今朝で此の水曜連載「キーワードで読む昭和天皇実録」シリーズが終わる。 前回は、<退位>を昭和天皇自身がどう考えていたかを周囲のメモや記録と併せて記者が取り上げていたが、今回は<皇室・皇族制度>について当時の昭和天皇がどう観ていたか、に焦点を当てている。 http://mainichi.jp/shimen/news/20141029ddm012040066000c.html
敗戦後の昭和22年、皇族人数・家数の縮小を求められ51名の皇籍離脱が実施された。また同57年「ヒゲの殿下」寛仁(ともひと)親王の“離脱希望”申し出があった。それに際して<入江侍従長ら周囲の反応は「そんなに皇族といふものに重圧があり、それがいやならサツサとおんでてもらひたい」と厳しい言葉を記すなど、周囲の反応は冷ややかで、殿下は体調を崩す>とある。← 侍従長という立場に在る人がこのような非難めいた感想を例え自分の日記であれ書き残したことに私は驚くと同時に、日本の宮廷制度における侍従職の隠然たる影響力を想像してしまう。 この隠然たる影響力が入江氏に限るのか、代々そういうものであったのか?
もうひとつ興味深いのが<天皇自身に「違う立場になってみたい」との思いはなかったのか。実は訪米直前の75年9月の米誌インタビューで、(昭和天皇は)王子と貧者が立場を入れ替える英国が舞台の小説を挙げ、「それは私が深く心に秘めていた願いでした」と語っている。小説では王子は市井の暮らしを知った上で結局宮中に戻り、王となる。天皇はそのインタビューでこう語った。「かりに私がそのような望みを実現したら、結末はその物語と同様のことになったのではないでしょうか」>という記述っだ。 実録はインタビューを受けたことを記すが、この問答は掲載しなかった。 ただ、「自らの定め」について側近に語った言葉が別の場所に載る。 <祖先から受け継いだこの国を子孫に伝えることが自分の任務であり、(退位せず)苦難に堪えて日本再建に尽くす方が国家に忠を尽くすことになると考えた>(68年4月24日)・・・・
自分はこの国を<祖先から受け継いだ>と天皇自らが意識している。これは「歴史であると同時に政治制度でもある」のが天皇制/皇室の在り方だ」と信じて疑わない立場を最も端的に表現した言葉だろう。天皇制肯定/賛美/支持者の想いもこれだと推察できる。 ここには、《 国と個人、或は国と市民の在り方/関係性 ≫において、今も王制を残す諸国と共和政に転換した諸国との間の顕著な相違が在る。西欧諸国の例よりも、日本により近いタイ王国における統治の姿、王室の役割を照らしてみるのも日本の天皇制/皇室制度の考えるとき参考になるだろう。(日本はタイと同じで好いと言っているのでは勿論ない。) 片や、アジアには隣の某国のように、共和国と名乗りながら独裁体制で実質上は過去の王朝と大差がない統治を行う大国もある。
<自由/民主>を国民の幸福追及のためには最善(もしくは次善)の価値規範と肯定し、国家の在り方の大前提にするなら、その視座から今後の統治制度における天皇制のよりよい在り方を、国民一人一人が 面倒がらず考えたいものである。
敗戦後の昭和22年、皇族人数・家数の縮小を求められ51名の皇籍離脱が実施された。また同57年「ヒゲの殿下」寛仁(ともひと)親王の“離脱希望”申し出があった。それに際して<入江侍従長ら周囲の反応は「そんなに皇族といふものに重圧があり、それがいやならサツサとおんでてもらひたい」と厳しい言葉を記すなど、周囲の反応は冷ややかで、殿下は体調を崩す>とある。← 侍従長という立場に在る人がこのような非難めいた感想を例え自分の日記であれ書き残したことに私は驚くと同時に、日本の宮廷制度における侍従職の隠然たる影響力を想像してしまう。 この隠然たる影響力が入江氏に限るのか、代々そういうものであったのか?
もうひとつ興味深いのが<天皇自身に「違う立場になってみたい」との思いはなかったのか。実は訪米直前の75年9月の米誌インタビューで、(昭和天皇は)王子と貧者が立場を入れ替える英国が舞台の小説を挙げ、「それは私が深く心に秘めていた願いでした」と語っている。小説では王子は市井の暮らしを知った上で結局宮中に戻り、王となる。天皇はそのインタビューでこう語った。「かりに私がそのような望みを実現したら、結末はその物語と同様のことになったのではないでしょうか」>という記述っだ。 実録はインタビューを受けたことを記すが、この問答は掲載しなかった。 ただ、「自らの定め」について側近に語った言葉が別の場所に載る。 <祖先から受け継いだこの国を子孫に伝えることが自分の任務であり、(退位せず)苦難に堪えて日本再建に尽くす方が国家に忠を尽くすことになると考えた>(68年4月24日)・・・・
自分はこの国を<祖先から受け継いだ>と天皇自らが意識している。これは「歴史であると同時に政治制度でもある」のが天皇制/皇室の在り方だ」と信じて疑わない立場を最も端的に表現した言葉だろう。天皇制肯定/賛美/支持者の想いもこれだと推察できる。 ここには、《 国と個人、或は国と市民の在り方/関係性 ≫において、今も王制を残す諸国と共和政に転換した諸国との間の顕著な相違が在る。西欧諸国の例よりも、日本により近いタイ王国における統治の姿、王室の役割を照らしてみるのも日本の天皇制/皇室制度の考えるとき参考になるだろう。(日本はタイと同じで好いと言っているのでは勿論ない。) 片や、アジアには隣の某国のように、共和国と名乗りながら独裁体制で実質上は過去の王朝と大差がない統治を行う大国もある。
<自由/民主>を国民の幸福追及のためには最善(もしくは次善)の価値規範と肯定し、国家の在り方の大前提にするなら、その視座から今後の統治制度における天皇制のよりよい在り方を、国民一人一人が 面倒がらず考えたいものである。