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永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(172)

2008年09月26日 | Weblog
9/26  172回

【薄雲(うすくも)の巻】  その(11)

 帝は、何事であろうか、死後もこの世に恨みが残りそうだとは。法師というものは、聖僧でも、けしからぬねじけた、ひがみ根性が深くて困った者もいるからな、と思いながら、
「いはけなかりし時より、隔て思ふことなきを、そこにはかく忍び残されたる事ありけるをなむ、つらく思ひぬる」
――幼い頃から、私は隔てなく思っているのに、そなたは、そうして隠してきたことがあったとは、情けなくひどい話だ――

僧都は、
「あなかしこ、……。これは来しかた行く末の大事と侍ることを、過ぎおはしましにし院、后の宮、ただ今世をまつりごち給ふ大臣の御ため、すべて、かへりてよからぬ事にや漏り出で侍らむ。……。故宮深く思し嘆く事ありて、御祈り仕うまつらせ給ふゆゑなむ侍りし。……その承りしさま」
――これはもったいないことを。(佛の秘法さえ、上様にはお隠しすることなく、お伝え申しました。心に隠す何事がござりましょうか)この事は、過去未来の重大事と存ぜられますことでござりまするが、御崩れになりました桐壺院の帝、御母宮、そしてただ今世の政を執っておいでの源氏の大臣の御身にとって、このまま秘しておきまするならば、良からぬ結果として、世に洩れ伝わるかも知れませぬ。(上様がはじめて御胎内にあらせられましたる時より、藤壺入道の宮は、)深く思い嘆くことがおありのようで、お祈りをば、私に命ぜられたる子細がござりました。(源氏の大臣が不当の罪に遭われました時にも、故宮はいよいよ御恐怖あそばされまして、重ねてご祈祷など仰せくだされましたが、大臣もそれをお聞きになって、またさらに仰せつけられ、ご即位なされました時までご祈祷申し上げた事実がござりました。)その承りました次第とは――

 子細をお聞きになりますうちにも、冷泉帝は、あさましくも珍しい事柄に、恐ろしくも悲しくもさまざまに御心が乱れて、うつむいたままご返事もありません。

◆高貴な人への秘事の表現は、ことばを避けて書きません。

◆写真:僧侶鈍(純)色五條袈裟姿
 この僧都の服装がこのようであったかどうかは、不明です。
 風俗博物館

 ではまた。


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