永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(898)

2011年02月17日 | Weblog
2011.2/17  898

四十六帖 【総角(あげまき)の巻】 その(75)

「左の大臣殿のわたりの事、大宮も『なほさるのどやかなる御後見をまうけ給ひて、そのほかに尋ねまほしうおぼさるる人あらば、参らせて、重々しくもてなし給へ』ときこえ給へど、『しばし、さ思う給ふるやうなむ』などきこえ否び給ひて、まことにつらき目は、いかでか見せむ、などおぼす御心を、知り給はねば、月日に添へて物をのみおぼす」
――夕霧左大臣の六の君との御結婚については、明石中宮が「やはりそういう安心のいく御正室をお迎えになって、そのほかに側に置きたい女があるなら、上がらせて、あなたは重々しくお振舞いなさい」とご意見申されますが、匂宮は「もう暫くおまちください。私にも思う仔細がございますので」とお言葉を濁されて御承知なさいません。どうしてあの宇治の姫君に辛い目をお遭わせできようか、などとお思いのお胸の内を、宇治ではご存知の筈もなく、月日が経つにつれて、物思いばかりを重ねていらっしゃいます――

 一方、薫はお心のうちで、

「見しほどよりは、軽びたる御こころかな、さりとも」
――匂宮は思ったよりも好色でいらっしゃることよ。そうかと言って、いくら何でもこのままで済まされようとはお思いできないが――

 と、ご自分のお心に頼みながら、中の君には後ろめたさも感じて、めったに匂宮の所へも参上されません。

 薫は、

「山里には、如何に如何に、と、問ひきこえ給ふ。この月となりては、少しよろしうおはす、と聞き給ひけるに公私ものさわがしき頃にて、五六日もたてまつれ給はぬに、いかならむ、とうち驚かれ給ひて、わりなき事のしげさを打ち捨てて、まうで給ふ」
――(宇治の大君のお加減を心配なさって)どうですか、どうですかとしきりにお見舞い申し上げます。十一月になりましてからは、大君のご気分も大分良くなられたとお聞きになり、公にも私的にも多忙のことがありましたので、五、六日の間、薫は宇治へお使いもさしあげませんでしたのを、急にご心配になって、何もかも放り出されて宇治に参上なさいます――

「修法はおこたりはて給ふまで、と、のたまひ置きけるを、よろしくなりにける、とて、阿闇梨をも返し給ひければ、いと人少なにて、例の老人出で来て、御ありさまきこゆ」
――御祈祷は御全快なさるまで続けるようにと、薫が言って置かれましたのに、大君が「お陰様で大分良くなりました」とおっしゃって、阿闇梨も帰しておしまいになりましたので、お住居は人数も少なくひっそりとしています。あの弁の君が罷り出て、大君の御容体などを申し上げますには――

「そこはかといたき処もなく、おどろおどろしからぬ御悩みに、物をなむ更にきこし召さぬ……」
――大君は、どこがどうと特にひどくお悪いというのでも、大病というのでもございませんのに、全くお食事を召しあがらないのでございまして……――

◆おどろおどろしからぬ御悩み=大病というほどでもない御患いで

では2/19に。


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