永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(1111)

2012年05月23日 | Weblog
2012. 5/23    1111

五十一帖 【浮舟(うきふね)の巻】 その19

「御手水など参りたるさまは、例のやうなれど、まかなひめざましう思されて、『そこは洗はせ給はば』とのたまふ。女、いとさまよう心にくき人を見ならひたるに、時の間も見ざらむは、死ぬべし、と思しこがるる人を、こころざし深しとは、かかるを言ふにやあらむ、と思ひ知らるるにも、あやしかりける身かな、誰も、もののきこえあらば、いかに思さむ、と、先づかの上の御心を思ひ出できこゆれど」
――御手水などを差し上げますのは、薫大将の時と変わりがないのですが、何分右近一人ですし、浮舟にも自分の世話をさせるのはあまりのことと思われて、「あなたがお洗いになったら…」とおっしゃいます。女(浮舟)は、今まで薫の君の、ほどほどに控えめで奥ゆかしいお人柄を見馴れていましたのに、今、こうして目前に、ちょっとの間も逢わないでは死にそうだと私を恋い焦がれておいでの匂宮に、愛情の深いというのは、こういう方のことを言うのであろうかと分かるにつけても、何という不思議な宿命を持った我が身であろう、このようなことを噂にお聞きになったならどなたでも、何とおもわれることか、と、それにつけても先ず、中の君のお心が思い案じられるのでした――

「知らぬを、『かへすがへすいと心憂し。なほあらむままにのたまへ。いみじき下衆といふとも、いよいよなむあはれなるべき』と、わりなう問ひ給へど、その御いらへは、たえてせず。こと事は、いとをかしくけぢかきさまにいらへきこえなどして、なびきたるを、いとかぎりなうらうたし、とのみ見給ふ」
――(匂宮は何もご存知ありませんので)「何ともまったく情けないことだ。是非ありのままに言ってもらいたい。どんな賤しい生まれだと聞いても、ますます愛しくなるであろうに」と、理屈ぬきでお訊ねになりますが、浮舟はまさかお返事申し上げない。その他のことでは、たいそう愛らしく打ち解けたお返事など申し上げて、匂宮のなされるままにまかせておいでになるので、匂宮はこの上なく可愛らしく思うのでした――

「日高くなる程に、迎への人来たり。車二つ、馬なる人々の、例の、荒らかなる七八人、男ども多く、例の、品々しからぬけはひ、さへづりつつ入り来たれば、人々かたはらいたがりつつ、『あなたに隠れよ』と言はせなどす」
――日が高くなってきました頃、母君からの迎えの人が来ました。車二台と、馬に乗った例のとおりの荒くれた男が七、八人、供廻りの男どもが大勢、東国なまりの下品な様子でがやがやしゃべりながら入って来ましたので、女房たちは気まりわるがりながら、「あちらに控えていなさい」と言わせたりしています。(薫、実は匂宮の目に触れぬようにとの、女房たちの心遣い。女房たちは薫とまだ信じている)

では5/25に。


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