明けた1月3日夜、思いがけない“年玉”を頂戴した。NHKが3時間にわたって放映した特番である。昭和の話芸の達人が、タップリと名人芸を聴かせてくれた。ゲスト出演した噺家が、師匠との秘話を披露するなど、実に内容の濃い番組だった。(敬称略)

 特番は「日本の話芸20周年スペシャル~至芸名演の軌跡~」。NHK Eテレが番組の「日本の話芸」から、過去の名演を再放送。五代目柳家小さんが「長屋の花見」を、十代目桂文治が「浮世床」を、そして五代目三遊亭圓楽が「浜野矩隨」を披露した。他に2席。

▼ホントはウソに演じる
 映像は演じている噺家の、顔の表情までよく分かる。改めて見ると、小さんは派手な仕草がほとんどない。カミシモも、わずかに顔を左右に動かすだけ。語り口は、例のごとく、ゆったりとしている。それでいて気が付けば、聴く者を小さんの世界に引き込んでいる。

 「落語は端正に」と師匠の小さんから教わった、と弟子のさん喬。落語は言葉の無駄を省く。削って、削って、言葉の無駄をそぎ落とす。そうすることで聴く側に想像してもらう。文章と違い、あまりリアルにやり過ぎると品がなくなる、とアドバイス。「ウソはホントに、ホントはウソに演じる」は、小さんの助言。想像芸の真骨頂。

▼職人と商人言葉を演じ分け
 十代目桂文治を語ったのは、私の師匠である桂平治。十代目はご存じチャキチャキの江戸っ子で、東京弁でなく、江戸弁にこだわった。高座でも、職人言葉と商人言葉を演じ分けたというから驚きだ。客に対しても「有難うございました」とは言わず、必ず「有難う存じます」、と十代目は言った。「ございました」では、そこで縁が切れる、というのである。

 「落語は現実を忘れさせるもの、一時の清涼剤。だから師匠は面白い噺しかやらなかった」と平治師匠。言われてみると、十代目の得意なネタには「掛取り」「源平盛衰記」「道具屋」「親子酒」「火焔太鼓」「蛙茶番」「長短」といった滑稽噺が多い。

▼風景が目に浮かぶ名人芸
 五代目圓楽の人情噺「浜野矩隨」は、何度聴いても心に響く。上方落語からは五代目桂文枝が「宿屋仇」を熱演した。泊り客の様子が目に浮かぶ。桂三枝の師匠だが、この人も文句なしの名人だ。ほかに六代目小金井芦州が、赤穂の講談「義士銘々伝から 三村の薪割り」を語った。はじめて聴いたが見事な話芸に降参した。

 平治師匠から直筆の年賀状をいただいた。師匠は今年9月、十一代目桂文治を襲名する。待ち遠しい限りである。