おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シービスケット

2019-07-05 07:54:53 | 映画
「さ」が終わって「し」に入りますが、思いついただけでもたくさんありました。
それでは始めます。


「シービスケット」 2004年 アメリカ


監督 ゲイリー・ロス
出演 トビー・マグワイア
   ジェフ・ブリッジス
   クリス・クーパー
   エリザベス・バンクス
   ゲイリー・スティーブンス
   ウィリアム・H・メイシー

ストーリー
1929年の大恐慌以降、アメリカは苦難の季節を迎えていた。
自動車販売で成功したものの、息子を事故で亡くし、妻にも去られた大富豪ハワード(ジェフ・ブリッジス)。
開拓時代の終焉により、時代遅れのカウボーイとなったトム・スミス(クリス・クーパー)。
一家離散の憂き目に合い、草競馬のジョッキーに身をやつした青年レッド(トビー・マグワイア)。
人生の辛酸をなめていた3人の男は、運命の糸に導かれるようにして一頭のサラブレッドに出会う。
その名はシービスケット。彼らと同じく運に見放された小柄な馬だった…。


寸評
日本にも「幻の馬」や「優駿 ORACION」という中々よい競争馬映画があったけれど、この手の映画を作らせると流石にアメリカ映画界は懐が深い。
キャストのみならず、脚本、撮影とスタッフなどに人材の豊富さをうかがわせる。
時代遅れのカウボーイ、トム・スミスが安楽死されそうな馬を助けたときのセリフや、レッドがボクシングで金を稼ぎ、商売女とベッドを共にするときの仕草など、伏線の張り方もなかなか細やかでよい。
登場人物がよい人ばかりなのも見ていて楽しい。
ハワードが亡くした息子の代わりとでも言うように、レッドに接し見守る姿は構成的にも良かったと思う。
オーナー、調教師、騎手と競馬にかかわるそれぞれが一頭の馬に入れ込むのはわかるが、僕はハワードの後妻であるマーセラ(エリザベス・バンクス)の存在がこの映画をよりロマンティックにしていると思う。
気性の激しいシービスケットの暴れる音が聞こえないので「今日はおとなしいのね」と彼女が覗き込むと「あら、まあ・・・」、一緒に馬房に入れられた牝馬に寄り添っている。
必死で応援する彼女の姿は正しくアメリカのロマンそのものだった。
そして、前述のレッドを見守る姿も母親のそれに近く擬似家族を形作っていて、さらに言えば、新しい妻となった彼女、トムや使用人も含めて、そこには失いつつある大家族が描かれていた。
無敵となったシービスケットがレースで故障するシーンを見て、僕は悲運の名馬・テンポイントを思い出した。
彼は昭和53年が明けて間もない1月22日の京都競馬場で行われた日経新春杯で、あまりの強さに過酷とも思われる66.5キロを背負わされて骨折した。
彼はシービスケットのように復活する事はなく、懸命の看病、ファンの祈りも届かず3月5日に死亡してしまう。
そして大恐慌時代の下積みの人たちがシービスケットに肩入れし、応援する姿は今、地方競馬で100連敗を更新中のハルウララを連想させる。
ハルウララはシービスケットのように連勝する事でファンを熱狂させているのではなく、負けても負けても走り続ける、けな気な姿に心打たれるものを感じさせるからだ。
小さな子供達までが「ハルウララー!」と掛け声を掛ける様子や、強さとは関係なく一番人気に押されている事がニュースで流れる事実を見て、80年近く経った今でも変わらぬものが有る事を教えてくれる。
馬券を買わなくなって久しいけれど、三十年ばかり前は関西馬ばかりを買って負け続けていたことも思い出した。


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