無意識日記
宇多田光 word:i_
 



7月からのTVドラマで尾崎豊作詞作曲の「I Love You」が使われるそうな。しかし歌っているのがヒカルとなるとやっぱり「ちょっと待て」となるよね。

まだ聴いていないから何も言えないんだけども、まさか新録という事はあるまいな。2003~4年当時、わざわざスタジオに入ったのに「やっぱり17歳の時のがいいや」とボヘサマのボーカルトラックを切り取って収録した尾崎豊トリビュート。そういうアクロバティックな提供のし方もあるのだなと当時感心したものだ。

この時の選択と決断は、2000年と2007年の「Fly Me To The Moon」と共に語られる。こちらも同じく昔の歌をそのまま採用してリミックスという形でEVAに提供した。ただ、この時はどちらかというと2000年の自らの歌唱に対して否定的とまではいかないまでも、何だかあんまり褒めていなかった。多分に照れ隠しも含んでいたのだろうが、やはりもっと成長した自分による歌唱が聴けるBeautiful WorldやKiss & Cryと並べて聴かれるというのが響いていたのかな。

それを考えると、「I Love You」は、年月を経ても特別なパフォーマンスだとヒカル自らに思わせられる奇跡のトラックだともいえるかもしれない。今のヒカルは(スタミナはわからないがテクニックは)2000年や2004年や2007年と較べても更に向上している訳で、それをこうやってテレビで流すというプロジェクトにOKを出した、出せたのは、まぁヒカル自身はそのドラマを見ないかもしれないが、今聴いて貰っても大丈夫だろうという判断があったに相違ない。問題あるなら自分から出ていって歌い直すだろう。Fly Me To The Moonも、ああ言いながらあれはあれでOKなんだと思っている筈なのだ。

では、ともうひとつの比較を思い出す。EternallyのDrama Mixだ。あれも、7年前(当時)の歌唱を引っ張り出してきて(しかもテイク違い)皆に聴かせたのだから似たようなものだが、ただ時期的にあそこらへんのHikaruは点線とUtadaにかかりっきりで、歌い直したくても物理的に無理だったのかもしれない。なので「あぁ、あの曲使うの?どうぞどうぞ」と後を周囲に任せていたかもしれない。なかなかに、そこらへんの機微は難しい。

この話題はつまり、ライブ・バージョン以外でヒカルは既発曲の新録音テイクをリリースする可能性があるかという事だが、何故そういう焦点の当て方をするかといえば、I Love YouをCDで聴く為には、10年経った今でもフルアルバムのトリビュート盤を購入するしかないからだ。(だよね?) てかもしかしてとっくに廃盤かな?

如何にCD市場が廃れているとはいえ、地上波のテレビドラマで流れる挿入歌だか何だかをCDで買えないだなんて事態にはならないだろう。最低限、配信販売はする事になる。だとするとそれはどのレーベルからのリリースになるのか。新録音だったら、何のしがらみもなくUniversal/EMIから出せるだろう。そうするかしないか。そうしたかしてないか。ドラマは7月から9月一杯のワンクールものなのかな。もし8月復帰説が正しいのなら、挿入歌がリリースされるタイミングのひとつが8月下旬だろう。或いはそこに「I Love You」を収録したニューマテリアルをぶつけてくる可能性もある。今なら何とでも言える。取り敢えず、様々なピースの組み合わせからみて、深読みと先読みのし過ぎが捗り続けそうな展開が待ち受けていそうだわな。

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とはいえ、Hikaruには強力なバックアップがある。エヴァンゲリオンとキングダムハーツだ。この2つの存在が、今のところあらゆる不安を払拭してくれている。

アニメの主題歌を担当する事によってそれまでより大幅に売上がアップした場合、そのまま"アニソン歌手"になったか如くアニメ主題歌を次々とというパターンは過去に幾つか思い当たるが、ヒカルの場合はそんな風にはなっていない。寧ろ、EVAに関していえば、宇多田ヒカルブランドを取り入れる事によって新劇場版の"メジャー路線"を皆にアピール出来た訳で、すりよってきたのは向こうの方、という事になる。尤も、それは遠くから眺めた時の外型的事実でしかなく、実際は単にヒカルがEVAのファンだったというだけの話ではあるのだが。

作品ごとの判断。アニメかどうか、映画かどうかといった点は関係がない。そうする事によって、すりよっただのもたれかかっただのという言い方は説得力を失っていく。キングダムハーツでの歌とストーリーの抜群の相性を絶賛するレビューやコメントを幾つ見てきたことか。

作品毎の一期一会。それを大切にしてきたから今があるのであって、そういう意味では既定路線というものは存在しない。続編を制作するからといってまたコラボレーションする強い必然性はない。しかし、期待の方は別であり、今更EVA/KHの主題歌を他の誰かが担当するのは、いつも言っているように得策ではないだろう。

ただ、そうする事によって、ヒカルはアニメクラスタやゲームクラスタに一定のファン層を獲得するには至らなかった。個々人のケースは別として、ジャンルに乗っかる事をしなかった為「あれはEVA/KHでの特別なケース」としてみられている。それがまた(ジャンルの中で特別さをアピールするという)狙いでもあるのだが、その意味に於いてヒカル側にはメリットが薄い。テレビ出演と同様に、ヒカルを知る機会が増えたというだけである。

それが、昔からのヒカルにとって心地よいものだったのだし、これからもそうするだろうし、それでいいと思う。人活中だろうがザネッティの元にはオファーが相次いでいたようだし、仕事がある限りどのクラスタに阿る必要はない。

ただ、そのアティテュードのまま国際展開ができるかというと全く別で。日本は中央メディアの影響力が強いが、国によっては人種や宗教、階級や職種などによってクラスタ毎の断絶は甚だしい。そんな中でよくあのファン層を集められたなぁというのがIn The Flesh 2010の感想であり、あの風景が理想でもある。ここでもやっぱり妙案はないのだけれど、アニメやゲームをキッカケにしてあの風景が広がっていくのなら、またどんどんコラボレーションしていけばいいのだ。なんだかんだで茨の道だけどなー。

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