1) 粘土で成形する際、丁度良い含水量を成形水量と言います。
当然成形方法によって、水分量は変化します。成形方法には、乾式成形、半乾式成形、半湿式
成形、可塑性成形、過度に軟らかい状態での成形、泥漿鋳込み成形があります。
工業的には乾式、半乾式、半湿式、泥漿鋳込みの方法で成形されますが、陶芸では、可塑性、
過度に軟らかい状態、泥漿鋳込みの方法が取られる事が多いです。
2) 轆轤成形に適する水分量。
可塑性成形(手捻り、轆轤)には、15~30%程度の含水量が良いとされていますが、轆轤
成形では25%程度が、最適な水分量と言われています。当然作品の大きさ(高さ)や土の種類、
硬さの好み、制作者の技量によって左右されます。
3) 鋳込み成形に適する水分量は、20~50%とされています。
4) 結晶水について。粘土には、上記成形水量の他に、化学的に結合している水、即ち、結晶水が
存在します。粘土成分には14%程度の結晶水があると言われています。
① 成形水量は、大気中に放置すると徐々に蒸発乾燥し減少します。乾燥速度は大気の気温、
湿度、風の有無、更には粘土の粒子の粗さ等に左右されます。
但し、大気中では、天日干しし、完全に乾燥してしている様ても、成形水量が0%に成る事は
ありません。
② 結晶水は、大気中で自然蒸発する事はありません。
粘土物資は、450~500℃で加熱する事で、結晶が壊れ結晶水が失われます。
5) 粘土の乾燥。
① 大気中での乾燥。
粘土は成形直後から乾燥が始まり、硬さを増し、機械強度も強くなります。
) 乾燥すると硬くなる理由。
a) 粘土は板状の薄片が層をなしている構造です。(前回お話しました。)水を加えると、
その層の間に浸透し、潤滑剤として働き可塑性が出て、作品を作る事が出来ます。
b) 水の蒸発に伴い、層の潤滑剤が失われます。
粘土の粒子間が接近し収縮すると伴に、粒子間の引力も強くなります。
その結果、引っ張り強度や曲げ強度が増します。
c) 蒸発には、粘土粒子を取り巻いている薄い皮膜状の水分が蒸発するのと、薄片の層に
ある水分の蒸発があります。
イ) 前者の場合には、被覆状の水分が蒸発する為、隣り合わせの粒子が点接触するまで
乾燥が進みます。粒子が粗い場合には、粒子間に隙間が生じその隙間に、水分が
残ります。
ロ) 後者の場合には、前者より容易に水分が抜けます。
) 何処まで乾燥が進み、収縮するのか?
粘土の粒子同士が接触した段階まで乾燥は進みます。その際粘土につでは、成形水量
は14%程度で、乾燥による収縮率は8%程度です。これ以降自然乾燥が進んでも、
収縮量は進みません。素焼き後でも収縮率8%は維持されます。
尚、14%程度の乾燥具合は、削り作業の最適な条件だそうです。
) 作業前に土を練る効果。
イ) 陶芸では、作業前に何らかの方法(手、土練機など)で土を練ります。
一般に、土の硬さの調整や空気を抜くなどの効用が言われますが、もう一つ大切な
役目があります。それは収縮方向を均一にする働きです。
ロ) 粘土は薄片が層をなしているとお話しましたが、二次元構造では、粘土の結晶が
一方向に並んだ状態に成ります。即ち、層方向の面接触と、薄片内の粘土の結晶の
並び方に差がでます。この事は乾燥や焼成収縮が結晶の並び方で、大きく変化する
事になります。(変化率が場所によって2倍になる事もあるそうです)
ハ) 土を良く練る事で、結晶の並び方をランダム(無秩序)にし、均一に収縮させ、
変形やひび、亀裂の発生を抑えます。
以下次回に続きます。