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【朝顔(あさがを)】の巻】 その(1)
槿(あさがお)とも表記されます。槿=むくげ
源氏(大臣=おとど) 32歳9月~冬
紫の上 24歳
明石の御方 23歳
朝顔の斎院(朝顔の君、前斎院)
御父は故式部卿宮。「薄雲の巻」中に亡くなられた記述あり。
故桐壺院の御弟宮で、源氏とこの姫君とは、いとこ同志。
桃園の女五の宮(ももぞのの おんな五のみや)=(故式部卿宮の御妹君。
源氏にも朝顔の斎院にも叔母にあたる。桃園は地名)
そうそう、
「斎院は、御服にて下り居給ひにきかし。大臣、例の思しそめつること絶えぬ御癖にて、御とぶらひなどいと繁う聞え給ふ。宮、わづらはしかりしことを思せば、御返りもうち解けて聞え給はず。いと口惜し、と思しわたる。」
――朝顔の斎院は、御父宮が薨去されましたので、賀茂の斎院を解かれておられたのでした。源氏は例によって、一旦思い初めた女は決して忘れない御癖で、喪中のお見舞いなど、大層気を入れて度々申されます。姫君は、前にも源氏のために迷惑なさったことを思い出されて、うち解けたご返事もなさいません。源氏は、ひどく口惜しいと思い続けておられます。――
九月になって、源氏は、朝顔の君が故式部卿宮の御自邸に移ってしまわれたとお聞きになって、そこには女五の宮(叔母)がいらっしゃるので、そちらのお見舞いにかこつけて、お訪ねになります。故桐壺院がことのほか、こちらの御子たちを大切にされていましたので、源氏もこの叔母とは親しくしておいでなのでした。
薨去されて半年も経ちませんのに、邸は荒れたご様子で、あたりの景色が一層しめやかに感じられます。女五の宮とあれこれお話をされます。
「いと古めきたる御けはひ、しはぶきがちにおはす。年長におあはすれど、故大殿の宮は、あらまほしく旧り難き御有様なるを、もて離れ、声ふつつかに、こちごちしく覚え給へるも、さる方なり。」
――たいそう、老人っぽくなられて、とかく咳き込みがちでいらっしゃる。年長(このかみ=この方の姉上で、葵の上の母のこと)の大宮は、年上でいらっしゃいますが、好ましくいつまでも若々しいご様子ですのに、この女五の宮は全くかけ離れて声がぶっきらぼうで、ぎこちなく思われますが、それもそうしたご境遇のせいなのでしょう。――
ではまた。
【朝顔(あさがを)】の巻】 その(1)
槿(あさがお)とも表記されます。槿=むくげ
源氏(大臣=おとど) 32歳9月~冬
紫の上 24歳
明石の御方 23歳
朝顔の斎院(朝顔の君、前斎院)
御父は故式部卿宮。「薄雲の巻」中に亡くなられた記述あり。
故桐壺院の御弟宮で、源氏とこの姫君とは、いとこ同志。
桃園の女五の宮(ももぞのの おんな五のみや)=(故式部卿宮の御妹君。
源氏にも朝顔の斎院にも叔母にあたる。桃園は地名)
そうそう、
「斎院は、御服にて下り居給ひにきかし。大臣、例の思しそめつること絶えぬ御癖にて、御とぶらひなどいと繁う聞え給ふ。宮、わづらはしかりしことを思せば、御返りもうち解けて聞え給はず。いと口惜し、と思しわたる。」
――朝顔の斎院は、御父宮が薨去されましたので、賀茂の斎院を解かれておられたのでした。源氏は例によって、一旦思い初めた女は決して忘れない御癖で、喪中のお見舞いなど、大層気を入れて度々申されます。姫君は、前にも源氏のために迷惑なさったことを思い出されて、うち解けたご返事もなさいません。源氏は、ひどく口惜しいと思い続けておられます。――
九月になって、源氏は、朝顔の君が故式部卿宮の御自邸に移ってしまわれたとお聞きになって、そこには女五の宮(叔母)がいらっしゃるので、そちらのお見舞いにかこつけて、お訪ねになります。故桐壺院がことのほか、こちらの御子たちを大切にされていましたので、源氏もこの叔母とは親しくしておいでなのでした。
薨去されて半年も経ちませんのに、邸は荒れたご様子で、あたりの景色が一層しめやかに感じられます。女五の宮とあれこれお話をされます。
「いと古めきたる御けはひ、しはぶきがちにおはす。年長におあはすれど、故大殿の宮は、あらまほしく旧り難き御有様なるを、もて離れ、声ふつつかに、こちごちしく覚え給へるも、さる方なり。」
――たいそう、老人っぽくなられて、とかく咳き込みがちでいらっしゃる。年長(このかみ=この方の姉上で、葵の上の母のこと)の大宮は、年上でいらっしゃいますが、好ましくいつまでも若々しいご様子ですのに、この女五の宮は全くかけ離れて声がぶっきらぼうで、ぎこちなく思われますが、それもそうしたご境遇のせいなのでしょう。――
ではまた。