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乾いた哀愁、エドワード・ホッパー

2011-02-23 23:23:13 | アート


アメリカの画家、エドワード・ホッパー。
大きな色面分割で、簡素明快に描かれた絵。
アメリカの広大な大地に広がる果てしない乾いた平原と、そこに生きる人の孤独が、際立つような絵造りだ。
50~60年代のアメリカ映画の雰囲気そのままに、新天地に移り住んだ人の何処か心もとなさが表れている。

子供の頃、やはりお気に入りの学習百科事典の芸術版に、この「モーニング・サン」の絵が載っていた。
朝日を浴びた女性が、ベッドの上でひざを抱え、まっすぐな視線を窓の外に向けている。
現実のスナップショットのようでありながら、なぜか非現実に見える。
明るい日差しが照らし出すものとその影のコントラストが明快すぎて、かえって存在の危うさを暴きだしているせいだ。
彼のどの作品にも、この調子が一定のコードで流れている。
その切ないほどの孤独感は、まだ人生の何も見えていない子供の脳裏に影のように張り付き、忘れることのない作品の一つになった。

それからずっと、晴れて乾いた光が照らす日には、ホッパーの絵が心を過ぎっていくようになった。
特にコンクリート建築が立ち並ぶ街にいて、建物が切り取る青空を見上げるときは、自分がホッパーの絵の登場人物になった錯覚におちいる。

ホッパーの絵が好きなのか?
厳密にはそうではない。
忘れられない作品というだけだ。
どちらにせよ、画家としては名誉なことに違いはあるまい。
観るものに、確実に働きかけられたのだから。

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