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永子の窓

趣味の世界

源氏物語と宇治

2010年07月29日 | Weblog
◆宇治
 
 平安貴族にとって、宇治は別業(べつごう=別荘)の地でした。舟遊びや紅葉狩りなどの遊びの地であるとともに、魂の安らぐ宗教的な地でもありました。宗教的な面が強かったのは、平安時代中ごろに栄華の頂点を極めた、藤原氏の墓地があったためです。

 多くの別業では、貴族たちが御堂(みどう=持仏堂・自分の守り本尊を安置するお堂)にこもり、仏に祈るといった時間を持ちました。また『源氏物語』が執筆されたと考えられる年代よりも後になりますが、世界遺産である平等院も藤原頼通(よりみち)が父・道長(みちなが)から譲り受けた別業を寺院に改めたものです。

 和歌においても宇治は「宇治=憂(う)し」の掛詞(かけことば)として、古くからひんぱんに用いられてきました。このように、宇治は平安貴族にとって身近な土地でありました。こうした背景のもと、宇治は『源氏物語』最後の舞台として選ばれたと考えられます。

「橋姫」で始まり「夢浮橋」で終わる「宇治十帖」では、「京から宇治へ」「光源氏からその子・薫へ」と時空が移ることを「橋」で暗示し、「華やかさと静けさ」「此岸(しがん)と彼岸」など宇治の持つ対照的な要素も加えることで、物語が「春から秋」「昼から夜」の世界へと転じていくことを表したと言えるでしょう。

◆写真:紫式部-土佐光起画  
◆参考:宇治 源氏物語ミュージアムより


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