昨日の切り口を振り返っておくと、17人の生きた長さ及び体格についてであった。
【1】 総じて作曲家は短命であった・・・<短命の要因> 家系遺伝、幼時からの既往症、演奏旅行等の負担・ストレス、過度の喫煙と飲酒、不衛生な感興と低い医療技術
【2】 総じて身長低く、肥満型または痩せ型のオタク的人物が多い・・・170cm以上は17人中で僅か5人・・<バッハ/ヘンデル/ショパン/リスト/ガーシュイン>
今日はもう少し深く、違った角度から『17人の生き方と病いの原因パターン』を想像してみたい。もちろん、此の分類と作品の特徴を単純に結びつけるのは無理がある。
だが、生まれてから成人に至るまでの間、どういう家庭環境に育ち、どういう既往症をもち、成人後を含め、どのような性格が形成されたのかは本書、或はそれぞれの伝記などで追えるので、これら作曲家の一生がどんなものであったかを複合して想像すると、世に残した作品との結びつきを読者なりに思い浮かべるくらいはできる。
≪1≫ 父が経済的に成功した裕福な家庭に生まれ、不自由なく育った・・・<シューベルト><メンデルスゾーン><グリーグ>
≪2≫ 父が病死、または妻子を養うのに必ずしも余裕がなく、子供の音楽才能に依存した・・・<モーツァルト><ベートーヴェン><パガニーニ><ウエーバー><ロッシーニ>
<シューマン><バルトーク>
⇒ この境遇が性格形成に影響しただけでなく、ストレス対処における不摂生や既往症病歴との関連をも疑わせる。
≪3≫ ストレス過多を紛らわすべく不摂生を重ね、命を縮めた
・・・<モーツァルト:コーヒー&ワイン><ベートーヴェン:難聴⇒喫煙/コーヒー/ワイン><シューベルト:喫煙/ワイン/美食><ロッシーニ:喫煙/美食><ショパン:偏食>
<リスト:過密スケジュールのストレス⇒過度の喫煙>
≪4≫ 遺伝性疾患をもち、幼時からの既往症とも相まって死期を早めた・・・<メンデルスゾーン:先天性脳動脈瘤><ショパン:気管支拡張⇒結核><マーラー:僧房弁膜症>
<バルトーク:骨髄性白血病>
≪5≫ 音楽の中心(パリ・ウイーン)から外れた出自や、東欧系/ユダヤ系家系に劣等感を抱き、強いストレス下に民族音楽の色濃い創作傾向を貫いた
・・・<ショパン:亡国ポーランドへの郷愁><リスト:オーストリーのハンガリー吸収で故郷喪失><グリーグ:遅れた北欧ノルウエー><マーラー:両親ユダヤ人で迫害さる>
<バルトーク:第一次大戦後のハンガリー崩壊で故郷喪失、パリにもなじめず渡米>
お気づきのように、パターン≪1~5≫の間で重複する作曲家が多い。同じ作曲家に重なるパターンの組み合わせから浮かぶ生きた姿を考えると、より視覚的になる。
では昨日挙げた長生き組の面々は死ぬ直前まで病気とは全く無縁だったのか? というと全員がそうではなさそうで”当時の平均的男性と比較すれば頑健だった”というべきか。
・・<ワーグナー:70/ヴェルディ:87/ブラームス:63/チャイコフスキー:53/フォーレ:79/プッチーニ:65/ドヴュッシー:55/R.シュトラウス:84>
また、これらの長生き組それぞれに上記のパターンを当てはめたなら、病の影響とは別の側面からあぶりだされる姿が浮かび、個別の伝記とは異なる映像が見えるかもしれない。
長生き組の大先輩である<バッハ/ヘンデル>は、17世紀後半に生まれ18世紀半ば亡くなった人なので医療記録は乏しく、健康に関する伝説めいたものすら少ない。生涯独身を通したヘンデルは英国に渡ったこともあり、バッハよりわからない部分が多い。バッハは妻が遺したとされる「バッハの想い出」なる手記が幸いにもあるので、直筆か否かの論争はさておき、
バッハの姿を具体的に想像できる。 本書では、此の二人の大作曲家が晩年揃って「白内障」に悩み、手術を受けたが奏功せず失明してしまったことを紹介している。
今なら日帰り手術で終わる「白内障」だが、約250年前に望むべくは無かった。 < つづく >
【1】 総じて作曲家は短命であった・・・<短命の要因> 家系遺伝、幼時からの既往症、演奏旅行等の負担・ストレス、過度の喫煙と飲酒、不衛生な感興と低い医療技術
【2】 総じて身長低く、肥満型または痩せ型のオタク的人物が多い・・・170cm以上は17人中で僅か5人・・<バッハ/ヘンデル/ショパン/リスト/ガーシュイン>
今日はもう少し深く、違った角度から『17人の生き方と病いの原因パターン』を想像してみたい。もちろん、此の分類と作品の特徴を単純に結びつけるのは無理がある。
だが、生まれてから成人に至るまでの間、どういう家庭環境に育ち、どういう既往症をもち、成人後を含め、どのような性格が形成されたのかは本書、或はそれぞれの伝記などで追えるので、これら作曲家の一生がどんなものであったかを複合して想像すると、世に残した作品との結びつきを読者なりに思い浮かべるくらいはできる。
≪1≫ 父が経済的に成功した裕福な家庭に生まれ、不自由なく育った・・・<シューベルト><メンデルスゾーン><グリーグ>
≪2≫ 父が病死、または妻子を養うのに必ずしも余裕がなく、子供の音楽才能に依存した・・・<モーツァルト><ベートーヴェン><パガニーニ><ウエーバー><ロッシーニ>
<シューマン><バルトーク>
⇒ この境遇が性格形成に影響しただけでなく、ストレス対処における不摂生や既往症病歴との関連をも疑わせる。
≪3≫ ストレス過多を紛らわすべく不摂生を重ね、命を縮めた
・・・<モーツァルト:コーヒー&ワイン><ベートーヴェン:難聴⇒喫煙/コーヒー/ワイン><シューベルト:喫煙/ワイン/美食><ロッシーニ:喫煙/美食><ショパン:偏食>
<リスト:過密スケジュールのストレス⇒過度の喫煙>
≪4≫ 遺伝性疾患をもち、幼時からの既往症とも相まって死期を早めた・・・<メンデルスゾーン:先天性脳動脈瘤><ショパン:気管支拡張⇒結核><マーラー:僧房弁膜症>
<バルトーク:骨髄性白血病>
≪5≫ 音楽の中心(パリ・ウイーン)から外れた出自や、東欧系/ユダヤ系家系に劣等感を抱き、強いストレス下に民族音楽の色濃い創作傾向を貫いた
・・・<ショパン:亡国ポーランドへの郷愁><リスト:オーストリーのハンガリー吸収で故郷喪失><グリーグ:遅れた北欧ノルウエー><マーラー:両親ユダヤ人で迫害さる>
<バルトーク:第一次大戦後のハンガリー崩壊で故郷喪失、パリにもなじめず渡米>
お気づきのように、パターン≪1~5≫の間で重複する作曲家が多い。同じ作曲家に重なるパターンの組み合わせから浮かぶ生きた姿を考えると、より視覚的になる。
では昨日挙げた長生き組の面々は死ぬ直前まで病気とは全く無縁だったのか? というと全員がそうではなさそうで”当時の平均的男性と比較すれば頑健だった”というべきか。
・・<ワーグナー:70/ヴェルディ:87/ブラームス:63/チャイコフスキー:53/フォーレ:79/プッチーニ:65/ドヴュッシー:55/R.シュトラウス:84>
また、これらの長生き組それぞれに上記のパターンを当てはめたなら、病の影響とは別の側面からあぶりだされる姿が浮かび、個別の伝記とは異なる映像が見えるかもしれない。
長生き組の大先輩である<バッハ/ヘンデル>は、17世紀後半に生まれ18世紀半ば亡くなった人なので医療記録は乏しく、健康に関する伝説めいたものすら少ない。生涯独身を通したヘンデルは英国に渡ったこともあり、バッハよりわからない部分が多い。バッハは妻が遺したとされる「バッハの想い出」なる手記が幸いにもあるので、直筆か否かの論争はさておき、
バッハの姿を具体的に想像できる。 本書では、此の二人の大作曲家が晩年揃って「白内障」に悩み、手術を受けたが奏功せず失明してしまったことを紹介している。
今なら日帰り手術で終わる「白内障」だが、約250年前に望むべくは無かった。 < つづく >