永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(203)

2008年10月27日 | Weblog
10/27  203回 

【乙女(おとめ)】の巻】  その(13)

 大宮の御心の内は、
「二人をそれぞれに愛おしいとお思いの、中でも男君(夕霧)へのご愛情がより深いためか、こんな恋心があったことも可愛く思われますのに、内大臣が無情にもまるで釣り合わない事のように言われるのを、どうしてそんなに叱るほどのことでしょうか。
もともと内大臣は、この雲井の雁をそれほど可愛がっていらしたわけでもなく、大事にともお考えになっていませんでしたのに、私がこんなにお世話をしたからこそ、東宮に差し上げる気にもなられたのでしょう。その望みが叶わなくて臣下に縁組なさるとすれば、この若君より立派な方が他にいらっしゃるでしょうか。」

大宮はご自分の愛情のせいか、内大臣を恨めしくおもわれます。

夕霧は、こんなふうに騒がれているともお知りにならず、大宮の邸にお出でになります。先夜は人目も多く、雲井の雁にお心の内をお伝え出来ず終いでしたので、ますます思いが募っておいでのようです。

 大宮は、今夜は真面目なお顔で夕霧に、
「御事により、内大臣の怨じてものし給ひにしかば、いとなむ、いとほしき。(……)」
――あなたのことで、内大臣が恨み事をおっしゃったので、ほんとうにお気の毒です。(近親同志で問題をおこして、人に心配をおかけする様なことになりますのが、心配でなりません。こんなことはお耳に入れたくないのですが…)――

 夕霧は、かねてお心にかかっておられたことでしたので、すぐ気がつかれて、お顔を赤らめて、
「何事にか侍らむ。静かなるところに籠り侍りにし後、ともかくも人に交る折なければ、うらみ給ふべきこと侍らじ、となむ思う給ふる」
――何のことでしょうか。修業で東の院に籠りましてからは、どなたとも交際する折とてもございませんから、お怨みをうけるようなことはないと存じますが――

そのご様子が、大層恥ずかしそうで、あわれ深くもあり、大宮は愛おしくお思いになって、「今からはお気をつけるように」と仰って、他のお話に転じられました。

 これからは、お文を交わすことも難しくなると思いますと、夕霧はとても悲しくて、
お夕食も召し上がらず、お心も空に飛んで、眠ることもおできなれないので、人が寝静まったころに、姫君のお部屋の方に行かれます。

◆写真:夕霧


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