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今朝の気づき:健常者の無知と傲慢

2023-12-24 09:45:09 | 時評
【毎日】校閲至極:「健常者」に安住 配慮不足を反省・・(東京校閲部・岩佐義樹)・・抜粋
* 2023年に読んだ小説で最も衝撃的だったのは市川沙央(さおう)さんの芥川賞受賞作『ハンチバック』です。筋疾患の難病を患う市川さんは、自らを投影した主人公にこう言わせます。

 「私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、―5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを
  憎んでいた」マチズモというのはマッチョから来たとされ「男性優位」という意味もあるようですが、ここでは「健常者優位主義」として使われています。
 「こちらは紙の本を1冊読むたび少しずつ背骨が潰れていく気がするというのに、紙の匂いが好き、とかページをめくる感触が好き、などと宣(のたま)い電子書籍を貶(おとし)める健常者は呑気(のんき)でいい」

* ここで憎まれている行為は全部私のことではないか、と胸を突かれました。電子書籍を毛嫌いし、本は必ず書店で買うことを信条にしている私。それは健常者の「無知な傲慢」だったということに、ガツンと
  やられたような気がしました。私はマッチョとは程遠い体格ですが、それでも自由に動けない人から見るとマチズモを誇っていたことに愕然としました。
   しかし、そんなことよりもまだまだ私は配慮が足りないと思い知らされたことがありました。目が不自由な人のための囲碁を考案した人の記事です。

  ブラインドと掛けて「『ブライン碁』という造語を作り」とありました。間違いとはいえませんが「造語を作る」という言い回しがダブり気味のように感じ「……という語を作り」という直しを提案しました。
  しかし、筆者の返事はこうでした。「視覚障害のある方は音声変換ソフトを使って読むと思います。その際『ブライン碁という碁』と認識される心配があるので、紛れのないよう『……という言葉を作り』に
  します」  今は新聞記事も音声ソフトで聞く人もいる時代。私はそのことに全く思いを致さずにいました。
    「健常者」というのもちょっと嫌な言葉ですが、知らず知らずのうちにその立場に安住する「特権」を不断に見直さなければならないと、認識を新たにした一件でした。
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 言われてみれば思い当たる事は多くある。目の前に身体障碍を持つ人が居ても、私は気が付かずに無神経に傷つけてきたのだろうと思う。それは市川さんのように難病で筋肉の自由を損なわれた人だけでなく、遺伝病・視覚・聴覚・知能に障害を有するなど全ての人に当てはまる。私も健常者の「無知な傲慢」のまま、ここまで生きてきた。

 たとえ具体的に傷つけた経験はなくても、健常者の傲慢・無智は≪他者を思いやる心≫の欠如であり、他者の人権を自分と同様に尊重する姿勢の不完全さでもある。
(様々な自由の否定や差別への反対)と同じ重さで、心身障碍者の人権を損なわない努力を払わないと『基本的人権の擁護』も、所詮、健常者の傲慢を脱しきれない。
  此の記事はそれを気づかせてくれた。
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