わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

質問 27 織部釉の変色に付いて。

2016-12-05 21:57:38 | 質問、問い合わせ、相談事
高橋圭太郎様 より以下の御質問を頂ました。

小生、タイルメーカー勤務の52歳です。昨年末頃に、兵庫県西宮市の臨海部に銅を使用した

織部釉の陶板タイルを納入いたしました。その陶板を今年の秋に成って確認したところ瑠璃色

とも云える様な綺麗な青色に変色していました。変色は雨の当たる箇所で多く見られ、あまり

雨の当たらない部位は元のままです。焼成は最高温度1320度中性炎で焼成している製品です

が、やはり酸性雨の影響でしょうか? 何か考えられる原因が思いつけば教えてください。


明窓窯より。

当方では、織部釉が綺麗な瑠璃色とも云える綺麗な青色に変色した経験は有りませんが、原因を

ある程度推測できますので、参考までに述べます。

1) 銅釉は窯の中又は焼成後にも変化がで易い釉です。

 御存じの様に、酸化雰囲気の窯では緑色の織部色になります。但しこの織部は青織部と呼ばれる色

 ですので、青味掛かる緑色に成る場合もあります。還元焼成では、真っ赤な辰砂(しんしゃ)色

 に発色する場合も有りますが、赤紫又は青紫に出る事も多いです。高橋様が最初納品されたタイル

 がどの様な色彩であったかは不明ですが、多分青織部であったと思われます。

 即ち、窯から出し役1年後に色が変化した事になります。

2) 当方で気になる所は、中性炎で1320℃で焼成した点です。

 上記の様に酸化でも還元でもない中性炎であれば、色彩的に不安定な状態です。更に1320℃は、

 銅釉としては高過ぎる様に思われます。即ち、銅は揮発し易い金属ですので、一般には1300℃

 (SK-10)以下で使う様に云われおり、高温では銅が揮発しまい、銅の効果が半減してしまいます

  勿論揮発を防ぐ様に何らかの処理(透明釉などを上に重ね掛けるなど)をしていれば良いので

  すが、その場合には上掛けした釉が何らかの作用を施している可能性もあります。

3) 銅釉は作品の表面に薄い膜を作る事が知られています。

  その為、この幕を希塩酸などの酸で洗い流す事で、鮮明な色が表出します。高橋様の場合この

  処置が施されているのでしょうか。もし未処理であれば、1年間の間に、日光(紫外線)、

  雨(水)、潮風(塩分)等の影響でこの幕が少しづつ剥がれ、下層の綺麗な色が表出したとも

  考えられます。

  又、高橋様のご指摘の様に、酸性雨や潮風が釉の表面(幕ではない)に直接作用した事も考えら

  れます。即ち化学変化を起こした事になります。

  上記2)述べた様に、銅は揮発し易い金属ですので、銅成分は釉中より表面に集まり易くなり

  ます。高い温度で更に揮発が促進した結果、表面の銅成分も薄くなっているはずです。

  薄い銅成分は外気の諸条件(上記以外に空気中の酸素も加る)の影響を受け易くなるとも考え

  られます。

4)その他

 ご使用された釉の成分が判別できませんが、一般に透明釉(基礎釉)に5~10%程度の酸化銅を

 添加して調合します。7%前後が多い様です。手元にあるカタログの中の青織部と表示された釉

 にも数種類の釉が存在します。即ち酸化銅以外に微量な金属類(マンガン等)などが混ざっている

 事になります。若し微量な金属類が含まれている場合には、その影響と外気との相乗効果で、

 化学変化を起こす事も考えられます。特に酸化コバルト少量でも強力な青色(又は瑠璃色)を呈し

 ます。若し使われている釉の成分を知る事が可能ならば、調べてみる価値があります。

以上が当方の見解ですが、決め手になる理由を見出す事が出来ませんでした。


◎ 尚、当ブログを見ている方で、この件に関して、考え(見解)やヒント、情報をお持ちの方は、

 コメント欄に情報をお寄せ下さい。宜しくお願い致します。
  

以上 明窓窯 

コメント
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