転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨日は凰稀かなめの宙組が広島に来ていたので、昼公演を観に行った。
演目は、『うたかたの恋』『Amour de 99!!―99年の愛―』
14:00@上野学園ホール(旧・郵便貯金ホール)。

『うたかたの恋』という物語そのものは、突き放してみれば、
命がけの恋愛どころか傍迷惑な心中事件だろうと私は思っているので、
話の中身に関して陶酔したことはこれまで無いのだが、
一方でこの作品には縁があり、観なかったのは83年雪組の初演だけで、
再演の93年星組以降、歴代ルドルフはすべて観てきた(汗)。
話の内容や登場人物の行動に共感はしないものの、
宝塚の舞台としては秀逸な作劇になっていると、観るたびに思うし、
昭和の宝塚歌劇の美点が集約された演目だと感じてもいる。
皇太子ルドルフは、宝塚的「白い王子様」の王道、教科書のような役だ。
軍服及び白フリルブラウスの着こなし、マントの扱い、
劇中劇ハムレットの扮装、ラブシーン、デュエットとしての歌と踊り、
……これらは、二枚目男役ならば避けて通れない必修科目みたいなものだ。

その点で言うと、昨日のかなめ(凰稀かなめ)ちゃんのルドルフは、
私が思っているものとは少し違った。
歌も踊りも悪くないと思うし、スタイルも良くて大変に美しかったが、
男役として観ると、凰稀かなめならばこそ!というほどの極め方は、
私には感じられなかった。
宙大劇場のエドモン・ダンテスのときには、芝居に熱があって良かったし、
雪ベルばらにオスカルで客演したときも、役との一体感が素晴らしかったのに、
今回のルドルフには、ソツなくやっていても何か距離があるように見えた。
もしかして彼女自身、ルドルフにはあまり共感を覚えていないということか。
それとも、まだツアーの初めだからぎこちなさがあるというだけなのだろうか。

一方、出色だったのはともちん(悠未ひろ)のフランツ・ヨゼフで、
歴代でも屈指の、美しさと貫禄を兼ね備えた見事な皇帝陛下だと思った。
これまで皇帝役は、専科や組長クラスの上級生が務めることが多かったが、
長身のうえに実年齢が若く、なおかつ男役度の高いともちんが演じると、
美青年ルドルフを息子に持つ父親として感心するほど似合っていたし、
愛人シュラット夫人(桜音れい)との関係も、とても艶っぽくて良かった。
ラストシーンのカゲソロも、いいなあと思ってあとでプログラムを見たら、
なんとこれまた、歌っていたのはともちんだった。
いやはや、全く立派な男役になったのだなと感慨深いものがあった。

すっしー(寿つかさ)演じるロシェックも実に良かった。
昨日の舞台で一番観客に愛された役は、このロシェックだったかもしれない。
立ち姿に一分の隙もなく、一瞬の姿勢の変化にさえ彼の気持ちが表れていて、
ロシェックの出番が私は楽しみだった。
もともとダンサーなので、今回のショーでもすっしーは大活躍だったが、
彼女が上級生としてお芝居の方面にも抽出をたくさん持っていることを
昨日はロシェックを通じて随所で感じることができた。

後半のショー『Amour de 99!!―99年の愛―』は予想外に(殴)楽しかった。
宝塚歌劇99年の歩みを振り返り、代表的な5人の先生方の作品から、
主題歌や名場面などを選んでオムニバス形式で盛り込んだショーなのだが、
大劇場のときは、その先生方を紹介し業績を振り返る台詞があり、
ステージのスクリーンに往年の舞台写真が映されたりしていて、
私にはそれがかえってショーの流れを悪くしているように感じられ、
あまり良い印象でなかった。
ところが今回は旅公演という都合上、そのような演出はなくなっており、
そのことがショー全体のためにはかえって良かった(汗)。
私の思った通り、過去の名場面をたたみかけるように展開することで、
途中での失速がなくなり、ショーとして断然、魅力が増した。

目玉となるのがかなめちゃんの『パイナップルの女王』であることは
100人中99人くらいの方が同意して下さるのではないだろうか(笑)。
あれはもう、文字通りまばゆいばかりの美しさで、
大劇場でも知っていたが、また観られて眼福だった。
普段の男役姿とはまた違い、本人のスターとしての輝きだけでなく、
舞台人としての立ち姿、ボディラインそのものに、圧倒的な魅力があった。
かなめちゃんは宝塚を志す前に、モデルになりたいと考えていたそうで、
身体全体を使った表現者としての彼女には、やはり傑出したものがあると思った。
この場面はほかの生徒さんたちの華やかな客席降りもあるので、
一瞬、ステージ中央のかなめちゃんから視線をそらすことになってしまい、
一人分の目では全部観きれず、あともう二組ぐらい目が欲しいと思った(^_^;。

それと、全国ツアーの変更点として、第7場の横沢先生の場面に登場した
『ラ・ラ・フローラ』(84年)は、なーちゃんファンとして懐かしいものがあり
(大劇場公演時の第7場は『ボン・バランス』(75年))、
更に、第14場の小原弘稔先生の最初のシーンに
『あなたはフラッシュのよう』(91年)の歌が使用されたのもとても嬉しかった
(同じく大劇場では『愛のクレッシェンド』(81年)だった)。
ここから次の『パッシィの館』(86年)につながる流れは、私にとっては、
さながら、なーちゃん(大浦みずき)へのオマージュみたいなものだった。
ともちん、きたろう(緒月遠麻)くん、まなと(朝夏まなと)くんが、
なーちゃんの歌を、なーちゃんの踊りを、こうして再現してくれて、
往年のファンとしての私は、こんな幸せなことは無いと思った。
いろいろあったが(爆)、宝塚をずっと観続けてきたお蔭で、
今になってこんな良いこともあったんだなあ、と……。

ところで、昨日の公演はPAの問題だと思うが音がやたらと大きかった。
席にもよるのかもしれないが、大したスピーカーでもなさそうなのに
私のところにはパーカッションや管楽器などの音が響きすぎて困った。
大劇場や東宝の生オーケストラと違い、地方公演では録音が使用されるのだが、
昨日に限って音量が大きすぎて、生歌の声や歌詞が聴き取りにくかったし、
客席が拍手や手拍子をしていても、場面によってはほとんど響かなかった。
昔からずっと、この会場では幾度も宝塚の広島公演が行われていて、
私も宝塚の全国ツアーというと、ここで観た回数が一番多いのだが、
あれほどウルサい音響というのは初めて経験した。
バンドのライブじゃないのだから、
がつんがつん来れば迫力があっていい、というものではないよ(--#)。

終わって、劇場を出ながら私の背後では見知らぬ女性たちが
「○ちゃんこれから夜の部も観るんだって!」
「えええ~~、なんで!?同じ中身じゃろ!?」
という会話をしていた。
いや、出演者のファンなら観るって普通。夜観たら出待ちもよ。
公演さえあるのなら明日も観るね。
このあと福岡くらいには着いて行くんと違います?日帰りできるよ…?

Trackback ( 0 )