わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

焼き物は壊れ物 6 粘土の成形水量と乾燥1

2013-12-19 22:28:32 | 焼き物の材料(原料とトラブル)

1) 粘土で成形する際、丁度良い含水量を成形水量と言います。

   当然成形方法によって、水分量は変化します。成形方法には、乾式成形、半乾式成形、半湿式

   成形、可塑性成形、過度に軟らかい状態での成形、泥漿鋳込み成形があります。

   工業的には乾式、半乾式、半湿式、泥漿鋳込みの方法で成形されますが、陶芸では、可塑性、

   過度に軟らかい状態、泥漿鋳込みの方法が取られる事が多いです。

2) 轆轤成形に適する水分量。

   可塑性成形(手捻り、轆轤)には、15~30%程度の含水量が良いとされていますが、轆轤

   成形では25%程度が、最適な水分量と言われています。当然作品の大きさ(高さ)や土の種類、

   硬さの好み、制作者の技量によって左右されます。

3) 鋳込み成形に適する水分量は、20~50%とされています。

4) 結晶水について。粘土には、上記成形水量の他に、化学的に結合している水、即ち、結晶水が

   存在します。粘土成分には14%程度の結晶水があると言われています。

  ① 成形水量は、大気中に放置すると徐々に蒸発乾燥し減少します。乾燥速度は大気の気温、

     湿度、風の有無、更には粘土の粒子の粗さ等に左右されます。

     但し、大気中では、天日干しし、完全に乾燥してしている様ても、成形水量が0%に成る事は

     ありません。

  ② 結晶水は、大気中で自然蒸発する事はありません。

    粘土物資は、450~500℃で加熱する事で、結晶が壊れ結晶水が失われます。

5) 粘土の乾燥。

  ① 大気中での乾燥。

    粘土は成形直後から乾燥が始まり、硬さを増し、機械強度も強くなります。

    ) 乾燥すると硬くなる理由。

     a) 粘土は板状の薄片が層をなしている構造です。(前回お話しました。)水を加えると、

       その層の間に浸透し、潤滑剤として働き可塑性が出て、作品を作る事が出来ます。

     b) 水の蒸発に伴い、層の潤滑剤が失われます。

       粘土の粒子間が接近し収縮すると伴に、粒子間の引力も強くなります。

       その結果、引っ張り強度や曲げ強度が増します。

     c) 蒸発には、粘土粒子を取り巻いている薄い皮膜状の水分が蒸発するのと、薄片の層に

        ある水分の蒸発があります。

       イ) 前者の場合には、被覆状の水分が蒸発する為、隣り合わせの粒子が点接触するまで

          乾燥が進みます。粒子が粗い場合には、粒子間に隙間が生じその隙間に、水分が

          残ります。

        ロ) 後者の場合には、前者より容易に水分が抜けます。

     ) 何処まで乾燥が進み、収縮するのか?

        粘土の粒子同士が接触した段階まで乾燥は進みます。その際粘土につでは、成形水量

        は14%程度で、乾燥による収縮率は8%程度です。これ以降自然乾燥が進んでも、

        収縮量は進みません。素焼き後でも収縮率8%は維持されます。

        尚、14%程度の乾燥具合は、削り作業の最適な条件だそうです。

     ) 作業前に土を練る効果。

        イ) 陶芸では、作業前に何らかの方法(手、土練機など)で土を練ります。

          一般に、土の硬さの調整や空気を抜くなどの効用が言われますが、もう一つ大切な

          役目があります。それは収縮方向を均一にする働きです。

        ロ) 粘土は薄片が層をなしているとお話しましたが、二次元構造では、粘土の結晶が

           一方向に並んだ状態に成ります。即ち、層方向の面接触と、薄片内の粘土の結晶の

           並び方に差がでます。この事は乾燥や焼成収縮が結晶の並び方で、大きく変化する

           事になります。(変化率が場所によって2倍になる事もあるそうです)

         ハ) 土を良く練る事で、結晶の並び方をランダム(無秩序)にし、均一に収縮させ、

            変形やひび、亀裂の発生を抑えます。

以下次回に続きます。

            

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