2) ゼーゲル式の活用。
② この座標から釉の現象を見て行きます。(前回の続きです)
) 流れ易い釉と流れ難い釉。
a) 流れ易い釉。
2軸座標で原点に近い部分では、媒熔剤が相対的に多い為、熔け易い釉に成りますが、
同時に粘度が低く流れ易い釉にも成ります。非常に流れ易い釉では透明釉の範囲の
Al2O3:SiO2(比)であっても、透明に成らず、マット状になる場合もあります。
更に、徐冷など焼成方法によっては、結晶が生じます。
・ アルカリ成分が多過ぎる場合には、熔かす力が強く、どの様な失透材を加えても、失透し
なくなります。
b) 流れ難い釉。
原点から遠い部分では、透明、乳濁、マット釉のどの領域でも、媒熔剤が相対的に少ない為
熔け難い釉に成り、同時に粘度が高く、流れ難い釉に成ります。場合によっては釉肌が
平滑に成らない事もあります。
③ 石灰系以外の2軸座標。
今まで媒溶剤(アルカリ類)が石灰系の場合を取り上げましたが、当然それ以外のアルカリ
類も使われる事も多くあります。その際、2軸座標にも変化が出ます。
) 酸化亜鉛釉は、透明又は乳濁釉に適します。
ROを 0.2 K2O、 0.2 CaO、 0.4 ZnO ・ 0.1~0.6 Al2O3 ・ 1.0~6 SiO2
にした場合。
a) 酸化亜鉛は0.6モル以上に成ると、釉は熔け難く成りますが、マット釉や乳濁釉を作る
際には、あえて多めに使う事もあります。
b) この場合に2軸座標では、二本の直線がやや倒れた位置に移動します。即ち、マット釉
になる範囲が広がり、乳濁釉の範囲がやや狭くなります。
イ) 二本の直線に挟まれた部分では、光沢のある透明釉になります。
但し、原点に近い部分では、徐冷する事により、結晶釉を作る事が出来ます。
この結晶をウイレマイト結晶(2ZnO・SiO2)といいます。
急冷では透明又は、微細な結晶によるマット釉に成ります。
ロ) 右下の乳濁領域では、分相(異なるガラス質が混在)による光沢乳濁釉になります。
骨灰や酸化チタンなどの失透剤を添加すると、更に良い乳濁釉を作る事が出来ます。
ハ) 左上のアルミナ成分の多い範囲では、マット又は半マット状の結晶釉が出来ます。
この結晶をガーナイト結晶(ZnO・Al2O3)といいます。
) マグネシウム釉はマット釉に最適です。
0.15 K2O、0.30 CaO、0.45 MgO、 0.10 ZnO ・ 0.1~0.6 Al2O3 ・
1.0~6 SiO2の場合。
イ) 酸化マグネシウムは通常0.5モル以下で使用します。
但し、石灰(CaO)を超えない値にします。マグネシウムを多量に使うと、表面張力が
増え釉に縮れが起こります。それ故、あえて多量に入れ微細な結晶のマット釉を
作る場合があります。
ロ) マグネシウム釉は透明範囲が極端に狭く、熔け不足のマット部が多くなり、乳濁
範囲でもマット状に成るのが特徴です。
) バリウム釉は透明とマット釉に適します。
イ) 石灰系や亜鉛系、マグネシウム系の釉に対して、より広い範囲で透明釉を作る事が
できます。逆に乳濁釉は作り難いです。
ロ) 座標の原点近い範囲では、相対的に媒熔剤(バリウム)が多い為、熱膨張が大きく、
貫入が発生し易いです。更に、炭酸バリウムは1200℃付近で熱分解を起こし、
炭酸ガスを発生させます。このガスが十分抜け切らないで、釉の中に小さな気泡が
残ったり、ピンホールを発生する事も多いです。
ハ) 座標の左側のマット領域では、非常に細かい結晶を生じ、絹の様な質感を持った
マット釉に成ります。
以下次回に続きます。