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ハウリンメガネの『スーパーギタリスト列伝』(その1)「スティーヴィー・レイ・ヴォーン」(SRV)「Rockpalast Live 84」を、ズバッと斬る!

2021-08-14 18:47:18 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、御機嫌よう!
ハウリンメガネである。

新連載「スーパーギタリスト列伝」ということで、
栄えある第1回は
「みんな大好きスティーヴィー・レイ・ヴォーン」だ!
(以下SRVと略)

みんな好きでしょ?SRV・・・・
おっと今の間は気にしないで。

テキサスから傷だらけのストラトを担いで
デイヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」に参加し、
「次世代ブルースギタリストの星」として注目を集めながら
不幸にもライブ終了後の移動時に発生した
ヘリコプター事故により35歳の若さで1990年に逝去。

それから30年以上経過した今でも
フェンダーからは「SRVシグネイチャーモデル」のストラト
が販売され続け、彼の影響を受けたさらなる新世代ギタリストは
本当に枚挙に暇ない・・・。

さて、ここまで書いておいて何だが、
普段このブログを見ている人なら気づいているだろう。
「あれ?コイツ、SRVのこと好きなんて話ししてたっけ?」
はい、その通り!
細かい話は後に回すが、筆者、基本的にこの人のファンではない!

それでは何故、第1回で彼を取り上げるのかといえば、
「8月27日が彼の命日」であるということと
ファンでなくても「この人のスゴさ」は十分理解できるから!
という理由である。

というわけで、
今回は昔からお馴染みのこちら!

84年「Rockpalast ライブ(ブートDVD)」
(写真では85とあるがデータから見ると間違いの模様)

本作から魅力的なシーンをピックアップして、
そんなSRVの魅力に迫ってみよう.

(84年なのでレッツ・ダンス参加後、クスリとアルコールでボロボロになる少し前のライブ)

2.Testify
コレ!イントロのボトムリフから放たれる豪快なフェンダーサウンド!
あの時代に「ストラトとフェンダーアンプ」という組み合わせ!
「この魅力」を復権させたという意味でも
SRVは称えられて然るべきでしょう!

(こう書くとSRVはダンブルだろ?という声が聴こえてくるが、ダンブルはもともとフェンダーアンプをベースとした改造アンプからスタートしているし、SRV自身はフェンダースーパーリバーブなどとダンブルを併用している)。

俗に云う
「ロックギター=マーシャルアンプ」
という図式を見事に打ち崩し、
「フェンダーアンプがロックギターにも抜群に使えるアンプだ!」
ということを世間に思い出させたのは間違いなくSRV。
弦離れがよく、ビシビシと突き抜ける・・・・
フェンダーサウンドで弾かれるギタートーンは
バッキングもソロも素晴らしい。

3.Voodoo child (slight return)
云わずと知れたジミヘンのカバー。
SRVはかなりのジミヘン・フォロワーで、
この曲もよくプレイされるが、
彼流の解釈で曲間のソロではボリュームを下げた
ストラトらしいクリーントーンでのプレイが冴えている!
(クリーントーンでも音の太さが失われていないのは流石!)。

彼は時折右手を宙に浮かせてプリングだけで音を鳴らすのだが、
彼はとんでもなく太い弦(0.13〜0.56)を張っている。
やったことのある方なら分かるだろうが、
この太さの弦になると一般的な太さ(0.10〜0.46ぐらいか)
の弦と比較して、感覚的に2倍以上の張りの強さ(硬さ)になる。
これでよくあんなプレイが出来るもんだ……

6.Love struck baby
チャック・ベリーからの影響「モロ出し」のロックンロール。
おそらくリアとセンターのハーフトーンで弾いていると思われるが、
クラプトンやジミのベルトーン的なサウンドとは違う、
「ジャングリーで軽快なサウンド」が
ロックンロールによくマッチしていて、とても心地よい。

続く「7.Cold shot」 も多分ハーフトーンだが
こちらはおそらくフロントとセンター
(モジュレーションエフェクトがかかっていて分かりづらいが)
で、ブルースベースの曲調に合わせた音をチョイス。
この辺のサウンド・セレクトの上手さは流石としかいえない。

8.couldn't stand the weather
の粘っこいヘヴィでファンキーなリフから
野太いカッティングへ移る瞬間は個人的にこの映像のハイライト。
SRVはやっぱり「キレのあるリフ」を弾かせると天下一品。
ボウイの「レッツ・ダンス」でナイル・ロジャースが弾いている
と思われているカッティング、
「いくつかはレイヴォーンなんじゃないか?」
と筆者は疑っているんだがどうだろうか。

9.Tin pan alley
SRVのブルージーなトーンが楽しめるストレートなブルースナンバー。
こちらではベルトーンを活かしたクランチでのプレイが素晴らしい。

12.Little wing
これまたジミヘンの曲。
SRVは途中、ウェス・モンゴメリーのように
親指弾きのオクターブ奏法で弾いており、
ジミの原曲やクラプトン版、ジェフ・ベック版とも異なる
そんな彼らしい魅力を引き出している。

最後の
「13.Third stone from the sun(これもジミヘン)」
ではアームとフィードバックを駆使。
オクターブ奏法も織り交ぜた、素晴らしいバイオリントーンが聴ける。

全編を通して、
ボリューム、トーン、ピックアップセレクター全てをイジり倒し、
ピッキングポイントも鳴らしたいトーンに応じて工夫
(時には指板上でもピッキングしている)。
アクションもジミヘンのように肩に担ぐ、
背の後ろに回すなど観客を盛り上がる努力を欠かしていない。

そして何より、ストラトをここまで見事に吼えさせた男は滅多にいない。
まさに「スーパーギタリスト」である・・・。

「結構褒めてるじゃん、結局、好きなんじゃないの?」
あ~うん、嫌いじゃない、嫌いじゃないのよ。
じゃあ何故筆者は彼のファンではないのか。

1つ目。
「弾きすぎ!」
テキサスギタースリンガーの名は伊達ではなく、
隙あらばギターフレーズを詰め込んでくる
(texas flood(ブルースの洪水)とはよくぞつけた邦題だ)!
まあ、この辺がギタリストに好まれる理由なのだとも思うのだが、
個人的には「ここまでフレーズを詰め込まれると息が詰まる・・・」
「間」のないギターはどこか窮屈だ。

2つ目。
「歌が弱い・・・」
下手ではない。だが上手くはない。
ヘタウマというのも違って・・・・、
なんというか必要に駆られて歌っているような感じがするのだ。
多分、もともと歌にプライオリティがない人なのだと思うが、
それならいっそ歌える人間を連れてきて
ギターに専念した方がよかったのでは?とも思う。

3つ目。これが最大の理由。
「なんでこの人、ブルースギタリストとして祭り上げられてるの?」
敢えてこういう言い方をするが、
SRVはブルースフィールの強いロックギタリストであって
決してブルースギタリストじゃない。

ブルース度でいえば兄貴の「ジミー・ヴォーン」の方が
ずっとストレートなブルースギタリストだし、
はっきり言ってロック界隈の中でいえば
ジミー・ペイジやロリー・ギャラガーの方が
よっぽど「ブルース度は高い」と思っている。

確かに間違いなくブルース育ちの人
(アルバート・キングとジャムってんだから!)
だが、彼のプレイを聴けばブルースに特化したギタリストではない
ということは分かるはずだ!
(大体、彼自身、ジミヘンやスティーヴィー・ワンダーの曲をプレイしたりで、ブルース一辺倒の人ではない)。

ところがどっこい、
変にSRVが「ブルースギターの神様」
として祭り上げられてしまったことで
(彼に罪はないが多分業界的な売り出し方だったんでしょう)
「あれがブルースなんだ!」
と勘違いするギタリストが多すぎる!

以下は筆者が幾度も遭遇する会話だ。
「ブルース好きなんですよ」
おお!誰が好き?
「レイヴォーンとか」
ああ!いいよねレイヴォーン!
でも俺は兄ちゃんのジミーの方が好きかなぁ。
「え?レイヴォーンのお兄さんもギタリストなんですか?」
……うん!そうなんだよ!他には?
レイヴォーン繋がりだとアルバート・キング?
アルバート違いでアルバート・コリンズとか(笑)?
「クラプトンとか……」
・・・・うん!他には?
「……わかんないです……」
・・・う〜ん・・・・そっか!(必死で笑顔を作りながら)

うちの編集長が店やってた頃
そういう客にはバット突きつけて
「今すぐこの店から失せな!」
って言ってたくらい・・・(あの人はねぇ,もう・・・苦笑)
とかにかく、どこにでも、よくある会話なんですよ!

そりゃ私が煩いだけかも知れませんけどね・・・
「SRVだけでブルース語るんじゃないよ!」
SRVのプレイの下地になったプレイヤーがちゃんといるの!
ちゃんと掘れ!ちゃんと聴け!

・・・あ〜いかん、SRVを褒めて終わるつもりだったのだが
変な方向に行ってしまった。 
この通り、
筆者は彼を「ブルースギタリスト」だとは思っていないが、
映像の感想の通り「素晴らしいギタリストの一人」だと思っている.

(これは嘘じゃない。あれだけいい音だせるプレイヤーは滅多にいるもんじゃないし、筆者だって彼のマネして極太弦を張ったりした時期もある。個人的には彼のベストプレイはやっぱり「レッツ・ダンス」だと思ってるけど)。

だが、クドいようだが、
「SRVは入口!であり、その先に彼に影響を与えた
 沢山のブルース、R&B、ロックンロールのギタリスト達がいる!」

次回はそんなロックンロールギタリストにフォーカスを当ててみよう。
というわけで待て次回!

《 ハウリンメガネ筆 》

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