扇子と手拭い

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際立った表現力(落語2ー68)

2011-11-19 13:32:22 | 日記
▼際立った平治師匠
 東穀寄席は相変わらずの人気だった。立川流など落語4派の若手に交じって来秋、十一代目桂文治を襲名する平治師匠が高座に上がった。18日夜は古今亭菊六さんや三遊亭兼好さんら落語巧者が一席うかがったが、平治師匠は表現力すべてに際立った。

 午後6時開場、6時30分開演だが、私が会場に着いた5時40分過ぎには、50人を超える落語好きが用意されたパイプ椅子に腰掛けて、開場を待っていた。その後もドンドン人数が増えるので、ホールの整備が終わると同時に、主催者側は開場を10分早めて観客を誘導した。

▼目と口元で艶っぽく
 この寄席は、東京穀物商品取引所が平成4年から主催していたが、取引所を取り巻く経済情勢の変化から同21年で中止となった。それを翌22年から地元、人形町商店街が中央区の協力を得て引き継いだ。落語会の名称もそのままに今回で107回。

 滝川鯉橋さんが「元犬」、菊六さんが「猿後家」、立川生志さんが「反対俥」、柳家蔵之助さんが「ぐつぐつ」、兼好さんが「うどんや」をそれぞれかけた。この中で光ったのは菊六さん。猿に似ている、と気にしている後家さんを目と口元、全体の仕草で艶っぽく演じた。あまりの見事さに、客席は呆気に取られた。

▼味があって面白い
 だが、それでも平治師匠には一歩届かない。師匠がこの日、かけた演目は、「まんじゅう怖い」。よく知られた噺。それだけに難しい。古くは志ん生師匠から現代の兼好さんまで、いろんな噺家がやっているのをCDで聴いたが、それぞれの個性、味があって面白い。

 その噺を平治師匠は高座に乗せた。「オレは蛇が怖い」「オレはカカアが怖い」、とみんなが怖いものについて話している。それを脇から「怖えもんなんてねえ」とへそ曲がりが強がりを言う、というところから始まる落語だ。その男が「世の中にたった一だけ怖えもんがあった」と漏らした。みんなが「何だ、なんだ」と問いかけると、男が「まんじゅう」と蚊の鳴くような声で応えた。

▼食ったまんじゅうの数は
 いいことを聞いた。へそ曲がりを「懲らしめてやれ」、とみんながまんじゅうを持ち寄る。あとは聴いてのお楽しみだが、師匠の食べ方が絶品。両手で栗まんじゅうをパッと二つに割って、口いっぱいにほおばる。食べる音まで客席に届く。見ていて、思わず食べたくなるほどの仕草に、客席から拍手が沸いた。

 私の友人は「いや、びっくりしたね。よくあんな音が出せるもんだ」と驚いていた。「あそこまで行くには相当、稽古したんだろうね」としきりに感心していた。

 師匠、これまでにいくつ、まんじゅう食ったの?