ジグザグ山歩き

山歩き、散歩、映画など日々、見たこと、聴いたこと、感じたことなどつれづれに。

ライムライト

2010-12-27 10:09:43 | 映画
全国の東宝系の映画館25館で現在、「午前10時の映画祭」が行われている。1950年代から70年代にかけての名画50本を毎週1本ずつ午前10時から1週間上映するという企画。来年2月から第二回目が開催されることが決まっている。入場料は1000円と安い。最近、府中のTOHOシネマズでよく観に出かける。ヒッチコック作品なども上映され、観ている。今回は喜劇王チャールズ・チャップリンの晩年の傑作「ライムライト」を観る。制作・監督・原作・脚本・音楽はすべてチャップリンである。ロンドンのスラム街で育ち、アメリカにわたって、40年。アメリカで製作した最後の作品となった。戦後、アメリカが戦勝に沸く中、「殺人狂時代」で反戦を訴えたチャップリンは、やがてハリウッドを追われたのである。
老芸人カルヴェロ(チャップリン)の最後の舞台。チャップリンと競演するのはバスター・キートン。無声映画時代の喜劇俳優である。トーキーの時代になって出番の少なくなったかつての名優を登場させたのである。チャップリンはヴァイオリン、キートンはピアノ。二人は言葉を話さずに掛け合いの演技をする。サイレント時代そのままの名人芸。チャップリンとキートン、芸を極めた二人の名シーンでもある。テリー役のクレア・ブルームはこの映画でデビューしたバレリーナ。テリーに思いを寄せる作曲家ネヴィルを演じたのはチャップリンの実の息子シドニー・チャップリン。
この作品は、チャップリン自身の自叙伝的な映画であるとも言われている。この時チャップリンは63歳で、年齢の差を超えた純愛を描きながら、喜劇役者の名演技が笑いを誘うが、表情や奥深い目にはそこはかとなく寂しさが漂っていて、哀愁も感じられる。道化師カルヴェロはチャップリン自身の投影とも思われるし、うまさでもある。
ラスト直前のカルヴェロがステージに立つ直前の楽屋のシーン、笑いがとれなく、劇場を避けるようにして生きてきたカルヴェロに対してテリーは「劇場はお嫌いなんでしょ?」と問いかける。それに対し、カルヴェロ「血も嫌いだがでもわたしの体を流れている」と答える。好きだとか嫌いだとかそういったこととは関係なく、舞台に立つこと自体が求められていることを言っているのだろうか。人生も同じところがあるかもしれない。全編を流れる「ライムライト」の音楽も惹かれる。
 私自身、段々、年をとってきて、改めて、この作品を見たときに、若い時にみたのを忘れているのもあるかもしれないが、何となく、強く共感できる部分もあって、年をとってきたわが身を振り返る場面もあった。