おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

プロミスト・ランド

2024-07-11 06:20:07 | 映画
2019/1/1より始めておりますので10日ごとに記録を辿ってみます。
興味のある方はバックナンバーからご覧下さい。

2020/1/11は「八月の濡れた砂」で、以下「8 1/2」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「バックドラフト」「はつ恋」「初恋のきた道」「ハッシュ!」「パッチギ!」「パットン大戦車軍団」「ハッピーアワー」と続きました。

「プロミスト・ランド」 2012年 アメリカ 

                                   
監督 ガス・ヴァン・サント                        
出演 マット・デイモン ジョン・クラシンスキー
   フランシス・マクドーマンド ローズマリー・デウィット
   ハル・ホルブルック ベンジャミン・シーラー
   テリー・キニー タイタス・ウェリヴァー

ストーリー
大手エネルギー会社の幹部候補であるスティーヴ(マット・デイモン)は、仕事のパートナー、スー(フランシス・マクドーマンド)とともに、農場以外はなにもない田舎町マッキンリーへやってきた。
実は、マッキンリーには良質のシェールガスが埋蔵されているのだ。
スティーヴの目的は、その採掘権を町ごと買い占めること。
スティーヴたちは、近年の不況で大きな打撃を受けた農場主たちから相場より安くその採掘権を買い占めようとしていた。
農業しかないこの町で、不況に喘ぐ農場主たちを説得するのは容易なことと思われた。
地元有力者への根回しも欠かさず、交渉は順調に進んでいく。
ところが予期せぬ障害が立ちはだかることになった。
科学教師フランク(ハル・ホルブルック)が採掘に反対し賛否は住民投票にゆだねられることになった。
さらに他所から乗り込んできた環境活動家ダスティン(ジョン・クラシンスキー)が加勢し、思わぬ苦境に立たされるスティーヴだった
さらにスティーヴは、仕事への信念と情熱を根本から揺るがすような衝撃の真実を知ってしまい……。
ふと訪れた町で、図らずも自分の生き方を見つめ直す必要に迫られたスティーヴは、果たしてどんな決断を下すのか?


寸評
印象に残るのは、或る農夫が言う「あんた達はマンハッタンやフィラデルフィアなどでは井戸は掘らないだろう。ここが貧しい田舎だからお前達はやってくるのだ」の言葉だ。
僕はこの言葉を聞いて福島の原発を思い起こしてしまい、作品が身近なものに思えてきたのだ。
シェールガスという今時のテーマもった映画なのだが、結構普遍的なテーマでもあったと思う。
実際、私も高校生の頃に母親と共に河川改修に伴う立ち退き交渉にのぞんだことが有り、その時のことを思い出したりした。
その時の立ち退き交渉も、ここに描かれた交渉とさして違わぬものだった。

金を武器に貧しい町の町民に取り入り、持ち上げたり、脅したり、有力者に賄賂を贈ったりするスティーヴたちのやり口が赤裸々に描かれる。
時にはハッタリをきかせ安く買いたたき、マージンを低く設定していく。
しかしそれを悪と感じさせないのは、スティーヴのよかれと思ってやっている買収工作の姿に違和感を持たないからだ。
マット・デイモンが演じるスティーヴは全体的にはいい奴として描かれているが、一面では嫌悪感を持たれないような身なりにし、適当なウソもつくし、すごんだりもする一面を見せる。
彼がついていたと思われるウソが終盤になって大きな要素を持つが、これはこの映画の持つエンタメ性によるものだろう。
この二重人格的な主人公設定が作品を面白くしている。

日本でも昨今は地方再生が叫ばれている。
地方は貧しいし、若者が留まらない。
それは、そこに産業がないからで、働く場所がないからだ。
産業誘致は地方にとって再生の有力な手段の一つではある。
誘致に成功すれば莫大な金が地元に落ちることもまた事実で、僕は北陸を旅した時に福井の原発立地地域を見てそのことを痛感した。
福島の原発事故発生前のことだ。

映画は石炭や石油に代わるクリーンエネルギーといわれるシェールガスだが、その採掘方法は本当に安全なのか、あるいは住民に支払われる金は妥当な金額なのかなどの問題提起をしているようでもある。
福島も職場が出来、環境整備も行われ、箱物を含め多額の資金も地元にもたらしていたのだ。
そして誘致時には原発の安全性は大いに語られていたはずだが事故は起き、町の復興の目処は立っていない。
う~ん、地方再生は難しい…。
誰が考えても素晴らしいことなら躊躇することはない。
メリットが有れば、デメリットもあるというのが世の常だ。
ラストのマット・デイモンのつぶやきは、作者の良心でもあり苦悩でもあったような気がする。
色んな人々が登場したが、僕はアリスなる女性が人として一番魅力的に思えた。