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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(184)

2008年10月08日 | Weblog
10/8  184回

【朝顔】の巻】  その(6)

 この噂が世の中に洩れ聞えて、

「前斎院、ねんごろに聞え給へばなむ、女五の宮などもよろしく思したなり。似げなからぬ御あはひならむ、など言ひけるを、対の上は伝へ聞き給ひて、」
――源氏が、前斎院に親しくなされればこそ、女五の宮も適当なご縁と思われたのでしょう。お似合いのご夫婦でしょうね。などと言っていますのを、紫の上は人づてにお聞きになって――

 さしあたって、気を付けてご覧になりますと、源氏のご様子はたしかにいつもと違ってそわそわしていらっしゃる。本気で思い詰めていらっしゃるのを、無理にごまかそうとしていらっしゃる。

紫の上は
「同じ筋にはものし給へど、おぼえことに、昔よりやむごとなく聞え給ふを、(……)よろしき事こそ、うち怨じなど憎からず聞え給へ、まめやかにつらしと思せば、色にも出し給はず。」
――私と朝顔の宮は、同じ皇族の出ではありますものの、昔から世間で重んじられていることでは、あちらが格別で、(源氏も以前から尊んでおられるので、お心がそちらへ傾けば、自分はさぞ辛い思いをすることでしょう。源氏のご寵愛を受けてきました身に、今更、他の人の下に付くなど、情けないこと)。と、大抵のことは、嫉妬なども愛嬌ていどになさるのですが、この度は身に沁みて辛いと思われていらっしゃるので、顔色にも出されないのでした。――

 源氏は、柱の端近くにうつらうつらしていらっしゃることが多く、また宮中にお泊まりになる日が重なって、まるでお仕事のようにお手紙をお書きになりますので、紫の上は、人の噂は、嘘ではないようですこと、それならば一言でもお聞かせくださればよいのに、と怨めしくお思いになります。

 冬の初めの頃、今年は藤壺の諒闇中ですので、十一月ですが神事も廃されて淋しいので、源氏はつれづれのままに、女五の宮の許をまたお訪ねになります。雪のちらついている夕暮れ時に、御衣裳に香を薫きしめて、格別念入りに身支度なさってお出ましになるのですから、そのお美しさと言ったら、心弱い女でしたら、どうして靡かずにはいられましょうか。

◆旧歴の冬は、10.11.12月。

◆諒闇(りょうあん)=帝が父母の喪に服する期間で1年間。民も1年間服喪した。

ではまた。



源氏物語を読んできて(183)

2008年10月07日 | Weblog
10/7  183回

【朝顔】の巻】  その(5)

 朝顔の君は、知らぬ顔もできそうにありませんし、侍女たちも硯を整えてお返事をと、おすすめ申し上げますので、

「(歌)秋はてて霧のまがきにむすぼほれあるかなきかにうつるあさがほ。
似つかはしき御よそへにつけても、露けく。」
――(歌)秋も暮れてしまって、霧のこめた垣根にまつわりついて、あるかなきかに色あせて咲く朝顔のような私でございます。
朝顔の御例えが、いかにも私に似つかわしいと思いまして、涙にひどく濡れております。――

 と、あるだけの、どこといって気のきいた一節があるというわけではありませんのを、源氏は何故か、下にお置きもせず、眺めておいでになります。紙は、服喪中に用いる青鈍色のしなやかなのに、濃く淡く書かれた墨つきがまことに見事です。

源氏は、
「立ち返り、今更に若々しき御文書きなども、似げなきこと思せど、……」
――昔に立ち返って、こと新しく若々しいお文などお書きになるのは、相応しくないことと、思われますが、朝顔の君のご態度が昔から素っ気なく、振り捨てるでもないようでありながら、何事もなく月日の流れたことを思い返しますと、あきらめることがお出来にならず、ますますお気持ちまで若返って、熱心にお文をお上げになります。

 源氏は、二条の院の東の対に、人目を避けてお出でになり、朝顔の君付きの女房の宣旨を招いてご相談になります。侍女達の中には、相手がさほどの身分でない者にさえ靡くような者は、間違いを起こすに違いないほど、源氏をお誉めもうしますが、

「宮はこの神だにこよなく思し離れたりしを、今はまして、誰も思ひなかるべき御齢おぼえにて、(……)旧りがたく同じさまなる御心ばへを、世の人にかはり、めづらしくも、妬くも思ひ聞え給ふ。」
――朝顔の宮は、昔でさえもさっぱりと源氏と隔たっておられたものを、今はなおのこと、双方とも重々しい筈の御年齢と御声望で、(ちょっとした四季のご挨拶といって、ご返事をしますのさえ、世の人は軽率だと取りざたされることでしょうと、うち解けようとなさるご様子もありません。)源氏は、依然として昔と変わらぬ朝顔の宮のお気立てを、世の常の人々とは違った方よ、と珍しくも、妬ましくもお思いになるのでした。――

◆一般的に思う人を手に入れるには、まずお側付きの女房を手なずけるのが、常套手段です。ここでは、女房達がこぞって源氏を誉めるので、朝顔の君のご心配は、身内にも向けられています。侍女たちが、どれだけ姫君のお気持ちを大切に思っているかにかかっています。

ではまた。

源氏物語を読んできて(182)

2008年10月06日 | Weblog
10/6  182回

【朝顔】の巻】  その(4)

さらに恨み言でしょうか、源氏は、
「齢の積もりには、面なくこそなるわざなりけれ。世に知らぬやつれを、今ぞとだに聞えさすべくやは、もてなし給ひける」
――歳をとると、このような面目ない目に遭うことです。あなたゆえに、今までにない私のやつれ方を、今こそご覧下さいとも申し上げられぬほどの、ひどいお仕打ちですこと。――

 お側の女房達はみな、うるさいほど源氏をお誉め申し上げています。姫宮も秋の空の趣深い景色に、過ぎ去った(八年間)日々に、もののあわれが蘇ってきて、あの頃の源氏のお心の深さ、お人柄を思い出されるのでした。

 「心やましくて立ち出で給ひぬるは、まして寝覚めがちに思し続けらる。疾く御格子まゐらせ給ひて、朝霧をながめ給ふ。枯れたる花どもの中に、朝顔のこれかれに蔓いまつはれて、あるかなきかに咲きて、にほいもことにかはれるを、折らせ給ひて奉れ給ふ。」
――憂鬱な気分でお帰りになられた源氏は、まして夜も寝覚めがちに思いつづけておられます。朝早く、御格子を上げさせて、朝霧をながめておいでになりますと、枯れた草花の中に、朝顔がそこここの草草にまつわりついて、あるかなきかの花をつけています。その中の、色もあせ、衰えているのを折らせて、かの君にお贈りになります。」――

お文に、
「けざやかなりし御もてなしに、人わろき心地し侍りて、うしろでも、いとどいかがご覧じけむとねたく。されど、
(歌)見しをりの露忘られぬあさがほの花のさかりは過ぎやしぬらむ
年頃の積もりもあはれとばかりは、さりとも思し知るらむやとなむ、かつは。」
――あのとりつくしまもないお扱いに、人目も恥ずかしく、退出の後ろ姿もどうご覧になりましたでしょうか、ひどく口惜しいことです。とはいえ、
(歌)以前お目にかかった折りのことが少しも忘れられないあなたですが、その盛りの美しさは過ぎはしないかと心配です。――

ではまた。

源氏物語を読んできて(181)

2008年10月05日 | Weblog
 10/5  181回

【朝顔】の巻】  その(3)

 源氏はそのよそよそしさに、

「今更に若々しき心地する御簾の前かな。神さびにける年月の労かぞへられ侍るに、今は内外もゆるさせ給ひてむ、とぞ頼み侍りける。」
――今更御簾の外とは、いつまでも若者あつかいをされる気がしますね。長い年月、あなたに尽くした苦労も数々あるのですから、今は御簾の内外の自由もお許しくださるものと、当てにしておりました。――

朝顔の君は、仰せの苦労のことなどは、ゆっくり考えてから、申し上げるべきことと存じます。とお答えになりますと、源氏は

「今は何のいさめにか、かこたせ給はむとすらむ。なべて世に煩わしき事さへ侍りし後、さまざまに思う給へ集めしかな。いかで片端をだに、とあながちに聞え給ふ。」
――斎院を下りられた今は、何の禁制によってわたしを遠ざけるのでしょう。あのやっかいな流謫事件まで生じて以来、さまざまな思いを味わって参りました。その一端なりとも申し上げたいのです。と一方的におっしゃいます。――

 朝顔の君のうた
「なべて世のあはればかりをとふからに誓ひしことと神やいさめむ」
――一通りのお付き合いを申すだけでも、矢張り今でも、神のお咎めを受けるでしょう――

 源氏は、「これはまたお情けない。恋はすまいと神に誓っても、神は果たしてお聞き届け下さった例があったでしょうか」などと、伊勢物語の歌にかこつけて冗談めいておっしゃるのも、姫宮は真面目にお聞きになりますので、気分がお悪いのでした。
 もともと世慣れたさまには染まらない姫宮の御気質は、歳月を経るにつれて、一層深くなって、内に引き入ってお返事もなさらないので、お側のものたちも困っております。

 源氏は、
「すきずきしきやうになりぬるを、など、あさはかならず、うち嘆きて立ち給ふ。」
――色めいたお話になりまして…と深くため息をおつきになって、お立ちになります。――

ではまた。
 

源氏物語を読んできて(180)

2008年10月04日 | Weblog
10/4  180回

【朝顔】の巻】  その(2)

 女五の宮の話は、御兄のお隠れになりましたこれからは、いよいよ微々たる有様で生きながらえて行くことになるのでしょう。
 こう話される女五の宮の何と歳をとられたことよ、と源氏はお思いになりながらも、畏まってご挨拶を申し上げます。

「覚えぬ罪にあたり侍りて、……」
――思いもよらぬ冤罪を蒙りまして、(他国に流浪いたしましたが、偶然にもまた朝廷にお仕えする一人に許していただきますと、またあれこれと暇なく、いつも気にかかっておりましたが…。)――

女五の宮は、
「……『いと清らにねびまさり給ひにけるかな。……内裏の上なむいとよく似奉らせ給へる、とひとびと聞ゆるを、さりとも劣り給へらむとこそ、おしはかり侍れ』と、長々と聞え給へば、ことにかくさし向かひて人の誉めぬわざかな、とをかしく思す。」
――「……、ほんとうにご立派におなりになりましたことよ。(御子でいらした頃にお見上げしましたとき、この世の中にこのような眩い光が輝くとはと驚いきました。その後もあまりにお美しくて、気味が悪いくらいに思われましたよ。)今上帝がまた一層あなたにお似申されていらっしゃると、人々が申しますが、しかしなんと言ってもあなた様には劣っておいででしょう。」とながながとおっしゃいます。ただ面と向っては、普通の人ならば、相手を誉めぬものなのになあ、と源氏は可笑しく思われます。

 まだまだ、お話が続きますが、そっと朝顔の君がお住いの西の対のお庭をご覧になりますと、植え込みの風情よろしく、朝顔の君のご容貌やお姿もさぞやと偲ばれて、源氏はがまんができなくなって、

「かく侍ひたるついでを過ぐし侍らむは、志なきやうなるを、あなたの御とぶらひ聞ゆべかりけり、とて、やがて簀子より渡り給ふ。」
――こう伺った機会を外しますなら、まごころが無いようですから、あちらへのご挨拶も申し上げるべきでした、と言って、簀子を通ってお渡りになります。

 朝顔の君付きの上臈女房の宣旨が、朝顔の君のお言葉をお取り次ぎしますと、よそよそしいお返事です。

◆宣旨(せんじ)=元々は、天皇のことばや命令を蔵人(くろうど)に伝える役の宮中の女官。のちに、中宮、東宮、斎宮、関白などの家でそれに相当する役をつとめる女房にもいう。ここでは上臈女房とあるので、上級貴族出の女房で、第一級の秘書方。

源氏物語を読んできて(179)

2008年10月03日 | Weblog
10/3  179回

【朝顔(あさがを)】の巻】  その(1)
 槿(あさがお)とも表記されます。槿=むくげ

 源氏(大臣=おとど) 32歳9月~冬
 紫の上 24歳
 明石の御方 23歳
 朝顔の斎院(朝顔の君、前斎院)
       御父は故式部卿宮。「薄雲の巻」中に亡くなられた記述あり。 
       故桐壺院の御弟宮で、源氏とこの姫君とは、いとこ同志。
 桃園の女五の宮(ももぞのの おんな五のみや)=(故式部卿宮の御妹君。
       源氏にも朝顔の斎院にも叔母にあたる。桃園は地名)


そうそう、
「斎院は、御服にて下り居給ひにきかし。大臣、例の思しそめつること絶えぬ御癖にて、御とぶらひなどいと繁う聞え給ふ。宮、わづらはしかりしことを思せば、御返りもうち解けて聞え給はず。いと口惜し、と思しわたる。」
――朝顔の斎院は、御父宮が薨去されましたので、賀茂の斎院を解かれておられたのでした。源氏は例によって、一旦思い初めた女は決して忘れない御癖で、喪中のお見舞いなど、大層気を入れて度々申されます。姫君は、前にも源氏のために迷惑なさったことを思い出されて、うち解けたご返事もなさいません。源氏は、ひどく口惜しいと思い続けておられます。――

 九月になって、源氏は、朝顔の君が故式部卿宮の御自邸に移ってしまわれたとお聞きになって、そこには女五の宮(叔母)がいらっしゃるので、そちらのお見舞いにかこつけて、お訪ねになります。故桐壺院がことのほか、こちらの御子たちを大切にされていましたので、源氏もこの叔母とは親しくしておいでなのでした。

 薨去されて半年も経ちませんのに、邸は荒れたご様子で、あたりの景色が一層しめやかに感じられます。女五の宮とあれこれお話をされます。

「いと古めきたる御けはひ、しはぶきがちにおはす。年長におあはすれど、故大殿の宮は、あらまほしく旧り難き御有様なるを、もて離れ、声ふつつかに、こちごちしく覚え給へるも、さる方なり。」
――たいそう、老人っぽくなられて、とかく咳き込みがちでいらっしゃる。年長(このかみ=この方の姉上で、葵の上の母のこと)の大宮は、年上でいらっしゃいますが、好ましくいつまでも若々しいご様子ですのに、この女五の宮は全くかけ離れて声がぶっきらぼうで、ぎこちなく思われますが、それもそうしたご境遇のせいなのでしょう。――

ではまた。



源氏物語を読んできて(178)

2008年10月02日 | Weblog
10/2  178回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(17)

源氏は
「『あさましうも疎ませ給ひぬるかな。まことに心深き人は、かくこそあらざなれ。よし、今よりは、憎ませ給ふなよ。つらからむ』とて渡り給ひぬ」
――いやもう、すっかりご機嫌をそこねてしまいましたね。本当に思慮の深い方は、そんなお仕打ちはなさらないものですよ。まあこれからは、そんなにお憎みにならないでください。どんなにか辛いことでしょうから」とおっしゃってお帰りになりました。

「うちしめりたる御にほひのとまりたるさへ、疎ましく思さる。」
――女御は、その後にしっとりした源氏の香の匂いが残っていますのさえ、疎ましくお思いになります。――

さて、源氏は紫の上の住まわれる西の対にお渡りになっても、すぐにお入りにならず、物思いにふけって、端ちかくに横になっていらっしゃる。

「かうあながちなる事に胸塞がる癖の、なほありけるよ、とわが身ながら思し知らる。これはいと似げなき事なり、恐ろしう罪深きかたは、多うまさりけめど、いにしへの好きは、思ひやり少なき程のあやまちに、佛神もゆるし給ひけむ、と思しさますも、なほこの道はうしろやすく、深きかたのまさりけるかな、と思し知られ給ふ。」
――こんな無理な恋に胸を焦がすような癖が、まだ自分にはあったのだな、と我ながら思い知らされたのでした。これは不似合いな恋だ、若い頃の恋は恐ろしいほど罪深いことが多かったけれど、若気の過ちとして、佛や神もお許しになったであろうが、と
心を鎮められますのも、やはり歳の効で、恋路には危なげがなく、分別ができてきたものよ、と思い知られなさいます。――

 こののち、女御はただただ源氏を疎ましく思われますが、源氏は気強く何気ない態度で、一層親らしく振る舞われて、寝殿との間を行ったり来たりしておいでになります。
 
源氏は紫の上に、女御は「秋」にお心を寄せておいでで、あなたは「春」の曙がよいとお思いのようですね。お気に召すような管弦の遊びをしてみましょうか。実は、出家の望みもあるのですが、あなたが淋しくなりはしないかと、それがおいたわしくて、などとお話になります。
明石の御方の所へも、不憫に思われてときどきお出かけになります。

◆この巻は、原文にそって丁寧に辿ってみました。源氏と冷泉帝、紫の上の心理描写によって一層性格が浮かび上がっている巻だと思います。

これで「薄雲の巻」おわり。


源氏物語を読んできて(177)

2008年10月01日 | Weblog
10/1  177回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(16)

 源氏は、さらに続けて、東の院へお気の毒な花散里を移しもしたりしましたが、この方との間柄は、実にさっぱりとしたものです、などとつづけて

「かく立ち返りおほやけの御後見仕うまつるよろこびなどは、さしも心に深く染まず。かやうなる好きがましきかたは、しづめ難うのみ侍るを、おぼろげに思ひ忍びたる御後見とは思し知らせ給ふらむや。あはれとだに宣はせずば、いかにかひなく侍らむ」
――こうして都に帰りまして、冷泉帝の御後見を申し上げる喜びなどは、それほど深いものではありません。こうした好き心の方面は抑えがたいもので、あなたにも、なみなみならぬ思いを抑えてお世話申し上げておりますこと、ご存知でしょうか。どうか、せめてあわれとだけでも仰ってくださらなければ、どんなに甲斐のないことでしょう。――

 女御は、どのようにお答えしてよいものか、お困りになって、おし黙っておられますと、
「『さりや。あな心憂』とて、他事に言ひ紛らはし給ひつ。」
――「やはり、そうでございますか。情けない」とだけおっしゃって、他に話題をお変えになりました。――

 源氏は、さらにさまざまなお話をされますのに、女御はおやさしい、相槌をうたれますので、なお一層愛らしく思われて、

うた
「『君もさはあはれをかはせ人知れずわが身にしむる秋の夕風』忍び難き折々も侍りかし」
――「ではあなたも、人知れず身にしみて、秋の夕風を思う私の心に御同情ください」あなたを想って耐え難い折々もあるのですよ。――

 女御は、何とお応えできましょうか。

源氏は胸に包みきれずに恨み言をおっしゃらずにはいられなかったのでしょう。
もう少しで、間違いもお起こしになるところでしたが、女御がひどくお困りになっておいでなのももっともですし、御自分でも年甲斐もなく怪しからぬことと思い返されて、ため息をついておられるご様子に、女御はさすがに疎ましいお気持ちになられ、少しずつ奥へ引っ込んでいかれました。

ではまた。