共通テーマ「音」でTが書いた詩を投稿します。
砥石
物置の奥から出て来た砥石
スー スー スー と音が聞こえてきた
父が包丁を研いでいる
水をかけながら
研いては指先で刃先に触れ確かめている
「痛くない?」
私が聞く
「大丈夫だよ」
父は笑って今度は刃先を水平に眺めている
夏の陽が刃先に宿って光っている
いつの夏だろう
指が切れないだろうかと真剣に心配している
私は五才だ
それから三十回の夏があり
今年は父が亡くなって三十三回忌だ
すっかり忘れ去っていた砥石で
私も包丁を研いでみる
水をかけて刃先をおさえ 引いて押すと
スー スー スー と音がした
激しい陽ざしの下
私の影は父の影に重なっていた
砥石
物置の奥から出て来た砥石
スー スー スー と音が聞こえてきた
父が包丁を研いでいる
水をかけながら
研いては指先で刃先に触れ確かめている
「痛くない?」
私が聞く
「大丈夫だよ」
父は笑って今度は刃先を水平に眺めている
夏の陽が刃先に宿って光っている
いつの夏だろう
指が切れないだろうかと真剣に心配している
私は五才だ
それから三十回の夏があり
今年は父が亡くなって三十三回忌だ
すっかり忘れ去っていた砥石で
私も包丁を研いでみる
水をかけて刃先をおさえ 引いて押すと
スー スー スー と音がした
激しい陽ざしの下
私の影は父の影に重なっていた