「未来」というお題で書いた詩の合評報告最終回。Aの「EXIT」についてです。 ■:作者の弁 ●:評者の弁
■ちゃちな思い出を反芻するより、もっと意味ある未来を見据えろよ!という気持ちで書きました。
●私は最近、思い出だけでも十分だと思うようになってきたけど。
■それは「過ぎ行く時」を読めば分かるけど、ふとした一瞬の体験でも意識の中で芳醇なものに熟成されているから言えるんだと思うよ。ちゃらちゃら楽しい体験をしたがる思い出づくりと違ってね。それがこの詩の1連目最終行「時は空間を揺らす生命」という一節と通じているのではないでしょうか。
流行りを追って現実の表層で楽しく過ごそうとして、あてが外れると「意外とつまらなかった」なんて言っている人をイメージして、1連目の出だしで「愚かな視点」とか書いちゃいましたけど、我ながら上から目線ですよね
●言葉にパンチがあっていいと思いますよ。
EXIT (再録)
愚かな視点からは
変色を繰り返しているだけに見える海
無のような蒼白の空に融け込んだり
緑からグレーへの階調を揺らしたり
ねっとりと黒く光って呟いていたりする
海岸線は長い時間の後に輪郭を変え
気付かぬ間に変化している
時間が運動を必要とするから
海も陸も一瞬たりとも同じではない
時は空間を揺らす生命
時は身体の残酷な生命
肉体に閉じ込められた未熟な精神を
時空間に放たれた誕生の一瞬は
死に至る第一歩だった
その時は気付いていなかったけれど
悪夢に向かって運動する躰に
時間が積み重ねられていく
思う存分汚い業を積んだ
少しは善い行いもした
未来にさす影が少しずつ濃さを増す後半生の只中
見え隠れしていた醜い真実が明確に見えている
積み重ねた時間の苦々しい頂点に尖端を積み増していく
なぜか肉体と共存しなければならない精神が死ぬまで
剣を手から離すな
切先を研ぎ正しく未来に向けろ
下を見るのは危険だ
過去を反芻するのは無意味だ
想像力のない人間が思い出ばかりを貯め込む
到着された方はさっさと出口へお進みください
そりゃあ長い距離を飛んで来たのでしょうよ
だからといってここに留まられては困ります
「辛かった」とか「退屈だった」とか
さんざめいている暇はありません
この到着ゲートは即出口です
ほらほら
死にたくなるほど大きくて青い海が見えますよ
「わあ楽しみ」
空しい未来に向かって
とっととご退出ください
ツーリスト案内係も明日で引退だ
■ちゃちな思い出を反芻するより、もっと意味ある未来を見据えろよ!という気持ちで書きました。
●私は最近、思い出だけでも十分だと思うようになってきたけど。
■それは「過ぎ行く時」を読めば分かるけど、ふとした一瞬の体験でも意識の中で芳醇なものに熟成されているから言えるんだと思うよ。ちゃらちゃら楽しい体験をしたがる思い出づくりと違ってね。それがこの詩の1連目最終行「時は空間を揺らす生命」という一節と通じているのではないでしょうか。
流行りを追って現実の表層で楽しく過ごそうとして、あてが外れると「意外とつまらなかった」なんて言っている人をイメージして、1連目の出だしで「愚かな視点」とか書いちゃいましたけど、我ながら上から目線ですよね
●言葉にパンチがあっていいと思いますよ。
EXIT (再録)
愚かな視点からは
変色を繰り返しているだけに見える海
無のような蒼白の空に融け込んだり
緑からグレーへの階調を揺らしたり
ねっとりと黒く光って呟いていたりする
海岸線は長い時間の後に輪郭を変え
気付かぬ間に変化している
時間が運動を必要とするから
海も陸も一瞬たりとも同じではない
時は空間を揺らす生命
時は身体の残酷な生命
肉体に閉じ込められた未熟な精神を
時空間に放たれた誕生の一瞬は
死に至る第一歩だった
その時は気付いていなかったけれど
悪夢に向かって運動する躰に
時間が積み重ねられていく
思う存分汚い業を積んだ
少しは善い行いもした
未来にさす影が少しずつ濃さを増す後半生の只中
見え隠れしていた醜い真実が明確に見えている
積み重ねた時間の苦々しい頂点に尖端を積み増していく
なぜか肉体と共存しなければならない精神が死ぬまで
剣を手から離すな
切先を研ぎ正しく未来に向けろ
下を見るのは危険だ
過去を反芻するのは無意味だ
想像力のない人間が思い出ばかりを貯め込む
到着された方はさっさと出口へお進みください
そりゃあ長い距離を飛んで来たのでしょうよ
だからといってここに留まられては困ります
「辛かった」とか「退屈だった」とか
さんざめいている暇はありません
この到着ゲートは即出口です
ほらほら
死にたくなるほど大きくて青い海が見えますよ
「わあ楽しみ」
空しい未来に向かって
とっととご退出ください
ツーリスト案内係も明日で引退だ