扇子と手拭い

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落語ネタの愉快な裏話

2014-03-17 18:37:23 | 日記
▼銀行強盗みたいで
 赤鳥寄席はいつもながら勉強になる。桂文治師匠が一席終わるごとに落語の解説をしてくれる。われわれ社会人落語家には、これがありがたい。だから、どんなに寒くても、花粉が「非常に多い」と花粉情報が警告しても、メガネをかけ、マスクをして、フード付きのコートを着込んで聴きに行く。これじゃあ銀行強盗みたいだが、花粉症なので仕方がない。

 東京・目白の日本庭園にある数寄屋造りの茶室が赤鳥庵だ。数カ月に一度、ここで開く文治師匠の落語会が赤鳥寄席である。客のほとんどが常連。追っかけさんも多い。だから師匠も気楽に話してくれる。

▼日に一度は世話になる
 16日は前座と二つ目が一席ずつ。文治師匠が「肥がめ」と「親子酒」を披露した。これらの噺は、出演者の多い寄席では15分しかやれないが、今日は20-25分とタップリ聴かせてくれた。

 「肥がめ」は、日ごろ世話になっている兄貴分の新築祝いに何か持っていこうと思った弟分の2人。だが、肝心なお宝がない。2人合わせて50銭。「これで買える物」と聞くと、古道具屋が指差したのが大きな瓶(かめ)。「どうして安いの」の問い掛けに、店主は「誰でも、日に一度は世話になるものだ」。

▼臭い噺を、臭くなく
 「この臭い噺を、臭くなくやるのが落語だ」、と文治師匠。30分近い噺の中に「肥がめ」という言葉は出てこない。それでいて、祝いに持参した瓶が「肥がめ」と分からせるのが落語の技、面白いところである。

 この噺は、「見るからに臭そうな噺家がやると、汚く聞こえる。汚くならないようにやる(演じる)のは大変だ」と師匠。パンフレットやチラシに「肥がめ」と書くと、連想したり、オチが分かってしまうので、「家見舞」、あるいは「祝いの瓶(かめ)」とも言う。

▼親子で禁酒を誓う
 「親子酒」は一般にもよく知られた噺。酒好きの商人(あきんど)親子が禁酒を誓う。が、「一杯ぐらいなら息子にゃあ分かりゃしない」と女房に酒を注がせる。一杯が二杯、三杯と重ねるうちにオヤジが酔っぱらう。

 そこへ酔って帰って来たセガレに、「何だ、オマエは。顔が7つも、8つもあるような化け物に、家の身代は継がせない」とオヤジ。セガレも負けずに「こんな、グルグル回るような家はいらねえ」。

▼酔う様を仕草と口調で
 一杯目と二杯目、三杯目と、酒がすすむにつれて話す口調、飲み方、酔いが回る様子が変化する。脇に、苦虫をかみつぶしたような女房。「まだ飲むのかい? いい加減におしよ」と小言を言っているようだ。こんな光景が目に浮かぶ。

 「柳家(一門)は二杯目、三杯目と酔うところは説明するので12、3分で噺が終わる。うち(桂一門)はそこを、はしょらないで酒飲みを演じる。終いまでやると時間がかかる」と師匠。「だから、うちの連中は寄席でこの噺はほとんどやらない。やるのはホール落語や、今日みたいな独演会だ」という。

▼師匠は簡単に言うが
 酒の飲み方は町人、商人、武士はそれぞれ、みんな違う。町人を演じる時は、飲むほどに「テメエ」と段々と口調が粗っぽくなってくる。商人は、飲んでも「オレ」とは言わないが、目は朦朧。

 武士は、姿勢を崩さずに呂律が回らないなど、言葉で酔う様を表現する。「こうして、演じ分けることによって、お客さんに想像してもらう」と師匠は簡単に言うが、出来ないよ。