rock_et_nothing

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久々のサバラン、「美味礼賛」

2017-05-13 23:03:27 | 食べ物たち
私の好きなケーキのひとつに”サバラン”がある。
初めて食べたのは、今から30年位前か、母と散策に出かけたとある町の駅前の店のものだった。
おそらく店ができて間もないころだった、真っ白な外観で小ぢんまりとした店内のショーケースに、サバランは並んでいた。
ほかのケーキよりはかなり地味な見た目ながら、それだけに完成された美味しさを感じさせるそのケーキは、18世紀の法律家かつ美食家として「美味礼賛」を著述したブリア・サヴァランの名を冠するものである。
ざっくりとした生地に洋酒の効いた甘いシロップがたくさんしみ込ませてあって、カスタードクリームとホイップクリームが生地の中に挿んであった。
ブルーベリーかシロップ付けのブラックチェリーのどちらかをトッピングしてあったような気もするけれど、ともかく味のバランスが絶妙で、一口にしてそのケーキの虜となったのは言うまでもない。
ほかにそれと肩を並べていたのは、レアチーズケーキで、甘すぎず軽い酸味はたぶんレモンがすばらしいアクセントとなっていて、それらを食べに何度となく通ったものだった。
その後、その店は近い場所に大きな店舗を構えるほど盛況となったけれど、ショーケースに並ぶケーキは派手さを増して、私の好むところには無いものとなってしまい、サバランとも縁遠くなったのである。
けれども、今日期せずして、そこのサバランを食べることができた。
どうやら、一日20個限定の開店時に陳列して終わりということになっているらしく、たぶん10年ぶりくらいにサバランを食べられた。
最初のサバランとは違い、数種類のフルーツでデコレーションされていたけれど、85%くらいの感動が得られた。
他の店でもほぼ出会えないサバランだけに、大満足といったところ。
確かに売る側としては、見栄えよく豪華で付加価値を多くしたいところだろうけれど、プロだからこその絶妙な味のバランスで勝負してほしいものもあるというのは、勝手な客のしかも少数派の要望なのだろうか。
いとしのサバランよ、その名の由来通りのシンプルな姿で、完璧なハーモニーを持ち、私の舌を楽しませておくれ!