わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶磁器の絵付け(チャイナペイント) 1

2010-01-18 22:48:10 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
上絵付けの方法に、チャイナペイント(又はポーセリンペインティング)が、有ります。

 「チャイナ」も、「ポーセリン」も、磁器を意味します。(英語と、イタリア語)

・ 白い磁器に、顔料で上絵付けして、専用の窯で、焼成(約800℃)し、定着させたものです。

・ 欧米などでは、以前から、趣味として、楽しんでいましたが、我が国でも、ここ10数年前より、

  知られる様に、成りました。

  近年、各地に、上絵付けを教える、「チャイナペイント教室」が、多数あります。
 
・ 完成された(市販されている)、白磁の皿や、カップ、花瓶などに、好きな絵を描き、飾りや、

  贈り物として、作品作りを、楽しんでいる方も、多くなりました。 

  これらの作品は、「ポーセリン、アート」とも、呼ばれています。

・ 技術的には、さほど難しくは、無いようで、絵心のない方も、十分楽しむ事が、出来ます。

・ 絵付けには、「ヨーロピアン、スタイル」と、「アメリカン、スタイル」の二つの技法が、有ります。 

 ① ヨーロピアンスタイルは、マイセンや、セーブル等、ヨーロッパ各地の名窯で、景徳鎮や、

   伊万里焼等の、染付や色絵の、模倣を経て、ヨーロッパ的な技法に、発展した物です。

   それ故、日本的な要素も大きく、影響しています。

  (1910年代にも“ジャポニズム”が流行し、日本的絵柄の磁器が、欧米に輸出されいます。)

  ) モチーフとして、バラや、図案化された模様が、代表な絵柄です。

    規則的な花模様や、伝統的模様等に、華麗な金装飾が美しく、丁寧に、描かれています。

  ) 一般に丸筆を用い、白磁を生かして、様式化された植物や、文様を緻密に、繊細に描て、

    仕上げる描法が、特徴的です。

  ) 絵を表現する方法は、筆によるストロークや、絵の具の濃淡です。

     枠取りした中に、ぬり絵的に描いていく簡単な方法もあります。

  ) 豪華な作品を作る場合は、金、プラチナ、砂、ガラスフリット、盛り上げ剤を使う特殊な、

     装飾テクニックがあります。

 ② アメリカンスタイルは、20世紀初頭から、アメリカ、オーストラリア、ブラジル等の愛好家が

   より絵画的に、自由な発想で始めた、技法と言われています。

  ) 平筆を使って、ダイナミック描く、方法や、ソフトで絵画的に、幻想的なタッチが魅力です。

  ) 水彩画のように、モチーフの、背景まで描き込んで、自然と一体化した、絵画のような作品に

     仕上げる、独特の描写方に、特徴があります。

チャイナペイントの話は、次回に続きます。

チャイナペイント
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陶磁器の絵付け (シンクイン、イングレーズ)

2010-01-17 21:53:41 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
陶磁器の、上絵付けの方法に、シンクイン(浸透)又は、イングレーズと呼ばれる、方法が有ります。

・ イングレーズ用の、絵具を用いて描いた磁器を、高温焼成(1250℃前後)する事によって、釉の中に、

  絵の具を、溶け込せ、磁器表面の、ガラス層に沈める、絵付け技法です。

  又、専用のインク(顔料)で、印刷した、転写紙を使い、絵付けをする事も、可能です。

・ 開発当初は、ブルー(瑠璃色)を中心とした、限られた色しか、有りませんでしたが、近年研究が進み、

  色の幅が、広がってきています。

・ イングレーズ用の色は、現在、以下の様に、豊富に有り、市販されています。 

   レッド、オレンジ、イエロー、グリーン、ライラック、ピンク、ホワイト、オーカー、ブラウン、グレー、

   ブルー、ブラック、コバルトブルー等が、有ります。

1)  イングレーズの特徴

 ① 絵の具が、キズや磨耗によって、剥げ落ちない事です。色は、永久に退色しません。

   酸性、アルカリ性の洗剤や、溶剤にも強く、強度があります。

   環境ホルモンや、カドムウム、鉛など、有害な物質も流出しません。

 ② この特性から、国内の給食や、幼児用の食器の、加飾方法として、採用されています。

 ③ オーブン、電子レンジ、フリーザーでの使用が可能です。

 ④ 絵の具が、ガラス質の釉で、覆われる為、表面の光沢が、大幅に増え、美しいデザインが、

   一層引き立つ様になります。
 
2) 絵の具の使用方法

 ① 一般の、上絵付けの方法と同じ、筆で絵付けをします。

   イングレーズ専用の、無鉛絵具を、溶剤の「水性メジュウム」、膠などで、溶き着色します。

   転写紙の場合にも、下絵付けの転写紙と、同じように、扱います。

 ② イングレーズ同士の、混色も可能ですが、単色で、使用した方が、綺麗な色が、出ます。

   但し、上絵具とは、混色できません。 重ね塗りも、可能ですが、同色系統に、限ります。

 ③ 1,050~1,250℃前後の温度で、焼成します。(一般の上絵付けは、800℃程度です)

   釉の中に、絵の具が入り込み、ガラスの中に、閉じ込められ、光沢が出ます。

   但し、焼成前と、焼成後では、絵具の色が、全く異なる色もあります。

   (絵の具のメカーは、推奨焼成温度を、指定している場合が、多いですので、その指示に、従います)
 
 ④ ボーンチャイナは、1000~1150℃で、焼成します。

   ボーンチャイナの場合、鮮やかな色や、艶のある絵柄を、比較的自由に、表現出来る反面、

   低い温度ですので、表面が柔らかく、白磁器に比べ、ナイフやフォーク等の、金属食器などで、

   傷つき易い、短所を持っています。

 ⑤ 焼成は、急昇温、急冷却が、良いと言われ、電気炉(窯)が向いています。


その他の、上絵付け方法

 ・ 現在流行している、上絵付けの技法に、「西洋陶磁器絵付け」が、有ります。

   近年、日本でも「ホビーペインター」として、趣味の絵付けを、楽しむ方が増えいます。

 ・ 即ち、「チャイナペイント」、「ポーセリンペインティング」等と、呼ばれるものです。

  (「チャイナ」と「ポーセリン」は、両方とも、陶磁器を指す言葉です。)

 チャイナペイントに付いては、次回に述べます。

  シンクイン    イングレーズ
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陶磁器の絵付け (釉裏金彩)

2010-01-15 22:55:25 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
釉裏金彩(ゆうり、きんさい)

 金液ではなく、金箔を使った、装飾方法に、釉裏金彩と言う、技法が有ります。

 ① 厚さの異なった金箔を、切り取って、模様をつくり、その上から、透明度の高い釉薬を、掛けて

   焼き上げる方法で、絵の具を使って筆で描く、金襴手とは、大きく異なります。

 ② 釉裏金彩の技法は、昭和30年代、竹田有恒(たけだ、ありつね、1896~1976年)氏によって、

   生み出された技法です。

   その後、石川県小松市高堂町の、錦山窯の三代目、吉田美統(みのり)氏により、30年以上に渡り、

   釉裏金彩の研究が、続けられます。

   釉裏金彩は、九谷焼と、金箔の技術を融合して出来た、加賀地方ならではの、独特の技法です。

   吉田美統氏の、釉裏金彩の技法は、平成13年に、国の無形文化財(人間国宝)に、認定されます。

 ③ 釉裏金彩は、釉薬の下に、金箔を置くことで、金箔が透明の釉薬によって、柔らか味が出ます。

   又、従来の金彩は、本焼き後に、金を塗るので、使ううちに、剥がれるという、欠点がありました。

   釉裏金彩は、釉を金箔の上に施すので、金箔が剥がれるのを、防ぐ役割もあります。

 ④ 吉田氏の釉裏金彩では、2種類の厚さの金箔が、使われています。

   薄い金箔(薄箔)と、厚い金箔(厚箔)を、場面ごとに使い分けることで、立体感が出ます。
   
   薄箔は、出来上がると、釉に溶け込む様に、薄く透けて、見える様になります。

   一方、厚箔は金箔が、はっきりと現れれます。

 ⑤ 釉裏金彩は、多くの作業工程を要し、難しい作業と、手間が掛かります。

   窯焚も、5回は必要で、本焼きした後、漆を塗り、金箔を模様通りに、切り取り、

   漆の乾き具合を見て、丁寧に貼っていきます。

   本焼きした釉面は、金箔の背景色になり、金箔の表情も、大きく変わります。

  ⑥ 吉田氏の、釉裏金彩の、作業工程の概要

   ) 作品(磁器)を、成形し、素焼、本焼の2回焼くと、真っ白な磁器が、出来上がります。

   ) 白い磁器全面に、釉(上絵の具)を掛けます。吉田氏の作品にはグレー、紫、黄、緑、赤等の、

      背景の色によって、金箔の雰囲気が、異なって表現されます。

   ) 3回目の窯入れで、背景色を器に、焼き付けます。

   ) トレーシングペーパーにつけた、デザインを、ペーパーの上から、なぞり器に移します。

      器に付けた、下絵に合わせて、金箔を、鋏で一枚ずつ、切り取ります。
   
      細かいデザインでは、100枚以上の金箔を、用いる事もあります。

   ) 金箔の型が、全て切り揃ったら、一枚づつ、のりで貼り付けます。

      下絵の上に、金箔をピンセットで、置いていきます。

      薄い金箔に、皺がよったり、重なったりし無い様にします。

   ) 金箔を載せた後、軽く真綿で叩いて、金箔を器の面に、ぴったり合う様に、伸ばします。

   ) 金箔を貼り終えると、低温で金箔を焼き付けます。

      この4度目の窯入れで、器の表面にある、不純物を取り除く、効果もあります。

   ) 最後に、透明釉を掛けます。筆で丁寧に金箔の上から、器全体に掛けます。

   ) 5回目の焼成で、完成です。

      薄箔、厚箔が、はっきりと現れ、作品自体に、金箔によるコントラストが、できます。

  尚、釉裏金彩の技法は、手間隙の掛かる、手作業です。 現在この技法を使い、活躍している方に、

  佐賀県嬉野町の、小野次郎氏がいます。

 ・ 吉田美統氏や、小野次郎氏の作品は、インターネット上でも、見る事が出来ます。

   興味の有る方は、吉田美統、又は、小野次郎、釉裏金彩で、検索して下さい。


 以下次回に続きます。

 釉裏金彩 

 
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陶磁器の絵付け (金彩、銀彩) 2

2010-01-14 21:43:32 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
陶磁器の金彩、銀彩について、話を進めます。

 ) 金液を塗る方法

    金液や、銀液(白金液、パラジウム液)は、市販さている物を、使う事が、ほとんどだと、思います

    メーカーによって、色々な液が有り、金の含有量にも、差が有ります。   

  a) 絵付けする前に、作品に水、油、ホコリ等が、付着していないか、確認してます。

    これらは、焼成後のピンホールや、発色不良の、原因になります。

  b) 希釈剤は、絵付けの方法に合わせて、調整します。

    広い範囲を塗る時や、筆むらが、気になる時は、金油等の、遅乾性の油を、少量(10%以下)

    加えます。細い線等、金液が、広がらない様に、したい時は、「ベンゾール」等の、速乾性の油を

    少し(10%以下)加えます。

  c) 本焼きした、陶磁器の釉面に、絵具(金液)を水で、溶かしただけでは、釉面が弾いて、

    描きにくい事があります。

    その時は、アルコール(薬局で市販)などで、釉面の油を拭き取ると、スムーズに描けます

    (又、「ゼラチン」を水で溶き、筆などで、釉面に塗り、上絵付けをすると、弾かなくなります。)

  d) 金液を、容器など(金チョク、金液を小出しして、入れるガラス容器)に、少量取り、原液又は、

    適量の金油を、溶剤で希釈して、筆などで塗ります。

    金液塗布後、指で触っても、付かなくなる程度まで、乾燥させてから、焼成します。

 ) 金液の焼成時の注意

  a) 上絵付けや、金彩、銀彩は、素焼と同じ位の、温度で焼成しますが、素焼と一緒に焼く事は、

    出来ません。

    素焼では、大量の水蒸気が、発生します。この蒸気が、絵付けに、悪い影響を、与えます。

    絵付け専用の窯(錦窯)であっても、使用時には、窯道具類も、十分乾燥させて置きます。

  b) 窯は、理想的には、電気の窯が、良いと言われています。

    酸化焼成で有る事、炎が出ない為です。一般に、酸化焼成で、冷却速度も、やや速い方が、

    良い色が出ると、言われています。

    但し、金マットではない、金液を塗り、還元焼成すると、マットに成ります。

  c) 炎の出る窯では、炎が直接当らない場所か、「サヤ」などに入れて、焼きます。

    炎に当ると、釉面が、汚く成ります。   

  d) 金液に含まられる、接着剤や溶剤から、燃焼ガスが、発生する為、ガスが 発生しなくなる温度

    (400~450℃)まで、ゆっくり(100℃/時間)温度上昇させ、窯の扉も、少し開け、ガスを、

    逃がします。

  e) ガスの発生が、止まったら、窯の扉を閉め、各種素地に、適した温度まで上げ、窯の中の温度が

    均一に成るようにします。

    設定温度に成ったら、5~10分程度保持し、電源を切り(火を止め)、自然冷却します。

    (窯の中が、覗ける場合には、絵の具が、熔けて光る事を、確認します。)

  f) 素材に対する、標準的な焼成の適温は、次の通りです。

     磁器・・750~850℃、 半磁器・・600~650℃、 陶器・・650~750℃、

    焼成温度が、高過ぎると、金属皮膜が、損なわれ、低過ぎると、付着力が、不十分で、

    取れ易くなります。

  g) 銀液、白金液、パラジウム液の、焼成温度は、一般的には、750℃です。

    マット金、艶消しパラジウムは、800℃です。

    銀液や、マット金などは、焼成後に、「ジルコンサンド」等で磨く事により、金や銀特有の

    落ち着いた色を、呈します。

    尚、銀は、しだいに酸化して、変色し黒くなりますので、その際は、再度磨します。

  以下次回に続きます。
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陶磁器の絵付け (金彩、銀彩) 1

2010-01-13 22:31:01 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
 陶磁器への、金彩、銀彩について、述べます。

  金を使って、装飾する方法に、以下の方法が、有ります。  

  ① 金襴手(きんらんで)

    金液(きんえき)を使い、筆などで、直接本焼きした、釉面に塗り、低温で、焼成します。

    特に、色絵の磁器に、金彩を施したものをいい、さらに、中国明代のものを、

    指して、言うことも多いです。

    また、赤絵の上に、金彩が施され、焼き付けたものを、赤絵金襴手と、言います。

    金の扱い方は、多様で、金箔を表面に、直接のせて、文様をかたどる技法も、金襴手と、
 
    呼んでいます。 

  ② 釉裏金彩(ゆうり、きんさい)

    釉裏金彩とは、厚さの異なった金箔を、切り取って、陶磁器の表面に載せ、模様をつくり、

    その上から、透明度の高い釉薬を、掛けて、焼き上げたものです。

   ・ 詳細は、後で述べます。

 ③ 金と、銀について

  ) 金色に、加飾されている金は、本物の金が使用されています。  

    金を、筆などで加飾するためには、固体である金を、液状化させる、必要があります。

    そこで、金(15%~40%)に、添加物を加え、金の液(金液、水金、みずきん)を作ります。

    (水金は、1830年、ドイツ、マイセンで発明され、1884年、ドイツ、ビエンナで、

     金と「ロジウム」の合金を使い、伸びのよい金液が、発明されます。)

    この液状化した金を、原液のまま、または、金油、テレピン油などで、希釈し、筆などを用いて

    加飾して、焼成すると、添加した、不純物(有機物)の殆どは、熱によって失われます。

    残った金の中には、若干の不純物しか残らず、ほぼ純金に近い、金(18金~24金)が、

    0.1ミクロン以下(マット金では0.1~0.3ミクロン)の、薄さで付着し、金属皮膜を形成します。

    金液は、光沢の有るものと、艶消し(マット)になる物が、有ります。
  
    マット金液は、金液に純金粉末を、加える事により、マット状に、焼き上がる様に、

    調整された物です。

 ) 銀は金と違い、空気に触れていると、黒く変色してしまいます。

    それ故、一般的には、食器の装飾に、銀を使うことは、あまり、ありません。

    銀色を表現するのに、金を使用します。金にパラジウムと、微量のプラチナを、加えること

    によって、艶有りの銀色を、表現します。

    又、銀液は、油液中に、銀粉末を、混合した物も有ります。
 
 ④ 金液を塗る方法

以下次回に続きます。

 金彩、銀彩
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陶磁器の絵付け (上絵付け) 1

2010-01-11 22:30:21 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
上絵付とは、本焼した釉面上に、上絵具で彩色(描画、吹き付け、転写紙)し、750~850℃程度の

温度で、焼き付けたものです。

・ 焼成温度が、比較的低いので、顔料の制約が少なく、多彩な色を使い、鮮やかで、

  自由な表現ができます。

  しかし、釉薬の上に、顔料がある為、酸、アルカリなどで、侵されたり、傷付き、剥がたりすることも、

  多いです。

・ 9~10世紀、中国の晩唐・五代の頃に現れ、元代後期の14世紀初頭の、景徳鎮で、本格的に、

  作られる様になります。

  日本では、江戸時代初期の、伊万里焼に始まり、柿右衛門、鍋島と高度化し、各地に広がりました。
 
  主に、磁器に絵付けしますが(磁胎)、仁清(江戸初期)などは、陶器に絵付けを、しています(陶胎)

・ 「色絵」の言葉が、広く用いられる様になるのは、戦後のことで、1955年、重要無形文化財に、

  「色絵磁器」が、指定されたことが、大きいです。

1) 上絵の具について

  上絵の具は、焼成時の温度でも、安定した顔料(着色剤)と、釉の上に、固定させるフラックス

  (熔剤、融剤)からできています。

  焼き付けられた顔料からは、鉛やカドミウムなどの、重金属が溶け出すことが、あってはなりませんし、

  顔料が熱、洗剤、また酸・アルカリに侵されてはなりません。

 ① 顔料と成る、着色材には、以下の様な、金属類が有ります。

    酸化コバルトは、 青色、黒色 、青色、緑色 。 酸化マンガン は、紫色、青色、黒色 。

   酸化銅 は、緑色、赤色(辰砂)。 酸化ウラニウムは、 朱色、黄色、灰色、 黒色 。

  a) 但し、現在の絵の具は、化学薬品を使っている為、色の面白さに、欠けているそうです。

  b) 古い時代の、絵の具には、不純物の多い金属や、酸化物が混じり、面白味のある、

    色が出ていると、言われています。

 ②  熔剤(フラックス)について

  a) 作品に絵の具を載せる場合、接着(粘着)剤として、植物油、砂糖、糖密などに溶いて、

    使用する場合も有ります。

    又、油絵に使う、テレピン油、リンシード油も、良好に使えます。

  b) 溶剤は、それ自体で、色を溶かし込む、働きをします。

    溶剤として、鉛丹、珪砂、硼酸、硼砂の混合物を、炭酸ソーダや、炭酸カリ、

    錫灰(金属錫と、鉛の混合物)などを、使います。 何れも、ガラス質に成る、物質です。

     尚、絵の具の用語で、白玉は、溶剤、フリットで、日野岡は、珪砂、唐の土は、

     鉛白(塩基性炭酸鉛)の事です。

  c) 顔料が、同じでも、溶剤の種類によって、発色する色が微妙に、異なります。

 ③  溶剤と顔料の割合

  a) 光沢のある場合、 溶剤 2~4: 顔料 1

  b) 艶消しの場合、  溶剤 1: 顔料 1

    の混合割合ですが、焼成温度、溶剤の熔融温度によって、変化します。

2) 金彩、銀彩について
 
以下次回に続きます。

 上絵付け
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陶磁器の絵付け 6(下絵付)

2010-01-09 22:41:46 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
今まで、手作業による、絵付けの方法を、述べて来ましたが、当然、産業用の絵付けの方法も有ります。

素地に、絵の具で、直接印刷する、「パッド印刷」や、「スクリーン印刷」など、量産に使われる、技法です。

3) パッド印刷: 「 シリコン、パッド」を用い、絵柄を、直接印刷します 。
     
   ① ハンコを押すような、印刷方法で、版から、インキ(絵柄)を、商品に移し変える印刷方法です。

   ② 他の印刷法では困難な、丸みある物や、凹凸のある面や、凹みの内側でも、安易に

    印刷する事が出来、形を選びません。又陶磁器に限らず、ガラスや、プラスチックにも、印刷可能で

    印刷スピードも、かなり高速です。

   ③ 作業は、完全に、機械化されています。

     絵の具の調合、機械の調整などでは、微妙な感覚が、要求されます。

   ④ バット印刷について、詳細は省略しますが、概略は以下の様に、成ります。

    ) 色々な形をした、シリコンゴム製の、バットと言う転写物を、使います。

      パットは、柔軟性に富み、陶磁器などの、印刷物の形に、確実にフィットします。

    ) 樹脂や、鋼板に絵柄をエッチングし、溝を掘り、凹版を造ります。

    ) この凹版に、絵の具(インク)を、流し込みます。

    ) パットを、凹版に押し付け、インクを拾います。次にパットを、印刷物に移動し、

      パットを押し付けると、印刷物の形状に、変形しながら、密着し、転写が出来ます。

  「下絵の技法」についての、話は以上で終わりに致します。

4) 下絵付けの釉薬について

  下絵付けした場合、一般には、透明釉を塗ります。

  しかし、透明釉以外にも、志野釉(絵志野)、黄瀬戸釉、唐津釉(絵唐津)、織部釉などを、

  塗る事も珍しく有りません。これらの絵の具は、酸化鉄(鬼板など)が多いです。

  (尚、黄瀬戸の場合、タンパン(硫酸銅の粉末)を水に溶き、緑色を出す事も、多いです。

   タンパンは、絵の具とは、見なされません。)

  釉の種類によって、当然、絵の具の発色が、異なりますが、完全に絵が隠れない、釉であるならば、

  どんな釉を使っても、悪い訳ではありません。
 
以上にて、下絵付けの話を終わり、次回より、上絵付けの話をしたいと、思います。

パット印刷(量産用)
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陶磁器の絵付け 5(下絵付)

2010-01-08 22:07:25 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
和紙染めの、話を続けます。

  b) 和紙と絵の具

    和紙染めで重要なのは、紙(和紙)の種類と、絵の具の粒子の細かさです。

   イ) 紙ならば、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、障子紙、毛筆用紙、

     手漉き和紙などが有り、どの紙が最適か、迷われた事と、思います。

   ロ) 現代の紙は、表面を滑らかにする為、手触りを良くする為、インクが乗り易くする為、

     水に強くする為、その他の理由で、色々の化学的添加物が、入ています。
 
     その為、水を吸い込む(呼吸する)性質が、犠牲になっています。

     即ち、余り加工されていない紙が、向いています。

     それは、必ずしも和紙である必要は、有りません。水(絵の具)を良く吸収する紙です。   

   ハ) 美しい和紙染めを、造るには、良い紙を、見つける事ともいえます。

     良い紙の条件は、吸水性があり、絵の具を、表から裏側へ、均一に通す事です。

     繊維が密な物(高級品)ではなく、粗い方(安物)が良いようです。

     又、何度も同じ紙を、使う場合いも多いので、水に対する強度も、ある程度必要です。   

     美濃紙や、手漉き和紙、障子紙などが、水の吸い込みが良いようです。

   ニ)  紙を一度、水に漬け、乾燥させてから使うと、吸水性が増すとも言われています。

   ホ)  絵の具が、紙を通り易くする為には、絵の具の粒子が細かい事と、濃度です。

     乳鉢で丁寧に磨り、粒子を細かくします。どの絵の具も、和紙染めが出来る訳ではありません。

     一般的には、呉須が多い様です。

  c)  和紙染めの技法

   イ) 和紙染めは、紙の形通りに、絵付けができます。

      和紙から、はみだす事は、ほとんど有りません。

   ロ) 紙の隅々まで、均一の濃度で、絵の具を、染込ませる事も出来るし、濃淡を付けて、

      染める事も出来ます。

   ハ) 紙を千切って、毛羽立たせ、和紙の雰囲気を出す事も、可能です。

   ニ) 紙を重ねると、重ねた部分が、濃くなり、コントラストが出せます。

   ホ) 素焼した素地は、水の吸収性が大きく、絵の具が、紙全体を、染めない内に、

      水切れに成り易いです。途中で液を足すと、濃淡が出て、均一に成りません。
  
      出来るだけ、絵の具の持ちの良い筆(だみ筆など)を、使います。

   ヘ) 逆に濃淡を付けたい時や、「ぼかし」を付けたい時は、水を上手に使い、筆を濡らしながら、

      描いていきます。

    ト) 和紙全体を、絵の具の溶液の中に入れ、全体を濡らし、滴が落ちない様になったら、

       素地に載せ、更に上から、筆で絵の具を、補給する方法も、有ります。

       どうしても、絵の具が、素地に載らない場合には、試す価値は、あると思います。

以下次回に続きます。

 和紙染めの技法

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陶磁器の絵付け 4(下絵付)

2010-01-06 23:09:40 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
④ 「絵付けの技法 」の話を続けます。

 ) 転写 : 絵柄を印刷したシート(転写紙)を、水で素地に貼り付け、絵柄のみを、転写し、

    施釉後、焼成する方法 です。

  ・ 色々の模様や、色彩の、転写紙が市販されています。

  ・ 取り扱いも簡単で、失敗も少なく、綺麗な模様を、付ける事が、可能です。

    (勿論、自分のオリジナルの模様を、印刷してくれる所も、有ります。)

  ・ 同じ模様の数物や、細かい模様、手で描くには、不可能な模様などに、使うと、便利です。

  a)  転写紙の使い方、

   イ)  転写紙を選び、鋏(はさみ)で、必要な大きさに切ります。

   ロ) 切った転写紙を、素焼した作品に当て、位置を決めます。

    ・ 注意: 印刷の濃い方を、素焼面に押し当てます。

   ハ) 緩く絞った、スポンジで、紙を押すように、全体を濡らします。

   ニ) 水気が無くなたったら、紙の端を、少しめくり、転写が出来ているかを、確認します。

   ホ) 転写が出来ていれば、ゆっくり紙を、剥がします。

      不完全な場合には、めくった端を、元に戻し、更に水を付けて、濡らします。

   尚、素地表面が粗い場合や、表面が凸凹した物には、上手に転写できません。

  b) 転写紙の取り扱いの注意

   イ) 転写紙は、貼り付ける直前までは、絶対、濡らさないで下さい。濡れた手で、触らない事です。

      濡らすと、絵柄が、紙から剥がれたり、位置がずれたりします。

   ロ) 一度貼った転写部分に、重ねて、転写紙で転写する事は、可能ですが、慎重に作業しないと、

      失敗します。

   ハ) 転写後の紙は、必ず、取り除いてください。取り忘れると、その部分に、釉が掛かりません。


 ) 和紙染め

    和紙染めとは、切ったり、千切ったりした紙(和紙)を、素焼した素地に載せ、上側から、

    呉須などを、紙を透して、下の素地に、紙の形を、色付けする方法です。

  a) 和紙染めの方法

   イ) 絵柄を考える。

      最初は、細かい模様を避け、単純な形などで、ある程度面積のある、絵柄が良いです。
                  
   ロ) 絵柄を、和紙に書き、はさみで切ったり、手で千切ったりします。

      和紙を千切ると、周囲が毛羽たち、これがそのまま、表現されます。

   ハ) 素焼した器に、切った和紙を載せます。
  
   ニ) 筆で絵具を和紙に、染み込ませます。

      絵の具が、紙を透して、素地に移ります。

   ホ) 和紙を、剥がします。
    
      この時、紙は素地に、吸い付いています。ピンセットを使って、慎重に剥がします。 
            
   ヘ) 素地に十分、絵の具が、乗っていない場合には、筆で書き足たり。逆にはみ出した場合は、

     針で掻き落として、修正します。

   尚、 切った和紙を、水に付けた後、素地に貼り付け、やや乾燥後、外から絵の具を付ける方法が、

      有ります、この方が、途中で紙が動くのを、防ぐ効果が、あります。

 「和紙染め」の話は、次回に続きます。

 転写紙の利用

 和紙染め
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陶磁器の絵付け 3(下絵付)

2010-01-05 20:47:58 | 作品の装飾と陶磁器の絵付け
引き続き、下絵付けの話を、致します。

 ③ 下絵の具の使い方

  ) 粉末状の絵の具

    粉末の絵の具は、100g単位で、市販されていて、一番経済的です。

    (弁柄などの酸化鉄や、鬼板は、1kg単位で、販売されています)

   a) この絵の具を、乳鉢に入れ、水を加えて、乳棒ですり潰し、更に粒子を細かくします。 

     又、水の替わりに、お茶を入れ、お茶の「タンニン」で、素地との接着を、強くする場合も

     有ります。特に呉須類は、発色も良くなると、言われています。

   b) 絵の具を濃く塗ると、本焼きで、上の釉を、弾く場合が有ります。

     これを予防する為に、20%程度の釉(上に掛ける釉と同じ)を混ぜて、撹拌すると、良いです。

    ・ 絵の具は、若干濃い目に塗った方が、綺麗に発色します。

      但し、鬼板の場合には、濃いと黒くなり、薄くなるに従い、茶色に変化します。

      薄すぎると、色が飛び、発色しません。

   c) 絵の具を、使用しない場合には、埃(ほこり)が入らない様に、乳鉢に蓋をして置きます。

     埃が入ると、絵の具に「むら」が出ると共に、釉を弾く事に成ります。

 ) チューブ入り絵の具

   a) 水彩絵の具の様に、直ぐに、使える状態になっています。

     チューブより、器(絵皿など)に押し出し、水を加えて、筆などで練り、濃度を、

     一定にします。加える水の量で、濃度を調節します。

   b) 絵の具が、チューブの中で、固まり、取り出せない場合には、チューブを破り、塊を取り出し

     細かく砕いてから、水を加えて、良く練りますと、問題なく使えます。

 ) クレパスの場合

  a) 棒状に成った、絵の具で、直接素地に、クレヨンの様に、描く事が出来ます。

    絵の具同士が、混ざり難いですので、重ね塗りをしても、余り問題に成りません。

    但し、他の絵の具よりも、薄くなり勝ちで、描いた線が出て、面で表現し難いです。

    どちらかと言うと、「あっさり」した感じに、仕上がります。
 
  b) 棒状の物を、砕いて水に溶かし、筆で塗る事も、可能です。

 ④ 絵付けの技法

   絵を描く前にする作業

  a) 素焼した作品の、汚れや「ほこり」を、取り除いて置きます。
   
    即ち、削りカスなどが、付着している時には、「紙ヤスリ」を使って、削り取り、その後

    きつく絞った、スポンジで、水拭きして、表面を綺麗にしておきます。

  b) 素地に絵柄や線を、下書きして置きます。

    即ち、墨、赤インク、鉛筆(HB程度の濃さ)などで、決めておいた、絵柄などの、あたりを

    付けて置きます。勿論、下書きせずに、直に描いても問題ありません。

   ・ 間違えた場合には、一度描いた下書きは、消さずに、その上から、書き足してください。

   ・ 下書きの線は、本焼きで燃焼し、跡が残りません。
  
  c) 筆(刷毛)、絵の具の用意、必要な絵の具を決め、塗る順序も、考えて置きます。

    模様によっては、時間が幾らあっても、足りない状態に、成り易いので、前準備は、

    早めにしておきます。乳鉢に入った絵の具は、頻繁に乳棒を、動かし、顔料の沈殿による、
    
    色の濃淡が出るのを、防いで下さい。(顔料は金属質が多く、直ぐに沈殿します)

    筆も、色の数だけ、用意しておくと、一々洗う手間が省けます。


  では、 絵付けの技法の、代表的な物について、お話致します。 

  ) 素描(そびょう) : 筆を用い、手で直接絵を描きます。
  
   a) 筆の種類を選び、絵の具で、紙などに線を書き、線の太さと、濃淡を確認します。

   b) 絵の具の濃淡は、3段階程度にし、薄い(淡い)絵の具から、濃い絵の具へと、使っていきます。

     薄い絵の具を、数回重ね塗りして、濃くする方法も有ります。

   c) 絵の具を塗った所は、手で触らない様にします。触ると、絵の具が剥がれ易い事と、
     
     指に絵の具が着き、その手で、素地を触ると、そこに、絵の具が転写してしまいます。

     それ故、作品全体に、絵付けする場合には、作品を持つ位置を、考えながら、絵付けをします。
 
     (特に、呉須は、どんなに薄くしても、発色し易いので注意)   

  ) 塗り: 水で溶いた、顔料(絵の具)を刷毛で塗ります

   a) 広い面積を、一度に塗る場合、筆より刷毛が、適します。

   b) 紙などに比べ、吸水性が大きく、線が「かすれ」易いです。

     そんな場合には、CMC(化学のり)や、透明釉を、少量添加すると、若干改良されます。

     又、濃度の薄い方が、線が伸びますので、薄い絵の具を、重ね塗りすることも、効果があります。 

   尚、 「絵は、窯が書く」と、言う言葉が有ります。

     窯出しで、初めてその良し悪しが、解かるもので、描いている最中は、余り心配しない事です。   

     伸び伸びとした線が、出る様にする事が、「絵付けのコツ」とも言えます。

  ) 吹き付け(吹く墨): 霧吹き、スプレーガンを用いて、絵の具を吹き付けます。

    又は、絵の具を付けた、硬めのブラシで、金網を擦り、絵の具を弾く、「ブラッシング」の

    やり方も有ります。

   a) 紙などに、模様を切り抜き、素地に貼り付け、その上から、霧を吹いたり、ブラッシング後、

     紙を剥がすと、紙をおいた部分に、絵の具が掛からず、周りに、滴が飛び、模様が

     浮き出てきます。

) 転写: 転写紙を使う方法で、同じ模様の数物を、絵付けする時や、細かい模様など、

     手書きでは、大変な時に使うと、便利です。

以下次回に続きます。

 絵付けの技法
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